英雄王の末裔 ~青のラファール~

カザハナ

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~王都への道中と王都エルム~

ウルファナル陛下

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「相変わらず元気そうだね、陛下」
「ああ。ラファールも元気そうで何よりだ。サウザを迎えに出したが、今日は妨害はなかったか?」
「うん!大丈夫だったよ。さすがサウザレンさん効果?誰も寄って来ずにこれたから」
「そうか、それは良かった!いつもラルファンス殿やラファールが来てくれても、中々直ぐに会えないからな。私の大事な客の妨害をする前に自分の仕事をすればいい物を……。物を知らぬ臣下で済まない」

 たま~に帰り際に絡む馬鹿もいるけどね。勿論それなりの対処はするけど。

「ああ、平気平気。ウルファナル陛下の本意じゃないって知ってるし。仮に僕等に危害を加えようとする馬鹿がいても、どうとでも出来るからね」

 そう、馬鹿は何処にでもいる。誰に喧嘩を売ってるのか分からずに売る馬鹿が。そういう馬鹿は多少痛い目みせないと図に乗るだけだから、勿論シメるよ?度合いは相手次第だけどね。
 まぁ、この大陸ではあんまいないけど、ラファス兄の名をかたる馬鹿も多いよ。見付け次第、問答無用でシメるけどね。
 僕等にとって名は神聖な物なんだ。だから略せるのも家族か親しい人ぐらいで、親しくない人には名も呼ばせたくないんだよ。だからラファス兄は聖騎士団本部の人でも、特殊部隊以外の人には極力名を呼ばせない。赤髪の吟遊詩人で通させる程だ。
 だから本部の人でもラファス兄があの・・“赤のラルファンス”だと知らない人が多い。
 因みにウルファナル陛下は知ってるよ。
 陛下はラファス兄や僕の話が大好きだからね。旅に限らず日常的な事まで、陛下は興味津々だ。
 王族として視察の旅も行くけど、連れが芋づる式に増えるのが嫌なんだそうだ。だから、僕達がいる時を狙ってお忍びを楽しむらしい。
 そしてあわよくば僕達の旅に同行したがる。実は二、三回だけ連れて行った事がある。初めの同行で味を占めたらしい。僕達と一緒の場合、ラファス兄も僕も大勢はいらないって、陛下だけを連れ出すからね。
 側近の人達には、僕達が英雄王の末裔で今もフォルゼ領域にライトフォーマーがあり、そこの領内を治めてる事を知っている。だからこそ安心して任せられるが、あまり国を空けられるのはさすがにね。
 だからウルファナル陛下を連れて行くのは二年に一回が限度で最高日数一ヶ月。あとは視察で我慢しろとの事。これは僕が産まれるずっと前、英雄王の時代辺りから続く事で、甘やかされた何代目かの馬鹿王子に世界や人々の暮らしを教える為に連れ出したのが切っ掛け。
 とはいえ、こんなに頻度の多い人はあまりいなかっただろうけどね。

「ああ、またラルファンス殿やラファールと旅に出たいな。視察だと一々大事になって鬱陶しいんだ」
「ウルファナル陛下は本当に世界を見るのが好きだね」
「赤の血族との旅の最中だけはずっと、一人の個人でいられるからな」

 王族とは常に人から見られ、したい事も制限されるから窮屈なのだそうだ。僕達はそもそも人間じゃないからあまりよく分からないけどね。

「悪いなウルファ。本当はもっと自由な時間をやれればいいんだが……」
「サウザが謝る事じゃない。これも王族の務めだ」
「ウルファナル陛下は名前からして旅とか好きそうだからねぇ」

 僕がしみじみ言うとその場にいた皆が僕を見る。

「私の名前?」
「ウルファの名からして旅が好きそう?」
「陛下の名って何か意味あんのか?」
「え?ああ、古代語訳をしたらね」
「「「古代語訳?!」」」
「うん。大抵の人の名前って古代語読みでも出来るから。まぁ中には全く意味をなさない人もいるけど」

(古代語と関係なく付けられた名でも、訳すと結構面白いんだよね~。しかも本人に合ってたりその物だったりする事も割りと多いからなぁ)
 因みに旅の連れの兄さん、リノアーノの訳は明るい願いに流される子供とか、楽しさを小さく込めるとかの意味合いがある。

「ラファール、私の名前の意味は旅に関する意味なのか?」
「旅その物の意味じゃないけどね」

 ウルファナル陛下の顔が好奇心旺盛に輝く。

「なら、何と言う意味なのだ?」
「ウルファナルは、地の現時点の変化を愛しむとか大地の過去未来を含めた揺らめき、変化を愛しむとかかな」
「では、旅での愛称は?」
「ウファルは地を探す愛し子とか地の強き魔とか、地を強く愛するとかにもになるね」
「私は地に関する意味の名なのか」
「うん。ウが地の意味合いを持つからね。ただし、名前の一番最初じゃないと違う意味になるからね」
「じゃあ、サウザは地に関する意味ではないのだな?」
「うん。サウザレンさんは直訳すると、固くしっかりした刃物を持つ聖なる魂。味方だと、裏切る事のない者とかで、己の道を貫くって意味合いになるかな」
「おおっ!サウザっぽいな!では、ウィルヴァルは?」
「ウィルヴァルおじさんの場合は火の愛し子同等の愛し子。もしくは火の愛し子の伴侶を愛しむ。普通は前者だけど、ウィルヴァルおじさんの場合は後者でもいけるね♪」

 あはは、ウィルヴァルおじさん驚いてる。ウィルヴァルおじさんは愛妻家で、実際に奥さんは火の愛し子だったりする。僕もラファス兄も奥さんと初めて会った時は面白い偶然だって思ったからね♪

「マジか……」
「僕は嘘なんて言わないよ♪」
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