英雄王の末裔 ~青のラファール~

カザハナ

文字の大きさ
33 / 113
~港町エルト・デ・ルム~

宿屋にて、メカエンジニアの仕事依頼

しおりを挟む
   カランカラーン♪
 宿屋の扉に掛かるベルが鳴り響き、宿屋の店主が声を出す。

「いらっしゃい……って、ラファール?!ラファールじゃないか!」

 僕の顔を見て、嬉しそうに笑う店主のおじさん。

「へへっ、久しぶりだねおじさん」
「久しぶりだなぁ。あれ?今日は兄ちゃんと一緒じゃないのかい?」

 首を傾げるおじさんに僕は頷く。

「うん。今回は僕が主体の旅だから、一緒じゃないよ」
「そうか……。その子は前にも来た事がある子だね。他の二人もラファールの連れかい?部屋数はどうする?」
「成り行きで今回は四人。ん~、海側隣部屋で二つ。いい?」

 僕の問いにニンマリ微笑む店主のおじさん。

「ああ、構わんよ。今回の滞在中の宿と、朝晩の飯も付けてタダ・・にしてやる」
「ちょ……何でそんな?!ダメです!責めて僕の分だけは取って下さい!!」
「兄さん……割って入んな。……で?条件は?」

 詰め寄ってきた兄さんを押し退け、僕はおじさんとの会話を再開させる。

「ああ、店にある物の点検修理をお願いするよ。最近ちょっと調子の悪い物があるんだよ。ただ、その時その時で違うから何とも言えないんだよ」
「OK。交渉成立って事で!兄さん何か文句ある?」

 僕が兄さんに問うと、兄さんがハッとした様子で僕に言う。

「君だけを働かす訳にはいかないよ!」
「じゃあ聞くけど、兄さん機械の類い弄った事ある?」
「うっ……なっ、ないけど、頑張れば何とかなるよ!うん」
「――で?壊したら・・・・どうする気?それを僕が修理するの?二度手間・・・・だよ?」

 焦る兄さん。パニクる寸前と見た。

「うっ……だっ、だから、それは……」
「因みに、弁償なんて考えてないよね?念の為言っとくけど、ここは宿屋食堂だから、修理に時間が掛かるとそれだけすっっごい損害食らうんだからね。それでもやる気?」

 にっこりと笑顔を浮かべて言い切る僕。

「……任せます……」

 子供に言いくるめられた~と半泣きなっているが、ラルは、この店が休みならまだしも……とぼやき、そんな二人を見て、セスはあの兄さん懲りないなぁと思い、アーヤに至ってはラルに敵う訳ないじゃないと呆れながら見守っている。

「取り敢えず、夜に食堂業務が終わってから点検して、簡単に出来る物なら直ぐに、そうでない物は明日の人がいない時間帯に修理していくよ」

 そうおじさんに声を掛けて、部屋の鍵を貰い、一つをセスに渡す。
 その日の夜、約束通りに宿屋内の機械点検。石の交換だけの物はそのまま取り替え、そうでない物が一つあったので、それは明日にする。僕は基本、自分で一から作る事が多いけど、他の人が作った物も見るのも好きだし修理する事も得意だ。
 ただ、メカエンジニアや技師と呼べる者の殆どは中央デ・トルト大陸に集中している。それは、魔石を入手しやすいから。
 では、何故他の大陸では入手しにくいか?それは単に魔物が強くなっていくからである。
 メカエンジニアや技師は一応魔物と戦う事もあるが、その殆どは戦闘を不得手としている。
 まぁ要は魔物と戦うより武器や生活に役立つ物を作る方が良いのだが、魔石入手の為に街や村といった人が住む場所から離れた魔物が出る場所へと足を運ばなくてはならない為だ。
 魔石は大地の魔力が溜まりやすい山や洞窟といった場所に多い為、冒険者に頼んで同行して貰う事が多く、魔物が強い場所であればある程出費が嵩む。その為魔物の強さはヘグルスによるので、一番低い中央に集まりやすいという訳だ。
 魔石の純度はヘグルスに関係するが、命懸けで取るより純度が低くても使える機器を作れば良いと考えるのだ。その分大きさが大きくなったり性能面が低くなったりするが、それは仕方のない事だと皆割り切る。
 僕はどの大陸のも持っているけど、自分で作った物以外の魔石交換は、元々入っていた魔石の純度に合わせる。
 というのも、純度の高い魔石は途轍もなく貴重とされ、法外な値段が付くからだ。そんな石を安い値段でポコポコ使おう物なら大問題になるからね。下手すりゃ奪い合いの殺し合いになるよ。
 僕の作った物は、プレゼントした人専用か登録した人しか使えないし、分解もそう簡単には出来ないようにしている。
 プロの技師やドワーフなら出来るだろうけど、他の人の作った機械の石だけを抜いて自分の機械に移し替えるなんて出来ないから。それ出来る奴はプロって呼べないからね。
 そんな訳で、腕の良いメカエンジニアや技師っていうのは中央出身者や中央にいる為、この大陸では出来て石の交換ぐらいの自称メカエンジニアがいる程度だと思う。
 だからこそ、僕のちょっとした腕を知るおじさんは僕に点検修理を頼んできたという訳さ。
 因みに何で知れたかっていうと、おじさんが断られまくって諦めてた思い出の品を、僕が借りて部屋に行き、即修理したのが切っ掛け。
 それ以来、おじさんは僕に依頼するようになったんだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双

四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。 「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。 教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。 友達もなく、未来への希望もない。 そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。 突如として芽生えた“成長システム”。 努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。 筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。 昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。 「なんであいつが……?」 「昨日まで笑いものだったはずだろ!」 周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。 陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。 だが、これはただのサクセスストーリーではない。 嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。 陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。 「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」 かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。 最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。 物語は、まだ始まったばかりだ。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...