英雄王の末裔 ~青のラファール~

カザハナ

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~トルク領域~

エーダと砂漠の魔物

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 ルカタ領域からトルク領域へと入り、砂漠の側の町が見えてきた。町の側の砂漠には、色とりどりのエーダがたくさん並んでる。
 エーダの大きさはまちまち。人を運搬するだけでなく、色々な物も運ぶから、用途によって大きさが違うのと、連結させて多くの物を運ぶ事もあるから組み立てて使用するエーダもあるから。
 ただし、連結する小さな物はあっても一人用のエーダは殆どないといっていい。何故なら砂漠の中にも魔物はいるから。
 僕のような魔物キラーは少ないし、一般の人達はヘグルス(※重力)1の魔物に慣れてる為、ヘグルス2の魔物はかなりな強敵になる。一般の人達からしたら一人でなんて厳しいから、一人用のエーダなんて自殺に等しい。僕のような強い腕を持つ者ならなんて事もないけど、旅する者からしたら砂漠でしか使えないエーダは持ち運びに不便だから、買うという選択肢はほぼない。
 因みに、僕が作った収納ボックスなら組み立て型のエーダなら何とか入るけど、一般のは確実に入らないからどこで手に入れたんだって事になりかねない。そんな事になればウザい展開にしかなり得ないからわざわざ買うなんて事はしない。そもそもそれをするぐらいなら、僕は作るし。

「何か、大きさが色々あるけど、あれって意味あるの?」
「小さいのなら小回り利くけど、大きなのは重い物の運搬重視。船と一緒だよ。違いは海か砂ってだけだから」
「いや、でも、形も多少違うよね?」
「当たり前だろ。海で使う船と全く一緒にすんな。どんだけ地面にめり込ます気だよ」
「ラファールが船と一緒って言ったんじゃないか!」
「誰が形って言ったよ。僕は性能の話をしてたよね?そもそも形だったら船でも色んな種類あるよね?兄さん種類知ってるの?」
「いや、その……」

 兄さん目が泳ぎまくってるぞ。やっぱ知ってる訳ないか。

「知らないなら形とか言うな」
「は……はい」

 ラファス兄に聞けばスラスラと全種類言ってくれるだろうけど、この兄さんにそれはない。僕ですら全種類は無理だしね。

「今日はここで泊まるけど、エーダを使ってスオウを目指してもいいし、砂漠沿いに歩いてもスオウに着けるよ。エーダ酔いする人は少ないけど、場所によっては落ちそうになるから要注意。魔物の襲撃もたまにあるから、エーダを走行中は身体をエーダに固定する方が安全かな?僕はしないけど」

 砂漠の魔物って、中にはエーダに追い付くスピードを出す魔物もいるから、見掛けたら倒しとく方が良いんだよね。数も少ないし遭遇する事自体稀だけど、エーダを丸飲みするぐらい大きいから、エーダを手離すしか一般の人達には方法がない。そしてその魔物に風使いは相性が悪い。割りとよく聞くサンドワームと呼ばれる魔物だ。砂漠がある場所ならどの大陸だろうといるが、ヘグルスによって強さが違うから、中央デ・トルト大陸は一番弱いがそれでも一般の人達からしたら遭遇したくない魔物だろう。
 僕としては、サンドワームは魔物の核の他に確実にドロップする魔石系アイテムやたまにドロップするアイテムも稀少価値が高いから、遭遇出来たらラッキー♪って程度の魔物だけどね。

「ラファールこそ、自分でしないのに安全って説得力全然ないんだけど?!」

 兄さんが喧嘩腰で言ってくるけど、僕は戦闘要員なんだから安全とって魔物に先制されてどうするよ。

「じゃあ魔物に襲撃された場合、僕はモタモタして出遅れて良い訳?もしくは魔物襲撃を黙って見物してろと?言っとくけど魔物がサンドワームの場合、エーダに追い付くし、丸飲みするとかもあるからね?同乗する風使いは客を守りはするけどサンドワーム相手に闘うのは不利だからね?それでも僕に安全優先しろと?僕言ったよね、僕は魔物キラーでリ・ガングァも一人で倒せるから、兄さんよりは腕が上だって。それも忘れてるのかな?」
「うぅっ……」

 僕の言葉に返す言葉のない兄さん。
 因みにアーヤも僕と同じ様に飽きれてるし、セスはああまたか、といった心境なのだろう。
 うん。本当懲りないよね、この兄さん。僕に口ですら勝てないなら、黙って聞いてりゃ良いものを。セスなんて分からない事だらけだろうけど、質問や疑問とかを口にはしても、反論する事はないからね。しかも最小限で済んでるし。
 兄さんの場合、自分で考える事が少なくて、何でも聞いてくるからウザい。子供がこれ何?あれ何?何故?何故?って聞いてくる事ってあるけど、自分より年上の兄さんにされるのは本当ウザい。専門分野だけならいいけど、普通子供でも教わる事を覚えないってどうよ。教えても直ぐ忘れるから教え甲斐もないしね。

「サンドワーム以外の魔物は走行中のエーダに追い付く事はないから、魔物との戦闘を避ける分には良いけど、サンドワームは回避出来ないからね。普通は遭遇した場合、エーダを犠牲にして風使いが安全地帯まで誘導するんだ。相性悪くても攻撃だけなら防ぐ事が出来るからね」

 サンドワームは風魔法に対して皮膚を硬化させたりするから、普通の風使いだと傷付かない事もある。アル兄なら超一流の風使いだから風魔法で倒す事も可能だけどね。
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