英雄王の末裔 ~青のラファール~

カザハナ

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~フィルゼン領域~

指名手配をされました。

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「いたぞ!あいつだ、あの子供!!」
「捕まえろ!子供と思って侮るな!特部の方が手配を掛けてる犯罪者だぞ!!」

(――はぁ?!ちょっと待ってよ!何で僕を指差す、そこぉ?!!)
 明らかに僕へと視線を向ける聖騎士団員達。って、何で僕が犯罪者なんだよ!

「ちょっ、ラファール?!君、何やったの!?犯罪者ってどういう事?!」
「僕が知るか!何もやってないっての!」

(あんたなら未だしも、僕が聖騎士団に追われるような事する訳ないだろ?!そんな事すりゃあラファス兄が敵に回るんだから!十中八九、聖騎士団の敵に!!)
 ラファス兄の兄バカを嘗めちゃいけない。僕はラファス兄に怒られたという記憶が全く無い程ラファス兄に可愛がられてるんだから。
 ここは逃げるに限る!何もやっちゃいないが明らかに団員達は僕を敵視し、捕まえる気満々だ。
 相手の団員達は僕を犯罪者だと思ってるし、怪我をいとわないっぽいけど、僕はさすがにそうはいかない。手加減やセーブするのがまだ完璧じゃないってのに、敵意剥き出しで来られたら反射で相手を殺し兼ねないっての。

「アーヤ、セス、兄さんを宜しく!僕は元凶っぽい心当たりに接触を試みるから!」

 僕がその場で駆け出し、団員達に囲まれないよう塀や屋根へと伝い、アーヤは僕の言いたい事を理解した上で返事をくれる。

「解った!お兄さんから目を離さない」
「え?!ちょっ、ラファール何か違……って、アキーシィヤ?!何その解釈間違ってない?!?」

 いいや?アーヤの解釈は間違いどころか、僕の言いたい事をきっちりはっきり理解した上での返答だ。アーヤは僕の・・パートナーなんだから。

「ちょっ、おい、ラル、お前大丈夫なのか?!」

 僕は高い場所からセスの声に返答する。

「殺さないよう気を付けるー!」
「そこかよ!?」

 あくまでも、“殺されないよう”ではなく、“殺さないよう”、である。
 セスが、何か僕に対して突っ込んでるみたいだけど、そこ、大事だよね?
 向こうは一応殺されても文句は言えないと思う。何せ手違いとはいえ勝手に僕を犯罪者に仕立ててるし、集団で追い掛けて来てるし、間違いでしたで済むような状況では決してない。何より大人しく捕まってやる義理は僕にはないし、軽い気持ちで捕まって、牢屋にでも放り込まれてみろ。それこそラファス兄が知ったら確実に暴れるし、死者多数出ようと赤のラルファンスの宝に手を出したんだから自業自得だと言われるだけだ。
 僕はそんな危険をおかさせたくないし、自業自得とはいえ元凶は別だし、とばっちりで殺されたなんてさすがに可哀想だからね。元凶にはしっかりお灸を据えて貰わなきゃだけど、後々自身が何をしたのか思い知る羽目になるからなぁ。
 ただ、想定外だったのは、思いの外団員達が粘り、街中だけでなく道中まで食い下がってくれたのと、僕に休息らしい休息を取らせてくれる事無く追い掛け回してくれた事。
 アーヤ達の方には人員をかなかったらしく、僕だけに集中したっぽい。その点はまぁ、評価して上げられるかな。僕以外には冤罪の迷惑を然程さほど掛けなかったという事で。
 後で判明した事だけど、ウル兄が、僕は魔法たぐいが効き辛く、アル兄の風の探索ですら捜し出すのは困難で、一度見失えば捕まえるのは容易じゃない、とか何とか言ったらしい。
 お陰で昼夜問わず団員に追い掛け回され、僕の精神力と睡眠時間がガリガリ削られ、状況は悪化の一途を辿り、仕事関連でも無く忙しいアル兄に迷惑掛けるのはちょっとなぁと躊躇っていたが、そうも言ってられない切迫した事態に、アル兄に渡した箱型通話機を使用する羽目になる。

   ――ピロリロ♪ピロリロ♪――

(うぅ~、アル兄~~~!!!)

   ――ピロリ――ガガッ――

 アル兄が取ってくれたと解った瞬間、僕は通話機に向かって叫んでしまった。

「アル兄、助けてぇーーー!!」
『――ラル?!――』

 僕の切羽詰まった声にアル兄が瞬時に反応してくれる。

「僕、今、フィルゼンの最北の街近くにいるの!お願い、直ぐ来てアル兄~!!」
『――解りました、直ぐに向かいます!――』

 アル兄の声に、泣きそうになるのを堪えて、木々の間を移動するのを止め、上空からでも見えやすい場所へと移動する。
 僕達赤の血族に探索魔法はほぼ効かないけど、場所さえ判れば目視は出来る!後はアル兄が見付けてくれるか、僕がアル兄を見付けて声を上げるかすれば、アル兄は必ず助けてくれる!!アル兄を見付ければ、僕はひたすらアル兄に向かって走ればいいだけだ。アル兄なら安全に僕を保護してくれるから。


 それから数ガグル(※数分)程度で、アル兄は姿を見せてくれたので、僕はアル兄に向かって一直線に向かったのだが、僕を犯罪者だと思い込んでる団員達は、僕がアル兄に危害を加える気でアル兄に突進したんだと思ったらしく、そうはさせないと、殺してでも良いから僕を止めようと思ったらしい。
 勿論アル兄が風を操り、僕は傷一つ付く事無くアル兄に抱き抱えられ保護される。
 僕はアル兄にしがみつきながら、意識を手離す前にと、元凶であろう名を泣き叫んでやった。

「ウル兄の阿呆ーーーーっっ!!!」
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