英雄王の末裔 ~青のラファール~

カザハナ

文字の大きさ
67 / 113
~フィルゼン領域~

アルタ到着!

 アルタの街は、強い風が吹き込む場所であり、国に属さないデ・フォン領域の境目に建てられた街だ。
 アルタの北西には山々が、北東には砂漠が広がり、北に真っ直ぐ進めば騎士団本部があるデ・マームに着く。街の高い所からなら遠目に山々や砂漠を見る事が出来るだろう。
 南に進めば中央都市デ・ティームなので、訪れる旅人や商人も多く、とても活気のある街だ。

「うわぁ、スッゴイ賑やかだね~。何かお祭りでもしてるのかな?」

 兄さんが瞳をキラキラ輝かせてるが、僕から見れば、ここはいつもと変わらない。

「ここはいつもこんなだよ。祭り時はもっと凄いから」
「えっ?いつも?!」
「北はデ・マーム、南はデ・ティームで、どっちも王都ではないものの、主要都市として名高く、その間にあるのがここだからね。活気があって当然だよ」
「相変わらず詳しいよね。ここも来た事があるの?」
「当然。中央デ・トルトは特によく来る大陸だからね。仲の良い知り合いが集まり易い大陸なんだよ」

 その殆どがデ・マームの本部で会えるからね。特部の兄さん達が一同に集まるという日は少ないが、誰かしら必ずいるし、何日デ・マームにいるよと前以まえもって予定を言えば、その日に合わせて来てくれる兄さん達もいる。
 さすがにウル兄が仕出かした事は想定外だったから、ウル兄は日付調整してる他の兄さん達にもこっ酷く怒られるだろうなぁ。
 特部の兄さん達には物凄く可愛がられてるからね、僕は。
 多分その中でも一番怒ってくれるのはラファス兄だけどね。

「先ずは宿屋に行って部屋を確保しなきゃ。宿屋自体は多いけど、評判の宿屋は直ぐ埋まっちゃうからね」

 まぁ僕は穴場的な宿屋を多く知ってるから、あちこち探し回る事はないけど、行きたい宿屋が埋まってるとガッカリしちゃうもんね。
 お腹も減ってるし、美味しい物をたらふく食べたい。
 僕が宿屋を目指して歩いていると、兄さんが僕を呼ぶ。

「ねえねえラファール、見て見て、あれ!風車だよね?!」
「風車だね」

僕が示された場所をチラッと見て返事を返すと、兄さんは不満そうな顔をする。

「ちょっとラファール、テンション低いよ。もっとこう、わぁ~凄い!とかってないの?」

 そんな事言われても、僕、ここにも何度か来てるから。何度も見てる風車に、今更初めて見た!的な反応なんて出来ないよ。

「風車なら他の街にもあったよね?」
「いや、だって、大きさとか形とか、全然違うよね?」
「そりゃあ風の強さや用途も違うからね。でも、中央での風車はそれ程珍しい物でもないよ。ヘグルス(※重力)が軽い分、風の魔力が浸透し易いから。だから風使いの多くは中央出身なんだよ」

 他の大陸でもいるにはいるけど、中央と比べると断然中央のが多い。中央は風の大陸と呼んでも良いぐらい、風の魔力が漂っているのだ。
 ただし中央出身だろうと、風との相性が悪い人も、たまにいたりするんだけどね。

「「へぇ~、そうなんだ」」

 セスと兄さんの声がハモる。

「セスは知らなくても納得出来るけど、何で中央出身の兄さんまで今知ったって顔してんだよ」
「えっ、そんな話知らないよ。ラファールが詳し過ぎるだけでしょ」
「風の魔力云々は仕方ないとして、風使いの多くは中央出身ってのは、中央の人間にとって常識の範囲だっての!」

 何で僕が中央の人間に、中央の常識を教えなきゃならないんだよ。誰か、このお馬鹿な兄さんを根気良く教えられる教師を紹介して!!
 僕がげんなりしてると、同情の籠った視線をアーヤとセスから送られる。

「……もう嫌だ。この兄さん……」
「そっ、そう言わず、頑張れラル!」

 他の大陸なら未だしも、出身大陸の常識を知らないお馬鹿をどうしろと……。
 僕の呟きに、セスが僕を励ましてくれるけど、この兄さん相手にしてると本当に疲れるんだよ……。切り捨てた方がよっぽど楽なんだけど、そうすれば知らない所で色々やらかしそうだしなぁ……。
 キョトンとした顔で僕を見る兄さんが疎ましい。何でこの兄さんはこんなに常識知らずなんだよ!親出て来い、親!!

「とっ、取り敢えず、宿屋に向かおう、宿屋に!」

 セスの必死に話を逸らそうとする言葉に、仕方なく頷く僕。
 空腹だから、余計にイラつくんだと思う。さっさと行って、美味しい物で気を紛らわせよう。
 アルタは大きな市場もあるし、新鮮な食材も携帯食も豊富にあるから、食事が済んでから、色々調達しに行こう。先ずは宿屋で美味しいご飯~!
 食事所は宿屋じゃなくてもあるにはある。でも基本、安くて美味しいのは宿屋の食堂が多いからね。
 因みに、ラファス兄も僕も、料理は出来る。というか、ラファス兄の手料理は最高の出来だ。そこいらの料理人が敵う腕じゃない。
 そんなラファス兄が、そこそこ旨いと評する宿屋だからこそ、かなり美味しい料理が出てくる為、そこへと向かう。中にはラファス兄が、こうすればもっと旨くなるぞと教えた宿屋もあるからね。
感想 3

あなたにおすすめの小説

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Sランク宮廷魔術師、理不尽な理由でクビになったので田舎でスローライフ(農家)始めました

仁科異邦
ファンタジー
ざっくり言うと: 追放されても全然落ち込まない最強おじさんが、田舎で好き勝手やってたら村の柱になっていく話。 細かく言うと: 王立魔術師団の筆頭として十年間働いてきたSランク魔術師・ガイウス・ノア(32歳)は、次期国王を占う神託の儀式を執り行ったところ、まさかの自分の名前が出てしまう。 逆賊扱いで王都を追放されるが、本人はむしろホッとしていた。十年間、雑務と徹夜続きで好きなことを何もできなかったからだ。 財布の金貨を握りしめ、地図でいちばん何もなさそうな村——辺境の果てのエーデル村——を選んで移住を決意。幽霊が出ると噂の空き家を格安で借り、畑を耕し、ポーションを作り、夜は酒場でエールを一杯飲む。 夢のスローライフがついに始まった。 村人たちに正体を怪しまれつつも、 「俺はただの農家です」と言い張る日々が続く——。

氷河期世代のおじさん異世界に降り立つ!

本条蒼依
ファンタジー
 氷河期世代の大野将臣(おおのまさおみ)は昭和から令和の時代を細々と生きていた。しかし、工場でいつも一人残業を頑張っていたがとうとう過労死でこの世を去る。  死んだ大野将臣は、真っ白な空間を彷徨い神様と会い、その神様の世界に誘われ色々なチート能力を貰い異世界に降り立つ。  大野将臣は異世界シンアースで将臣の将の字を取りショウと名乗る。そして、その能力の錬金術を使い今度の人生は組織や権力者の言いなりにならず、ある時は権力者に立ち向かい、又ある時は闇ギルド五竜(ウーロン)に立ち向かい、そして、神様が護衛としてつけてくれたホムンクルスを最強の戦士に成長させ、昭和の堅物オジサンが自分の人生を楽しむ物語。

​弱小スキル【翻訳】が実は神スキルでした。追放されたが最強王国作ります

綾取
ファンタジー
万物の声を聴くスキル【翻訳】が実は【世界干渉】の神スキルでした~追放された俺が辺境を浄化して聖域を作ったら、加護を失った帝国が滅びかけてますがもう遅い。喋る野菜や聖獣たちと最強の王国を築きます

異世界で貧乏神を守護神に選ぶのは間違っているのだろうか?

石のやっさん
ファンタジー
異世界への転移、僕にはもう祝福を受けた女神様が居ます! 主人公の黒木翼はクラスでは浮いた存在だった。 黒木はある理由から人との関りを最小限に押さえ生活していた。 そんなある日の事、クラス全員が異世界召喚に巻き込まれる。 全員が女神からジョブやチートを貰うなか、黒木はあえて断り、何も貰わずに異世界に行く事にした。 その理由は、彼にはもう『貧乏神』の守護神が居たからだ。 この物語は、貧乏神に恋する少年と少年を愛する貧乏神が異世界で暮す物語。 貧乏神の解釈が独自解釈ですので、その辺りはお許し下さい。

不要とされた私が、拾われた先で人生を立て直すまで

藤原遊
ファンタジー
精霊魔法を使えない―― その理由だけで「不要」と判断され、家を追われた貴族令嬢セシリア・ローディン。 彼女が送られたのは、魔境に近く、精霊の気配がほとんどない開拓地だった。 形式上は人間の領域だが、住んでいるのは魔族との混血が多く、 これまで領主が実際に住み着いたことはない土地。 「領主が、本当に来たの?」 そんな温度の低い反応の中、 セシリアは使われていなかった屋敷を掃除するところから生活を始める。 精霊に頼らず、自前の魔力と工夫で畑を整え、 少しずつ“ここで生きられる形”を作っていく日々。 やがて、精霊王の機嫌を損ねたことで人間の世界に大飢饉が訪れる。 しかし、精霊に依存しない魔境近くの土地では、作物が普通に育っていた。 「ここは、普通にご飯が食べられるんだね」 行商人の一言で知る、外の世界との温度差。 そして――作物を求めて訪れる、かつてセシリアを不要とした人々。 これは、 精霊に選ばれなかった少女が、 選ばれなかった土地で居場所を築き、 静かに“必要な存在”になっていく物語。

勇者の付属品(おまけ)〜Hero's accessories〜爆速成長で神々の領域へ 〜創造神の孫は破壊神と三日三晩戦って親友になった〜

優陽 yûhi
ファンタジー
16歳にして日本最高峰の剣道の大会の優勝者である高校1年の颯斗(りくと)は、 3年生の生徒会長,副会長の佐伯と近藤の勇者召喚に巻き込まれて、 異世界に転移する。 何故か2人とは少しずれた場所と時間に転移した颯斗は、 魔物や魔族との戦いの中で、 人の限界を遥かに越える力を驚く程の速さで付けていく。 自分は勇者の付属品だと言う颯斗だが、 何故これ程までの能力を持っているのか? 勇者のもとに向かう冒険の中で謎が解けていく。