英雄王の末裔 ~青のラファール~

カザハナ

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~フィルゼン領域~

動かない懐中時計

「ねぇ、さっきの話、詳しく聞かせてくれない?」

 子供達がとぼとぼ歩いてる後ろから声を掛ける。周りに人気はなく、街の外れになる場所だ。
 子供達の中の一番年上っぽい男の子が振り返る。と言っても、僕より年下かな?七、八ファルレってぐらいの男の子と、五才ぐらいの……双子っぽい男女の三人。
 雰囲気からして双子と上の子は兄弟ではなさそうだ。双子を守るように背に庇うけど、服装からして双子の服はそこそこ上物で、上の子は普通の服っぽい。兄弟だったら一人だけ違う生地にはならないだろう。

「……子供?」
「うん、それはお互い様だと思うけどね」

 僕を見て、他に誰かいないのかとキョロキョロする上の子に切り返せば、困惑した顔をする。

「何か用?それに、さっきの話って何の話?」
「宿屋でしてた話だよ」
「……何でそんな事聞くんだ?」
「興味があるからね。僕はこれでもメカエンジニアなんだよ」
「「「メカエンジニア?!」」」

 双子達は素直に驚いてくれてるが、上の子は不振な目で僕を見る。

「面白そうな話が聞こえたから、詳しく聞いてみようと思ったんだけど、メカエンジニアの手が必要なんだよね?僕で良ければ話を聞くけど?」
「お前みたいな子供に何が出来るんだ?」
「大人はまともに話も聞いてくれてなかったみたいだけど、僕以外に聞いてくれるメカエンジニアに心当たりでもあるの?」
「……」
「それとも君達は、さっきの大人同様、相手が子供だからって、話をする気にはなれないっての?別にそれでも構わないけど、こんなチャンス、二度とないかもよ?」
「……チャンス?」
「僕の師は、ドワーフだからね」

 驚き瞳を見開く子供達。

「「「ドワーフ?!?」」」
「絶対とは言い切れないけど、中を見る事は出来ると思うよ?君達が信じればの話だけどね」

 子供達が戸惑い、悩んでいるけど、上の子が僕に決意を秘めた瞳を向けてくる。

「……これを、修理出来る?」

 ソッと差し出された物、それは見事な細工のふた付き懐中時計だった。
 僕はそれを受け取り点検する。

「あー……、動かす事は出来ると思う」
「本当か?!」
「「本当?!」」

 嘘ではない。これは間違いなくドワーフ製だ。
 ドワーフ製の物は、コツを知らなければ開ける事も出来ないし、傷すら付けるのも困難だ。彼等の作る物はとにかく頑丈で、ドラゴンが踏みつけても壊れないと言われる程の頑丈さだ。
 おじいちゃん以外のドワーフ製品、久々に見たなぁ。稀に見る事もあるけど、触る機会って滅多にないし、動いてる物ばっかだったから、解体とか出来なかったんだよなぁ。

「但し、条件がある。それを受ける覚悟はあるの?」

 “からくり屋敷”。あの宿屋の人が言ってた事が本当なら、この子達の家はそんな物で溢れてる可能性が大である。触りたい!弄りたい!って思うのは、メカエンジニアとして当然の欲求だと思うよ?

「「何でもする!だからお願い!!これを直して!」」
「おっ、お金なら、ここにある!」

 必死で懇願する子供達。さすが双子。綺麗にハモってる。けど僕、子供のお小遣いなんて期待してないよ。そもそも稼ごうと思えばいくらでも稼げる身だからなぁ。

「お金、ねぇ。悪いけど、子供のお小遣いで直せる程安くない。普通の物なら未だしも、ドワーフ製品なんて、直せるのはドワーフか、僕みたいに教わった事のある者ぐらいだ。それにドワーフって、ドワーフの技術を他種族に教えるのを忌避する人が多いから、ドワーフ族以外で知る者は殆どいないんだよね。だから、君達がどれだけお金を持ってても、足りないと思うよ?」
「じゃあどうすればいいんだよ!!」

 涙目で僕を睨んでくるけど、僕は最初からお金なんて要求してないんだってば。

「だから、最初に言ったよね?話を詳しく聞かせてって。そもそも君達に正当なお金が払えるとは思ってないし、条件は別物だ。話を聞いた上で、僕の条件を言うから、先ずは話を聞かせてくれる?これや、からくり屋敷の事とかも」



 要約するとこうだった。
 からくり屋敷は二百ティファル程前の昔、ドワーフが地主から借りてた家で、街の発展の為になる物をと頼まれ、家その物を改造したらしい。至る所に仕掛けを施し、訪れる客を楽しませ、美しい音色の時報で街や旅人を喜ばせていたそうだが、今から五十ティファル程前に徐々に仕掛けが動かなくなっていったらしい。祖父母代の人達の多くがその仕掛けの動いていた事を知る者達で、この懐中時計が最後の一品。
 この懐中時計は奇跡的に動いていたらしい。数ウィテルル(※数ヶ月前)までは。

「この懐中時計はおじいさまの大切な物で、触っちゃダメって言われてたんだけど、どうしても見たくて……。内緒でお部屋に入って持った時に、おじいさまがお部屋に入ってきて、それに驚いて落としちゃったんだ……。そしたらもう、うっ、動かなくなっちゃって……」
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