奇跡の確率

カザハナ

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「コーディー、それ、噂の恋人?!」

「それ言うな!クリスに失礼だよ!」


 ジェイと手合わせして座り込んでたであろうエルが、ルー兄との交代により僕達のいる方に近付き、金以外がいることに気付いたのだろう声を上げた。


「クリスって事は、やっぱ恋人だよね!ルーが言ってた名前と一緒だし!っていうか、よくコーディーみたいな高難易度物件、手を出す気になったよね。もしかして、知らなかった?ルーの存在」


 いや、確かに僕に告白してくれた最初の段階では、ルー兄は姿を現さなかったから紹介もできなかったけど!それとこれとは別だよね?!

 僕は思わずクリスを見る。


「ルーフェンスの事は知らなかったが、知っていても関係ない。コーディーのような良い女を見す見す取り逃がす方がどうかしてる」


(うっ、嬉しいけど同僚の前ぇ~~~っ!いや、クリスはそういう人だけど、そういう人だけど~~~っっ!!!)

 僕が顔を真っ赤にして頭を抱えて悶えてると、アンバーが突っ込む。


「言い切ったね。まぁ確かに良い女なんだろうけどさ」


 アンバーの言葉にクリスが不機嫌な顔をする。


「コーディーは私の物だ。今更譲る気はない」


 はい、クリス、暴走中~!って、他の金とはそんな関係じゃないし、僕だって譲られたくないよ!


「いや、いらないから。じゃなくて、僕達にとってもコーディーは異性じゃなくて妹分だからね。コーディーは好きだけど、恋愛感情ではないんだよ」


 アンバーが素早く訂正を入れる。何せいらないって言った瞬間、クリスだけでなく、ルー兄の方からも不穏な視線が飛んできたからね。


「っていうか、ルーはこんなに離れてるのに聞こえたの?凄〈すっご〉く不穏な視線を感じたけど……」

「勘?ルーは鋭いから」

「鋭いってレベルじゃないよね?明らかに異常だよね?」


 うん、だから、聞こえてるからね?ルー兄は獣型だから、人間よりも聴覚や嗅覚が鋭いからね。

 僕の視界にノゼとラズの姿が入ったので手を振ると、二人も振り返してくれる。


「コーディー、っと、お客さん?」


 ラズの問いにアンバーが答える。


「コーディーの恋人で見学者だよ。そうそうエル、自己紹介しろよ」

「ああ、ごめんごめん。オレはエルバ=アイトでっす!エルって呼んでね♪宜しく~!」

「ラズライ=テランです。こっちはノゼ、ノゼアン=フォノライ。コーディーの恋人なら、略名で構わないよ」

「皆、姓まで名乗っちゃってるね。一応僕の姓はサンダーだけど、一気に言われて覚えるのが大変でしょ?他の金が呼んでる呼び名で良いと思うよ。反論は?……ほら、いない。まぁ僕は略名だと女名になるから、皆にも略さず呼んでもらってるけどね」


 アンバーは皮肉屋だけど、面倒見良い。家では一番上のお兄ちゃんなんだって言ってたよ。
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