奇跡の確率

カザハナ

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112 (クリス視点)

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 私の可愛い恋人は、どれ程私を夢中にさせれば気が済むのか。

 しかも、質〈たち〉が悪い事に、コーディーは自身の魅力に無頓着だ。

 だからこそ、さっさと押し倒して、自分だけのものにしたいと、時折思ってしまう私に気付かず、女の顔を無邪気に晒し、翼を触ってみたいとか、猫姿の私を抱き締めるとか、普通のキスがしたいとか言い出せるんだろう。

 翼有人の翼はとても敏感で、同族でも、他人の翼に触ろうとしない。翼は魔力の素でもあり、性感帯だ。恋人もしくは伴侶の片翼以外が、通常触れる事は無いし、例外があるとすれば、重罪犯罪者のみだ。重罪犯罪者は、その両翼を切り落とされ、飛ぶ自由も魔力を使う事も出来なくなるのだ。

 コーディーは人間であるから、翼有人の翼事情を知らない。翼を触るという行為その物が誘っている行為だという事に。コーディーが知らないと解ってはいるが、先に進みたい気持ちと、今はまだ駄目だという理性が押し合う。

 私が今以上の関係へと押し進めないのは、単〈ひとえ〉に、戻れなくなるからだ。関係がではなく、天空へだが。

 今後、拠点を地上に移すだろうが、幼馴染みは言うだろう。何故お前まで、と。人間が仕出かした事を忘れたのかと。人間が、同胞である彼女〈セレス〉の片翼を切り落とした事を。片翼と選んだ人間に、自身の片翼を奪われ、自由も寿命も削り取られる事の惨〈むご〉さを。

 勿論忘れてはいないが、彼女〈コーディー〉だけは譲れない。あの男を許す事は出来ないが、コーディーと出会い、恋人となって、セレスの気持ちが少し解った気がする。

 『帰りたくない、彼の傍にいる』と言って説得しようとする私達の言葉に、頑として頷かなかったセレスの気持ちを。

 私もコーディーに乞われれば、翼を自ら切り落としてもいいと思ってしまいそうな程、コーディーに惹かれているのだから。

 契約じゃない、普通のキスがしたいと言われ、どういう物だと聞けば、コーディーが私に押し付けるだけの口付け、とはいえ、コーディーから・・の口付けを貰った上に、満面の笑顔まで見せられて、必死で理性を掻き集め、深いキスでは嫌なのかと問えば、否定した上で契約の為だけでは嫌だと、可愛い発言をしたコーディーを、存分に味わい、堪能するのは当然の事だと思う。

 まだ、先へは進めないから、キスだけは存分にする。深かろうと軽かろうと、する相手はたった一人〈コーディーのみ〉だ。

 この唇を、咥内を、味わえるのは私一人にしてほしい。私がコーディーにとって、最初で最後の男であれば良い。

 翼を触られ、その気持ち良さに何とか気を逸らす。

 深い青系の色に縁があるなら、この先もずっと私の腕の中で居ればいい。

 私の帰る場所は、この先コーディーの傍にある。
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