奇跡の確率

カザハナ

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 瑠璃色の瞳と毛をした猫の怪我の具合を見ていると、猫の後ろ、少し離れた場所から人が出てくる。

 さっきの声の奴等だ。

 近くにいるのは気配でわかってたけど、一、二……三、四人……か。

 長い棒を持った男達。一番最初に顔を出した男が僕の服装をじろじろ見る。殺気を隠そうとしないままで。


「おい小僧……配達人みたいだが、その魔物を渡せ」


 いきなり出てきて上から目線。しかも小僧って……ムカッ。


「はあ?何言ってんの?」


 僕の言葉と態度の悪さに男が一瞬顔をひきつらせるが、相手は子供だとでも思ったのか、噛み砕いた説明を入れる。


「変に庇ってんじゃねぇよ。どう見たって魔物だろうが!早いとこ始末をしとくべきだ」

「そうだそうだ!」


 後ろの仲間も同意する。が、僕は違う。


「――どう見たって?」


 確かに毛色は変わってる。そんじょそこらの人よりかはあちこち行き来してる僕ですら見たことない毛色だ。だけど。

 ひとまず猫をあまり動かさないよう抱き上げ、渡さない意思を言葉に乗せる。


「魔物を知りもしないでよく言うよ。この猫〈こ〉はどう見たって魔物じゃない!」


 瞳に闘志を燃やし威圧する。


「それでもやる気なら僕が相手だ」


 僕の放つ威圧にビクッと身体が反応する男達。

 普通の配達人とは違うと感じ取ったのだろう。僕を小僧扱いした男が声を出す。


「小僧……名前と部所は?」


 猫を抱えたまま、手袋を外した左手を男達が見えるように袖を引っ張りながら上へと向ける。


「コーディー。コーディエ=コーズ。ヴェネック本部に勤めてる」

「!!!」


 男達が目一杯瞳を見開く。僕の左手首にある純金の腕輪を見たからだ。


「――はぁ~……只者じゃないと思ったら、金の腕輪の持ち主かよ……」

「まあね。これさえあればどこでもパスだし、売れば一生食うに困らない程の大金が手に入るからって狙ってくるバカも多いけどねぇ」


 もちろん普段は見せないよ。でも、通行証や身分証として使った時に情報が洩れる時があったりするんだよね~。毎年開かれる武術大会でも、見た目で僕が一番弱そうに見えるのか、指名してくる人達が多い。

 他の金の人達には、コーディー、モテモテだなってからかわれるぐらいだし。どうせなら本当の意味でモテたいよ。


「それでも、金を持ってるってことは認められた者でありお前の実力ってことだろ。俺は、採用試験にすら残れなかった。お前はあの地獄とも言える採用試験に受かりそれを手にした。そんな奴相手に勝てるかよ。参った。俺達はそいつから手を引くよ……」


 男が他の仲間に声を掛ける。


「帰るぞ」


 男に促され立ち去ろうとするが、その顔は、あれが金って……嘘だろ?!悪夢だ……。人は見掛けによらねぇな。あいついくつだよ。等々心の声が駄々漏れである。やっぱしめときゃよかったかなぁ。本っっ当に腹の立つ……。もちろんこの猫を優先するけど。

 猫を膝の上に乗せ背中に担いでた大きなカバンを開く。旅の必需品は全てここに入ってる。


「――今、手当てするからね」


 出血が多い。だけどこの猫はついている。

 僕の持ってる薬は簡単に手に入る物ではなく、地霊族が作った特別製。早くよく効く優れもの。

 薬をたっぷり手に付けて、猫の体へと塗り込む。

 いつの間にか猫は気を失ったようだ。無理もない。あのまま放って置いたらあいつ等に見付からなかったとしても死んでた筈だ。

 僕はたまたま通り掛かっただけだけど……。


「本当、間に合って良かった……。こんなに綺麗な猫を殺そうとするなんてどうかしてるよ」


 猫の血で服が血塗れになっちゃったけど、洗えば済む問題だ。本当は川かどこかでこの猫も洗ってあげれたらいいんだけど……血を洗い流すのは危ない。引っ掻き傷程度なら問題ないけど、大量の血は魔物や獣を誘き寄せてしまうから。

 地面に残った血だまりに土を被せ、血で塗れた上着を脱ぎ猫をくるんだ上で、さらに毛布を巻く。

 魔物も獣も基本、活動時間は夜だ。中には違うのもいるけれど、一般的な魔物や獣なら僕の敵じゃない。この猫を抱えていたって余裕で勝てる。

 でも、今必要なのは、この猫が安心して休める場所だ。
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