奇跡の確率

カザハナ

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「あの!コーズ先輩!す、少しだけ、お時間いただいてよろしいでしょうか?!」


 僕がルー兄と外に出た時、横手から声を掛けられた。その相手は今年の見習いで、トーナメント戦の一位を獲得した彼だった。


「この場で良いのなら構わないけど、人と待ち合わせてるから手短にお願い」


 そう僕が伝えると、彼は瞳をキラキラさせる。


「はい!有難う御座います!!先程の試合、凄く格好良かったです!俺、貴方の事を誤解してました。すいません!あんなに強いなんて全く気付けなかった。俺の実力不足です。それでも、次に金との挑戦権を獲得したら、また、コーズ先輩を指名してもいいですか?勿論、俺がそう簡単に勝てるなんて、これっぽっちも思ってません!でも、それでも挑戦したいと思ってます!!」

「うん、どうぞ?」

「なっ、生意気に聞こえるかも知れませんが、俺は――」

「だから、いくらでもしていいんじゃない?そもそも、挑戦権を獲得したら、大会参加者の金になら誰を選んでもいいんだし。僕は一応毎回参加してるから、君の気が済むまで何度でも来ればいいよ」


 僕の声が届いたようだ。彼は吃驚したような顔を僕に見せる。


「ただし、武術だけ鍛えてもノルマをこなせなかったら、当然挑戦権どころか、大会参加資格すら貰えないからね?下級中級になれば、自分よりも長く働いてる人達と競うことになるし、理不尽なことや大変なことは多いと思う。でも、僕が金でいる限り、僕は待ってるから。君との再戦を」

「~~~っっ!!はいっ!」


 再度彼が瞳をキラキラさせる。元気だなぁ~。さて、そろそろ行かないと、待たせることになっちゃうや。

 そう思って彼から視線を少しずらすと、クリスが僕の方へと歩いて来る姿が見えた。


「クリス……」

「えっ……」

「ああ、ごめんね、僕もう行くから。帰りの道中気を付けてね」


 彼に別れの挨拶をして、クリスの方へと駆け出す。ルー兄も一緒にいたけど、クリスを一人にしたくない。他の女性に近寄らせたくないからね。

 そんなことを思ってたら、何故か後ろから叫び声が聞こえた。

 (???今の声ってさっきの?)

 振り返って見たら、ルー兄が手を振ってくれた。何だったんだろ?今の?

 
「余所見してると危ないぞ」


 クリスの声で前を向き、速度を緩める。


「クリス、ただいま~♪」

「ああ、お帰りコーディー。優勝おめでとう、見事な試合だった。疲れてないか?」

「うん、問題ないない♪頻繁にはできないけど、たまに金同士でしてるから。僕達金の向上心だって、他の等級にも負けないよ。金になったからって、それで満足してちゃ、それこそ命がいくつあっても足りないからね」
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