EAT ME

白洲涼

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プロローグ

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 薄暗い路地裏にて。ラジオの音が聞こえてくる。軽快な音楽とともに22時を知らせてくる。
「さて、22時になりました。ニュースのお時間です。本日、午後4時、''食べ合わせ"事件が起こりました。」
ふいに、その音が止まった。ラジオが勝手に壊れたわけではない。壊されたようだ。
「あ、止めた。聞いてたのに。」
「こんなの聞いたって意味無いでしょ。」
 どこにでもある会話に聞こえるが、どこにでもある日常ではない。それは彼女たちの足元が物語っている。そう、無数に転がる死体である。しかもただの死体ではない。魂を吸い取られるという比喩が物理的に起きた感じだ。生前は若く、希望に満ち溢れていたであろう青年。いまではしわだらけの老人のようだ。
「なんでこんなことしなきゃ行けないわけ?血生臭いの本当に嫌い。」
「仕事だから。」
「しかも、最近やけに多くない?この仕事。」
「仕事だから。」
「それしか言わないね、よっちゃん。」
「よっちゃんって言わない。さ、帰ろう。」
そうして二人は車に乗り込む。人が転がる場所にキープアウトを貼ってから。
 
 世界には三大欲求という言葉がある。睡眠欲・性欲・食欲である。これらは一見全く別物にも見えるが、実は通ずるものがある。それは『食欲』へとつながるということ。眠る時間が取れないと溜まっていくストレスがいつしか食べることへ。セックスによって快感を得たいとき、誰かを食べたい、もしくは食べられたいという欲へ。そうしていつの間にか『食欲』へと変化しているのである。だが、これらが当てはまるのは一部の人間だけだ。
 はじまりは、平安時代。藤原氏の名が馳せていた頃に遡る。ある村にかわいらしい赤子が生まれた。その赤子は授乳中にふいに母の胸を噛んだ。その瞬間、光に包まれた。叫び声を聞いてとんできた赤子の父は驚いた。そこにいたのは短刀とその短刀で遊ぶ赤子であった。急いで赤子から短刀を取った。すると、赤子は泣きじゃくる。おもちゃがなくなったからかと思ったが、様子がおかしい。ふいにすだれから光が入ってきた。それを短刀で防ぐと屈折した光の先に赤子の母が姿を現した。そう、この母親、武器化してしまったのである。
 時は、現在。あの事件が起きてから何百年という時を経たであろう。今では人口の約三割が武器化する人間である。時代を経てわかったことは、まずこの武器化する人間というのは動物世界の弱肉強食と同じである。例えばライオンがシマウマを喰らうように強い人間が弱い人間を喰らう。するとその弱い人間は武器化する。しかし、この逆をすると食べ合わせが起こり両者共に命を落とす危険性がある。そこで、政府は食べ合わせが起こらないように、武器化する人間達の苗字には動物の文字を入れるように義務付けた。
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