神なのか?

モモん

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第一章

第5話 彼女が奴隷に堕ちた理由

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 どちらかと言えば、割高で奴隷を購入した代わりに、彼は家まで馬車で送るよう要求した。
 結局、4人で金貨12枚。
 健康的な奴隷の相場が金貨8枚だと言われているので……というか、普通に考えれば、健康な30才くらいの女性が買える金額になる。

 火傷の少女は毛布みたいな布に包まれており、彼が抱きかかえて家に入る。
 抱いてきた少女はソファーに寝かせる。
 意識はないようだが、時々顔を痛そうに歪めている。

「さてと、その子の治療からだね。裸にしてくれる。」 

「ふぁ、ふぁい。」

 裸といっても、パンツの残骸のような布と、体を覆っている布1枚をめくるだけだった。
 火傷で爛れた部分から布を剥がす度に、それでも弱弱しく顔が歪む。
 体の半分近くが爛れていて、本来白いはずの部分も煤で黒く汚れていた。
 奇麗だったであろう金色の髪も、半分以上が焼け焦げてチリチリになっている。

 普通でいえば、目を背けたくなる惨状であり、現に少女2人は顔を背けている。
 唯一、少女を看取りたいといった女性だけは、涙をポロポロと流し、嗚咽をあげながら少女を見ていた。

 彼は意識を集中して、横たわった少女の体を再生していく。
 キラキラしたエフェクトが少女の体を包み、数分後には少しずつ白い裸体が現れた。

 小学校高学年といったところだろう。
 顔からは苦しそうな表情が消え、穏やかな寝息をたてている。

 涙の止まらなかった女性が、何が……といいながら、彼の顔を見ている。

「これで大丈夫ですよ。」

「どうして……奇蹟?」

「単なる、治療系の魔法ですよ。まだ、休息は必要ですので、寝室で寝かせてきますね。」

 彼は裸の少女を抱いて寝室へ運んだ。
 そして、リビングに戻った彼は全員に裸になるように言った。

「大丈夫、これから皆さんも治療しますから。」

 彼は魔法っぽく見せながら、管理者の能力を使って全員を治療……というか修復していった。

 3人を包んでいたエフェクト消え、治療が終わった体が現れる。
 
「「「ええっ!」」」

 驚きを隠せない3人を無視して、彼は話しを始める。

「俺はロビンという、冒険者兼商人をしている。よろしくね。」

「い、今のは……何だったのでしょうか。先ほどのお嬢様を治療していただいたのも……」

「あはは、俺だけしか使えない高度な治癒魔法です。」

「魔法って……、足が生えてきたんですよ!」

「わ、私の指も……はえた。」

「こんなの、聞いたとがありません。」

「まあ、とりあえずこれを着ていてください。ああ、マヒとかも治っているハズなので、動かないところがあったら言ってくださいね。」

 彼は全員にグレーのスウェット上下を出してやった。
 治療のついでに、クリーンの魔法で体もきれいにしてある。

「だ、大丈夫です。痙攣も消えました。」

 40代後半の女性はローズマリーといった。
 本人の同意を得て、マリーと呼ぶことになる。
 セミロングで栗色の髪をしており、公爵家でメイド長をしていた独身の女性だ。
 これまで独身を貫いていたせいなのか、白い裸身には艶があり、やや大きめの乳房は張りを失ってはいない。

 かといって処女ではなく、多少の経験はあった。
 若い頃には結婚を考えた事もあったが、横暴な先代の公爵に性行為を強要され、それが原因でその恋人とは別れてしまった。
 それ以来、ベント王国公爵家メイドとして仕え、3年前からメイド長に就任している。

 今回、彼女たちが敗戦国の奴隷として捕獲されてしまったのは、火責めで燃え盛る公爵家から令嬢を助け出したものの、共に酷い火傷を負ってしまったために、敵であるドルト帝国側に治療を求めたからだ。
 それが3日前の事で、応急処置を施されて、奴隷商に引き渡された。
 マリー自身の火傷は、そこまで酷くなかったが、ベッドで火に包まれた令嬢の方は、マリーから見ても絶望的な状態であり、せめて10年共に過ごした自分が最後を看取ってあげたいと、本心から思っていた。
 マリーにとって、令嬢のリズは娘のような存在だった。
 たとえ奴隷に落ちてもいい。
 自分がどうなってもいいから、彼女には生きてほしい……
 一度諦めた想いが、思わぬ形で叶う事になった奇蹟。
 彼女はその奇蹟を神に感謝した。


 獣人は固有名を持たないため、茶髪ボサボサ頭のネコ娘はミケ、青灰色ボサボサ頭の狼娘はポチと名付けられた。
 呼び易さ優先で決めたらしい。
 もし正常な日本人ならば、自殺されてもおかしくない名づけだった。

「お休みいただいているお嬢様は、ベアトリス・フォン・ローズベック様。ベント王国の公爵令嬢にございます。」

「悪いが、誰かを特別扱いするつもりはない。全員同じように働いてもらう。」

「はい……承知いたしました。」

「わかった」 「うん」 と少女二人も応じた。

 令嬢は、屋敷ではリズと呼ばれていたらしい。
 感謝の言葉と涙でボロボロの顔だったマリーが落ち着いたのを見計らい、寝ているリズを二人に任せて、彼とマリーは買い物に出た。
 15才の男子と49才の女性。
 女性が若く見えたとしても、親子の年齢差である。
 間違っても、”奥さん”と呼ばれる事はないだろう。

 だが、買う品物が生活雑貨中心であった事からも、何軒かの店員は”奥さん”と呼びかけてしまう。
 その度に15才のロビンは真っ赤になって否定し、マリーが自分はただのメイドだと言い訳をする。
 そういう誤解を無くすために、マリーはメイド服を購入した。
 それ以降は、誤解する店員もいなくなった。

 彼が真っ赤になったのは、その都度彼女の裸の胸を思い出してしまったからで、後ろめたさから赤くなってしまったのだ。
 本来の彼は32才の独身男性であり、白く透き通るような胸は、十分にドキドキを誘発する対象だった。

 当面必要な4人の着替えや裁縫道具。
 食材、寝具などを買いそろえた二人が家に帰ると、リズは目を覚ましていた。
 とりあえずの食事として買ってきた屋台の串焼きと、日本でいうチジミのような焼き物で腹を膨らし、風呂を沸かす。
 これは、元々の家にはなかった設備で、魔道具で暖かい湯を出し、大理石で作った浴槽に溜めていく。
 ついでに彼が能力で作った、保湿効果と美白高価の高い入浴剤もいれてある。
 獣人の二人は、一目で分かるくらいに日焼けしていたのだ。

 ポンプ式のボディーソープやシャンプーも用意され、彼が入浴前に使い方をレクチャーする。
 この世界には、プラスチックもシャンプーも発明されていない。
 地球で洗髪にシャンプーが使われるようになったのは19世紀頃であり、プラスチックが使用されたのも同じような時期だ。
 
 4人が入浴中に彼はベッドと寝具を部屋にセットする。
 マリーとリズを同室にし、ミケとポチも同じ部屋にしてやる。
 一人部屋よりも、話しのできる相手がいた方が、安心して眠れるだろうという配慮だ。 

 風呂からあがって寝巻に着替えた4人は、そのまま短時間で熟睡してしまう。
 ちなみに、全部の部屋に魔道具の照明がついており、常夜灯に切り替えができる。

 まあ、翌日になれば、マリーから質問攻めにされる事だろうと覚悟して彼は眠った……いや、眠ったのはロビンの肉体で、彼の意識は睡眠を必要としない。


 彼の改造した家は総板張りで、室内ではゴム底の皮サンダルを履くようにしてある。
 一般的な住宅では西洋風に土足なのだが、日本人としての彼の意識は土足で室内を歩き回る事に抵抗があったのだ。


【あとがき】
 奴隷
 実は聖書の記述の中で、神が奴隷を容認している部分が多くあります。
 これに対して、信者の方々がネットでも色々と理由を述べていますので、興味があったら調べてみてください。
 私自身は、キリスト教の神の残酷さに嫌悪感を抱いています。
 彼は自分に反する存在を悪と断定し、自分の創造した人間の子孫であっても、情け容赦なく殺します。
 箱舟の洪水がいい例ですね。
 洪水の時に、生後間もない無垢の赤ん坊でも、悪と決めつけて殺します。
 そういう記述はありませんが、そういう意味ですよね。
 まあ、地球全体が水没したなんて事はあり得ませんし、あの部分は天動説を元に描かれています。
 あの部分というか、創世記をきちんと読むと、天動説が基本になっているって感じざるを得ませんよね。
 ちなみに、私は聖書を倫理書として評価はしていますよ。
 歴史書や預言書ではあり得ませんです。
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