神なのか?

モモん

文字の大きさ
21 / 42
第一章

第21話 お兄様!男爵家の再会を演出してみた

しおりを挟む
 日が沈み、男たちが松明を片手に砂漠へ出ていく。
 というか、この村には男しかいなかった。

 男たちを見送った彼は、予期していたとおり背後から襲われた。
 山賊刀のような一撃をかわして振り返った彼が見たのは、村長と中年の男が二人。
 村長は笛のようなもので大きな警笛を鳴らした。

「出ていった男たちを呼び戻す合図か。」

「なぜ分かった……」

 そこへ斬りかかる二人目の男は、意識を失って倒れた。

「牛など最初からいないし、この辺りにサンドワームはいない。となれば、ニセの依頼を出した理由など簡単に想像できるさ。」

 最初に斬りかかった男も倒れる。

「何をした……」

「お前らこそ、他の住民をどうした。お前の家の床下に骨は埋まっていたようだが。」

「煩い!全てを我らに差し出せば、命は助けてやる……」

「食人族の生き残りか……哀れなもんだな……」

「俺たちだって、国が豊かだったら、普通に暮らせてたんだ!それをドルトの奴らが!」

「この村が捨てられたのは、井戸が枯れたからだろう。骨は老人のものばかりだ。お前らはそんな村を襲って……」

 村長も意識を奪っておき、全員をキングアリジゴクの巣に投げ入れていく。
 戻ってきた男たちも同様だ。
 
 ギルドに戻った彼は、村は全滅した後だったと報告した。

 食人族といっても、絶えず人を喰う訳ではない。
 食人に禁忌を持たない一族なのだ。
 老人が言っていたように、国が豊かであれば表面化する事はないだろう事件。
 やるせない想いだけが残った。

 現在のベントは、人口2万人ほどの中央区と、北区・南区に5千人程が住んでいた。
 行政は殆ど機能しておらず、物流は途絶え、自給自足の生活に戻っていた。
 貨幣の信頼は失われ、市場では物々交換が行われている。
 時折ドルトから届く支援物資は一部残った貴族が独占し、民衆に行き渡る事はない。
 冒険者も、肉を狩るための狩人に特化し、獲物と交換で酒を飲んでいる始末だ。

 彼は規模の小さい南区から手をつける事にした。
 畑を作って雇用を生みだし、食料を売る店を作っていく。
 こうして、貨幣の価値を復活させるのだ。
 報酬はドルトの貨幣で支払い、店はドルトの貨幣しか受け付けない。

 畑の作物をドルトの貨幣で買い上げて、店で売り出す。
 足りない生活必需品はドルトで買い足してベントで売りさばく。
 冒険者から直接獲物を買い上げて、肉を捌ける者を雇い入れて、冷蔵庫を導入して販売していく。
 食材を加工する場所と販売する店を作って食料を提供する。

 そうすると貴族が接触してくるが無視だ。
 こいつらの持っているベントの金貨など、もう価値を持たない。
 金を買い取る仕組みがなければ、こいつら貴族など無一文も同然だった。
 
 それでも、自分たちに価値があると思い込んでいる輩は、高圧的に作り上げた全てを略奪しようと近寄っていくのだ。

「ご苦労であった。以後の事は領主様が引き継ぐのでお前は退いて良いぞ。」

「領主?誰だそれ?」

「愚か者め、ジョルエル伯爵様を知らんのか!」

「お前バカだろ。国が存続していないのに、何が領主だよ。」

「貴様、痛い目を見たいのなら見せてやる!」

 数人が彼を取り囲むが、勿論一瞬で無力化される。

「領主とやらの元に案内してもらおうか。何を根拠に領主を名乗っているのか確認し、不当に領主を名乗っているのならば、資産を没収させてもらう。」

 その男、筆頭書記官に案内させて領主とかの屋敷に乗り込んだ彼は、屋敷に詰めていた兵士とも思えない男たちを無力化していく。

「お前が領主というのは本当か?」

「いきなりやってきて無礼な男だな。おい、ボケっと見てないで始末しろ!」

 もちろん、瞬時に十数名が無力化されてしまう。

「なあ、誰がお前を領主に任命したんだ?」

「そ、それは……前領主のエドガー伯爵だ!」

「第1に、伯爵に領主の任命権などない。」

「ぐっ……」

「第2に、ドルトが中央区を占拠した際、全貴族の解任を通達した。」

「お、俺は知らん……」

「第3に、現在、ドルトの皇帝からここの全権を任されているのは俺だ。お前は領主を騙って住民から搾取を続けていたそうだな。」

「し、知らん!」

「不当に領主を名乗った罪で、財産は没収する。お前は国外追放とするので、明日までに国外へ退去せよ。以上だ。」

 彼は屋敷中の金属を改修し、宝石も取り上げてしまった。
 当然、蝶番も外れドアが倒れて、馬車も解体してしまう。
 男たちの手にしていた武器屋防具も外れ、一瞬で無力化されてしまう。


 彼は店等を10軒単位でグルーピングし、取りまとめする責任者を決めさせた。
 更にグループが10件集まったところでそこの代表を決める。
 ある程度集合ができたところで、組織を補佐する団体を作っていく。
 当然だが、そこには雇用が発生し、賃金を支払わなければならない。
 そこには、各店から彼に上納するハズの収益の20%を充てる。
 
 同じように北区でも団体を作って、まとめ上げていく。
 爵位は解除したが、それでも協力的な元貴族は、事業を任せる事にした。

 そしていよいよ中央区だ。
 最初に、ドルトからの物資を横領していた貴族を一掃する。
 
 中央区には行政の形態が残っていたため、一応それは残しておくが、爵位は全て解除した旨通告する。
 当然、これまで支払われていた貴族手当ては廃止だ。
 いかに過去の功績があろうと、現在のベントは敗戦国なのだ。

 特に貴族は見極めて処分していく。
 もし、リズの身内がいたら、そこは配慮してやりたい。

 そして、産業課のラーグラ課長と面談した。
 彼は聞き覚えのある名前だと思った。
 セラン・ラーグラ元男爵、おそらくマリーの兄にあたるハズの男性だ。

「ローズマリーという名前の女性をご存じですか?」

「……確かにローズマリーは侯爵家に務めていた。だが、王族とは無関係の女だ……」

「ですが、おそらくは王族最後の一人、ベアトリス・フォン・ローズベックと一緒にいた女性。」

「そうか……、ご令嬢と最後まで一緒だったのだな……」

「ええ、大火傷を負ったベアトリス嬢を最後まで看取りたいと私に懇願してきました。」

「……確かに王族に非はあったのだろう。だが、年端もいかぬご令嬢に……罪はないハズ……」

「そうですね。ラーク皇帝も、そこは認めています。」

「……それで、ベアトリスはお嬢様を看取って差し上げられたのだろうか?」

「さあ?」

「貴殿が保護したのではないのか!」

「まあ、奴隷として二人を買いましたが……」

「それは……敗戦国の定め……」

「ちょっと待っていてくださいね。」

 彼はそういって屋敷に返って、マリーに兄に会いたいか確認をした。
 そしてもう一度ベントに瞬間移動し、今度は課長を連れて店の個室に瞬間移動した。
 目をパチパチさせて状況を把握しようとしている。

「お兄様……」

「えっ?……ローズマリーなのか!」

「はい……お兄様。」

「ど、どういう事だ!」

「えっ、だから、俺が奴隷として買って、まあ、今は家族みたいなもんです。」

 そこにドアがノックされ、リズが入っていく。

「お嬢様、兄のセランになります。」

「ベアトリスでございます。」

「……大火傷……いえ、旧男爵家セラン・ラグーラにございます。よくぞ、よくぞご無事で!」

「おやめください。無事を喜んでくださるのは嬉しいのですが、現在の私はロビン様の娘リズです。ローズベックの名はとっくに捨てています。」


【あとがき】
 感動の再会
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜

KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞 ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。 諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。 そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。 捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。 腕には、守るべきメイドの少女。 眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。 ―――それは、ただの不運な落下のはずだった。 崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。 その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。 死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。 だが、その力の代償は、あまりにも大きい。 彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”―― つまり平和で自堕落な生活そのものだった。 これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、 守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、 いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。 ―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

アラフォーおっさんの週末ダンジョン探検記

ぽっちゃりおっさん
ファンタジー
 ある日、全世界の至る所にダンジョンと呼ばれる異空間が出現した。  そこには人外異形の生命体【魔物】が存在していた。  【魔物】を倒すと魔石を落とす。  魔石には膨大なエネルギーが秘められており、第五次産業革命が起こるほどの衝撃であった。  世は埋蔵金ならぬ、魔石を求めて日々各地のダンジョンを開発していった。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...