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第5章
極上エビ味せんべいの原料
しおりを挟むこのアマゾン大ホールは、アマゾン川の中流域にある直径10kmに及ぶ大穴である。
深さは約30m。アマゾン川の支流が数本、滝のように流れ込んでいる場所もあるようだ。
「モア、木は未処理のままポーチに放り込んでおいていいかな?」
「良いと思うわ。乾燥や加工は向こうの冒険者や作業ゴーレムでも出来ますからね」
そうと決まれば早かった。2本同時にポーチに取り込み、その場から離脱する。
ほとんどの場合、何かが落ちてくる。
ファイたちがそれを処分し、同時に周辺の表層を削って穴を埋める。3時間ほど続けると周囲100mくらいは森らしくなってきた。
サル系のモンスターは遠巻きに様子を伺ってくるが、攻撃してくることはなさそうだ。
「今日はこのくらいにしておこうか……」と言いかけた時、コングが「ムシ、来る」と伝えてきた。
かすかにキーンという風切り音が聞こえる。
「ああ、大丈夫だ。全員、超高速移動を発動しておいて。結構早いよ
種族はメタル・インセクトでキラー・ビートル。高速で体当たりしてくるだけかな……」
「キラー・ビートルですか。ごちそうですよ」
そう言いながら、カーリーが出刃を片手に俺の後ろに回り込んできた。
何を?と言いかけた時、最初の一匹が飛び込んできたので、鉈の平で叩き落す。キンッと金属同士がぶつかる音がした。
地面に叩き落されたキラー・ビートルをカーリーが回収し、手早く殻と身を分離する。身はすぐに消滅したが、黒光りする殻はそのまま残った。
続けて数十匹……狙いは俺のようだったが、それも十秒足らずで叩き落とし、カーリーが殻を回収する。
「緊張感なさすぎじゃね?」
「聞いてください、ご主人様。キラー・ビートルの殻は超高級食材なんですよ。この5cm程の殻が一個20~30万円。
手間はかかりますし、すぐに殻を剥がさないと生臭くなってくるので時間との勝負なんです」
違う意味で真剣だったと、カーリーの表情がそう語っており、それが全部で45匹。市場価格で1千万円相当の収穫になった。
「とても美味しそうには見えないんだけど……」
「このまま齧っても、歯が負けてしまいます。乾燥させてから、余計な薄皮を取り除いて蒸してもう一度乾燥させます。
それをお酒に漬け込んで24時間おくと、ほんのり甘みが加わって柔らかくなってきます。
この時点で、だいたい5倍の大きさに膨れますけど、ここで3cm角くらいに切ります。あとは、焼いてもよし、煮てもよし。
この欠片を10倍まで薄く延ばして焼いたものが”極上エビ味せんべい”として市販されています」
「えっ、あれってこれが原料なの!」
「ヒメ様もご存知でしたか」
「母に言われました。海に生きる者として、いつか越えなければいけない壁だと。
本物のエビが、どうしても追いつかない至高の味。
一箱10万円という高級品にもかかわらず、予約が満杯でとても入手できる品物ではないと。
一枚だけいただきましたが、もうお口の中が幸せで溢れていました」
「そっ……それほどのモンなのかよ……」
「調理を趣味とする私が、2級品3級品の生臭いものを使って磨き上げてきたレシピを、存分に発揮させていただきます」
「カーリーは、その前に新ジョブの披露をお願いしますね」
「……はい……」
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