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第5章
スキル奪取
しおりを挟む愚痴をこぼせるのはミカンしかいなかった。
「……2年我慢すれば、転属願いが出せるからさ……
うちの部長にも言っておくよ……
そうだ!サングラス!」
「サングラス?」
「そう。簡単な変装だけど、目元を隠すだけで気分が変わるらしいよ。
サングラスをつけている間は、別人を演じるの」
ミカンのアドバイスで、イメチェンすることにした。
黒のパンツスーツにサングラス。髪はショートカットにしてオールバック。
たったこれだけの事で、精神的に楽になった。
「お休みの日は、普段の二人に戻ってボランティアとか好きなことをすれば気分転換になるはずよ」
MRSにもサキ&ヨーコ財団の運営する孤児院がある。
休みの日はそこで何もかも忘れて子供の相手をする。
国外に出るようになると、ショコラは教会や治療院へ出入りし、私は料理の勉強に没頭するようになる。
配属から2年経った頃、急に女性限定で神話級の先代たちが隠居すると言い出した。
神経痛だとか腰痛だとか、どうにもいい加減な理由だったが、噂では温泉に目覚めたらしい。
隠居表明した全員が湯治に行くと言い出して、未だに戻ってこない。
先代の指名で、私たちは神話名の後継者となった。
ミカンはマンティコアでショコラはイシュタル。私はカーリーである。
襲名したところで、自分たちの環境が改善される訳でもない。
襲名から3か月後、やっと新しい名前に慣れた頃に急な仕事が入った。
NJP教会長の弟が来訪し、MRS迷宮の探索を希望しているらしい。
それに同行して、死なせないように面倒を見るというのが表向きの指示で、本当の理由は相手のステータス確認と、害意を持っているかどうかチェックしろ、というものだった。
「なんで私たちなんですか!迷宮の案内なら慣れている人が大勢いるじゃないですか!」
「そうですよ。今日はオフなんですから、出番の人が対応するべきでしょ!
子供の世話なんて、私たちの仕事じゃありません!」
「外務局から、できれば予定の入っていない者で、今日から明日にかけて対応可能な者と指定されているんだから仕方ないだろう。
休日出勤扱いにしてやるから我慢してくれ」
実はコアから情報が入っており、今日と明日は休暇をとっておくように言われている。
コアたちの取り掛かるプロジェクトが結構大掛かりになりそうで、関係を持っておけばそっちに関わることができるかもしれない……と。
指定された時刻に出向くと、いきなりイシュタルのスキルを暴露されてしまった。
しかもスキルを消すって……できるの?
「イシュタル……大丈夫?」
「違うの……精神操作なんて……要らなかった……
あなた達には使ってない……」
「うん。
知ってたよ。私も、コアも」
「えっ?」
「友達だもん、それくらい分かるわよ」
イシュタルは泣き崩れた。
「ともかく、私とコアで何とかするから」
「いらない……もう……スキルなんて……要らないから」
「うん……そうだね。
もう、こんなサングラスも要らない。
ホントの私たちに戻ろう」
「……うん」
「じゃあ、行ってくるね」
こうして、私とご主人様の迷宮攻略が始まった。
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