3秒の強奪者 モンスターから奪ったスキルで魔王を倒す

第5章

迷宮への同行

「なに、この子。
あり得ないでしょ……」

「驚いた？」

「なんで鉈(なた)なんて持ってるの？」

「さあ……」


「なに、ヒトデスライムって？
美味しいのかな？」

「さあ……」


「ねえ、なんで毎回ドロップがあるの？」

「さあ……」


「コアが誘ったんでしょ。
隠してないでちゃんと教えてよ」

「いや、私もよく分からないんだ。
分かっているのは、鋭敏な探知能力と、人並み外れた身体能力。
規格外のテイムスキル持ちってくらい」

「イシュタルのスキルを消したのは？」

「それも初耳だよ」

「あのメタルキャットもテイムなの？」

「タイムしたみたいだけど、実はメタルキャットじゃないんだな」

「えっ？」

「オリハルコンスライムって新種が擬態してるんだってさ」

「何それ……」

「さあ……」

ご主人様との出会いはこんな感じでスタートしました。



レアメタルの中でも、特に貴重とされるオリハルコン。
その特性は、魔力の作用による超高速微振動だ。

昨今、高速振動による切断はあり得ないとされているが、それは左右の振動によるもので、オリハルコンは魔力により前後に微振動する。
オリハルコンの断面はざらついているいる。つまり、ノコギリやヤスリのようなものだ。

金属本来の色は、フェニックス由来であることからやや黄色味を帯びたメタル色になる。
だが、表面が絶えず振動している状態では、光の反射が刻々と変化しており、色の合成が起こる。

「あのライムってオリハルコンスライムの周りで、時々キラキラしたりかすんだりして見えるのは、細い糸でも使っているんですか？」

「ええ、そうですよ。
オリハルコンスライムは、何本もの糸状の触手を操っています。
見てみますか？」

「見られるんですか！？」

「ライム、触手をみせてちょうだい。
……はい、これですよ。
０．１ｍｍ以下なので、髪の毛みたいなものですよ」

「こんなのが、自分に向かって飛んで来たら……いえ、認識すらできずに……クビチョンパ……ですよね……」

「耳の穴から体内に侵入させて、頚椎の神経系統だけ切断したらどうなるんでしょう……」

「面白そうですね。
こんどＭＲＳの政治家で試してみましょうか」

「あっ、是非うちの部長でお願いします」