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第三章 冒険者

薬局部門創設

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爺さんとの酒は楽しかった。
キノコ鍋も旨かったし、爺さんの出してくれた酒もいけた。

「物は相談なんじゃが……」

「なんだい」

「仁の店で、薬を置かせてもらえんかのう」

「うちは大歓迎だが、症状を聞いて薬を出すなんて、売り子には無理だぞ」

「そこは、カエデを行かせるつもりじゃ」

「この店はどうするつもりなんだ」

「わしが細々と続けていくつもりじゃよ」

「うーん、だったら、爺さんはうちの支店で店を出したらどうだ」

「わしがか」

「一番売れるのは、解熱剤と腹痛だろう」

「まあ、そうじゃな」

「それ位なら、爺さんが不在でもうちの店員が売れるさ。
爺さんは時々顔を出せばいい。
あとはここで薬を作ってればいいだろう」

「そんな事が……」

「ああ、問題ない」

こうして、雑貨店の本店と支店で薬を扱うようになった。
実は、貴族街にも店を開いてほしいというのは、貴族からの要望なんだそうだ。
薬屋に馬車で乗りつけたりすると噂になるらしい。
もっと、気軽に薬を買えるように……というのが要望で出ていたところ、雑貨屋に薬を置けば、ついでに薬を買っていくという感じになる。
うちとしても、集客が見込めるのだから、三者にとってメリットのある話なのだ。

俺は、爺さんに提案して、常備薬セットを作ってもらった。
木箱入りで、解熱剤・傷薬(軟膏)・下痢止め・痛み止め・消毒薬をワンセットにした救急箱だ。
これもヒット商品となった。
特に小さい子供のいる家庭では、必需品となっていった。
子供は、ちょっとした事で熱を出すのだ。

「仁さんはすごいですね。
この年まで薬を扱っておきながら、常備薬なんて考えもしませんでした」

「俺たちの世界では、当たり前のことだったんだ。それだけの事さ」

「子供さんが夜中に熱を出してしまい、うちへ駆け込んでくる人も多いんですよ。
だったら、家に薬を置いておくって、なんで思い浮かばなかったんだろう」

「はははっ、そういうもんですよ。
当事者は気づかなくて、第三者から言われる事ってよくありますから」

常備薬は、貴族街でも支店でもよく売れた。
もちろん、補充用のものを単品でも買えるようにしてある。
逆に、お客さんの方でもこれくださいって、指定して買えるようになってくる。

この5種類ならば、うちの店員でも販売できる。
店の忙しい時には、カエデさんにも手伝ってもらっている。
結局、カエデさんは通うのが大変ということで、住み込みとなった。
その代わり、支店で爺さんの面倒を見てもらう。
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