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第三章 冒険者

風呂を作ろう

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「なあ恭介、風呂を作らないか」

「ああ、俺も考えていたんだ」

「川の水を引き込んで、水車で持ち上げてろ過して沸かす。
できなくはないよな」

「問題はどうやって沸かすかなんだ。
まさか五右衛門ぶろを考えているわけじゃないだろ」

「ああ、そうだな。
できるんなら、常時お湯が出てくるのがいいな……」

「それなんだけどな、魔石に魔法を書き込む技術があるらしいんだ」

「それができるんなら、お湯の出口に設置すればいいんだな」

「ああ、誰ができるのか、今ジャンヌに確認させているところだ。
うん?ジャンヌだ」

「仁さんもご一緒でしたか。
魔石の書き込みですが、城には技師がいないみたいです。
以前、城勤めをされていた、調剤師のラファエル様が得意にしていたとか聞きましたが、今は市井で薬屋を開業されているとの事です。
店の場所などは、現在調査中です」

「調剤師って……薬屋だよな……まさか……
ちょっと、確認してくる」

俺はカエデさんのもとに行き尋ねた。

「なあ、爺さんの名前って……ラファエルってのか」

「そうですけど何か?」

「魔石に魔法を書き込めるって……」

「ああ、それなら私にもできますよ」

こうして、お湯の問題は解決した。
風呂からの排水は、魔石に浄化の魔法を書き込んで生活用水として利用する。
あとは、用水の使用許可をとって配管し、風呂が完成した。
同時に10人くらい入れる大浴場だ。

俺は、爺さんから保湿成分のある薬草を聞いて、それを絞ってオイルを作った。
入浴剤変わりだ。

店の閉店時間を待って、一番風呂を女性陣に提供する。

「本当に、先に入っていいの」

「ああ。メイドと店員も一緒に使ってくれ。
シャワーも用意してあるし、入浴剤もバッチリだ。



こうして、王国に風呂が誕生した。

「ああ、生き返るわね」

「お湯に入るのって初めてですけど、こんなに気持ちいいなんて」

「カエデさんのおかげですね」

「私は、言われた通りに魔石を加工しただけですから、発案とこれを作ってしまう行動力。
仁さんと恭介さん、お二人の功績ですよ」

「最初は。頼りなさそうな二人だったんだけどね」

「そうなんですか」

「ええ、私からしたら年下だし、ふらふらしてる感じだったしね。
智代梨ちゃんとは仲悪そうだったし……」

「この生意気そうな二人と、この世界でやっていけるのかってね……」

「それが、今や貴族の中でも一番の注目株ですからね」

「そうなの?」

「ご存じないんですか。
ここのメイドなんて、もし今欠員が出て募集するとしたら、貴族の次女、三女が百人は並びますよ。
逆に言えば、余程のことが無いと欠員なんて出ないって事ですけど」
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