魔導師の記憶

モモん

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第二章

第13話 商業ギルド

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 お姫様として育ったお母さまに領地運営など出来るはずもありません。
 正直なところ、少しは役に立ってほしいのですが、先日の領地内会議でも発言内容を理解出来ているのか怪しいところです。
 なぜ、一歳半の私が、こんな苦労をしなくてはいけないのでしょうか。
 日々、不満が募っていきます。

 漁業を拡大するといっても、国内で海に面しているのはここだけ。したがって、大型の船を作る技術などありません。
 私はライムさんと相談して、隣国で船を入手できないか確認することにします。
 
 私とミーシャとライムさんが訪れたのは、ギルマール王国の王都です。
 そこの商業ギルドで、所持品を売って船の購入代金を確保するんです。
 ライムさんに同行してもらったのは、ここに知り合いがいるとのことで、交渉がスムーズにいけばと来ていただきました。
 入り口を入ったところで、ライムさんが小さく手を振ります。
 フロアの中にいたエルフのお姉さんが気づき、対応に出てきてくれます。

「3年ぶりね。今日は客?それとも冷やかし?」
「客のほうで頼むわ。」
「じゃあ、こちらへどうぞ。お客さま。」

 エルフのお姉さんは大げさにお辞儀をして私たちを案内してくれた。

「こちらが、今の私のボス、リサ・フォン・ジェラルド様。」
「フォン・ジェラルド様って、もしかして……。」
「リコ・フォン・ジェラルドの娘、リサでございます。よろしくお願いいたします。

 私が挨拶するのと同時くらいにエルフのお姉さんは立ち上がった。

「し、失礼いたしました。わたくし、当ギルドで仕入れを担当しております、マナと申します。
まさか、稀代の魔道具師リコ様のお嬢様とは知らず、ご無礼な態度をとってしまいました。深くお詫び申し上げます。」
「大袈裟ですよ。マナさんもお掛けになってくださいな。」
「はい。ありがとうございます。」
「あはは。マナはこの通り、魔道具フェチなんですよ。」
「お前やシルビアだって対して変わらないだろ!」
「まあいい。本題に入ろう。これを売りたいのだがどうだ?」
「魔導照明だな。ギルマールにも少量だが入ってきていたのだが……。」
「ほう。」
「最近出回っている、魔法局製造のものが品質が悪いとクレームになって、値崩れをおこしているんだ。」
「そうみたいだな。」
「うちのスタッフがチェックしたところ、ミスリルと魔法石の品質が悪く、十分な効果を発揮できていないと判明した。」
「これは、オリジナルだ。質は保証できる。」
「なに!リコ様が亡くなられて1年半。サラ様も忙しくて、オリジナルはもう残っていないと聞いているぞ!」

「最近になって、定時便が通常に復活したという情報は入ってないか?」
「ああ。その話は聞いた。」
「定時便と飛行艇は、サラ様も指導を受けていないそうで、修理も作成も無理だといわれていたんだ。」
「……それがなぜ……まさか……まだ一才半……。」
「誰だって、まさかと思うよな。」
「別に、お父様と同じことをしているだけですよ。」
「というわけで、品質保障のオリジナルだ。いくらで引き取る?」
「オリジナルなら金貨10枚だ。」

「では、確かに魔導照明40台受け取りました。こちらの提供する船4隻は一週間後に港町ゼロスでお渡しいたします。」

 そう。船の発注も商業ギルド経由で受けてくれました。

「うちでも、色々な魔道具の模造品がでまわっていましてね。」
「へえ、模造できるだけ凄いですよ。」
「模造というよりも見た目だけ似せたバッタもんですよ。この間携帯用魔導コンロが持ち込まれたんですけどね。」
「携帯用の魔導コンロは軍にしか出していませんけどね。」
「四角い鉄の箱を作って、その中で火魔法を発動させてたんですよ。」
「事故は起きなかったんですか?」
「箱全体が加熱されて、魔法石はすぐに壊れました。そんなのばかりですよ。」
「光源の魔法なんて、簡単な構文なんですけどね。」
「だめですよ。マーリンの魔法書に載っていない魔法は、研究すらされていません。」
「マーリンの使えた魔法は、火・水・土・風だけですからね。」
「えっ?」
「ああ、マーリンの手記が子孫のところに残っていて、そこにそう書いてあるそうです。マーリンの先生にあたる魔導師たちは、もっと色々な魔法を使えたそうですよ。」
「大魔導師マーリンを超える魔導師が……存在した……のですか?」
「そのようですね。重力・光・闇・体など、全ての事象は、魔法で改変可能だと考えられていたそうですわ。」
「それは……確かにそうですね。4大元素とかいわれていますけど、世界はそれだけでできているわけじゃないですものね。」

「ところで、新しい領地へはいつごろ着任されるんですか?」
「先週から順次移転が始まっています。私どもも、もう住み始めていますわよ。」
「えっ、もう……ですか?」
「なんでしたら、これから見学にまいりませんか。おかげさまで船の手配も終わりましたし。」
「いえ。今からでは、到着が夜になってしまいますよね。」
「個人で使っているスカイボールというのは、定時便よりも早いですから、国境まで1時間程度。3時間あれば余裕で戻ってこれますわ。」


「これが……空を飛ぶということ。」
「地上と違って、最短距離を移動できるから早いのよ。」
「だからって、500kmを1時間だなんて……。」
「空気にも重さや圧力がありますので、これ以上の速度だと色々な問題が出てくるんですよ。」
「この空気に重さが……。」
「はい。空気が冷えると水になります。水の小さい粒が集まっているのが雲。」
「曇って、水の粒なんですか?」
「そうです。水の粒が大きくなって落ちてくるのが雨。」
「これに乗っていけば、雲に触ることもできるんですか?」
「触るっていっても霧や煙みたいなものだから掴めませんけどね。」
「それじゃあ、魔法で雲を作ったり、雨を降らせたりもできるのでしょうか?」
「やったことはありませんが、多分できると思いますよ。」
「砂漠に雨を降らせることもできるんですか!」
「理論上は可能だと思いますけど、長期的にといわれると、どこかに水源を見つけないといけませんね。」

「すごいです。本当に小さな集落ができているんですね。」
「どんどん家と住民を増やしていきますからね。」
「ちょっと思ったんですけど、例えば国境沿いに道を作るでしょ。」
「予定にはありませんけど。」
「道の左側にティアランド王国の商店、右側にはギルマールの商店を並べれば、二つの国の産品がここで変えますよね。」
「……交易都市ということですね。認知されるまで時間はかかると思いますけど、良いアイデアだと思います。」
「リサ様。それなら宿泊施設とかも作って、ほかに楽しめる設備も作りましょうよ。」
「そういえば、この間見せていただいた波乗りのボードに推進力をつけたら楽しめないかしら。」
「海だったら、船を使えば色々と楽しめそうですね。」
「商店だけじゃなく、食べ物のお店があったら楽しいですよね。両方の国の料理を食べ比べたりするのも楽しそう。」

 物流都市という発想は面白そうです。
 両国の王都とヒーズル間を行き来する定時便を作れば、両国間の交流も広がるし、交易をヒーズルの産業として育てていけばいいのかもしれません。
 お母さまとも相談して、具体的に検討する必要がありそうですね。


【あとがき】
 魔導サーフィンボード。あったら楽しそうですよね。
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