稀代の魔物使い

モモん

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第Ⅳ章 ワイバーンの故郷

ナイフ

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アリシアをダイトウまで連れていき、あとは燻製室や食器・鍋を希望するだけ作ってもらう。

「じゃあ、私はこれで帰ります。
アリシア、頑張ってね」

「はい。
いろいろとありがとうございました……」

「バカね、泣くことないでしょ」

「この2年間は私にとって宝物です……」

「ええ。私もアリシアの煮物は忘れないわ。
時々、ソースをもってくるから、そんな顔しないで」

「絶対ですよ……」

「うん、約束する」

私はミーちゃんたちと王都に向かいます。
でも、王都は素通りしてナキュの町です。

3匹のワイバーンは大人の人間くらいの大きさになり、ピー助の飛行術も覚えました。
これなら、海産物を運べるんじゃないかと思ったんです。
木箱にサランの葉を敷き詰め、海産物を詰めて屋敷に向かわせます。
メイドたちには話してあるので、ちゃんと運べればすぐに調理してくれるでしょう。

それともう一つ……
ミーちゃんたちに、ヨロイウオを捕ってきてもらいます。

例によって ズバーン バシャーン と派手な音を立てて3匹のヨロイウオを入手できました。
そこから包丁を3振りと小型ナイフ20本を切り出してもらいます。
身は箱詰めにして屋敷行きです。

アルトハインの王都には、ちょっとだけ顔を出し、ちかいうちにラトランドへの同行をお願いしました。
そのままダイトウに引き返して、アリシアに包丁とナイフを一本ずつ手渡します。

「我が家の卒業記念よ」

「宝物にします」

「駄目よ。ちゃんと使ってちょうだいね」

屋敷に戻ると、王様がいました。

「どうしたんですか?」

「ヨロイウオというのを食べさせろ」

「送った分しかありませんけど」

「なんでもっと捕ってこないんだ」

「もともと珍しい魚なんですよ」

「だが、俺だけ食べてないんだぞ」

「知りませんよそんなの。
はいはい、邪魔ですから城へ帰ってくださいな」

「それが王に対する態度かよ」

「あっ、そうだ。ヨロイウオのナイフを差し上げますから」

「ナイフだと」

「ヨロイウオの甲羅から切り出したんです。
髭剃りにいいんじゃないですか」

「これは、ジェシカとシーリーンには無いんだな」

「ええ。我が家のメイド専用です」

「お前にとって、俺ってメイドと同列なのかよ……」

「要らないんなら返してくださいな。
錆びないし、切れ味抜群のナイフなんですから」

「いや、俺のだ」

「納得したのならお城へ……」

「次のヨロイウオは?」

「近いうちに捕りに行きますよ」


「いつもありがとう」 と、メイド15人に一本ずつナイフを手渡していく。

さあ、落ち着いたらラトランドへ向けて出発するぞ!

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