稀代の魔物使い

モモん

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第Ⅳ章 ワイバーンの故郷

飛行服

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パトリアの帰国する2日前に、私はマリアーナと追加で派遣の決まったアンとメイとを連れてアルトハインに出発します。

「トイレは済ませましたか」

「「「はい!」」」

「じゃあ、出発!」

彼女たちの荷物を含めて、8匹のワイバーンがあとに続きます。
もちろん、全員例の飛行服姿です。

メイドたちは、時間があればワイバーンに乗る訓練をしており、彼女たちも例外ではありません。
もっとも、自分でワイバーンを誘導することはできませんが、それなりに慣れたようです。

飛行中、別段事件もなく予定通り2時間と少しでアルトハインに到着いたします。

ワイバーンの巣を城の中庭に作ったので、そこへ誘導します。
予め、予定時間を伝えておいたので、中庭を取り巻くように大勢が出迎えてくれました。
もちろん、カイン王子とゼン王子もいます。

ワイバーンを降りて外套を脱ぎ、出迎えてくれたみなさんにカーテシーで応えます。
メイドたちとセシルもそれに続くと、皆さんから大きな拍手をいただきました。

そのあとで、パトリアも一緒に王様にご挨拶させていただきます。

「なあ、その飛行服にゴーグルってカッコいいよな」

「でも、嫁入り前の娘の恰好じゃないって、お姉ちゃんからいわれました」

「バカだな、飛行服を脱いだ時のギャップがいいんじゃないか。
こう、目出し帽をとったときに、髪がフワッと広がった時には、周りから感動の声が聞こえてたぜ」

「うふっ、そんなにセクシーでした?」

「そ、そんなんじゃねえよ」

「あはは、ゼンがいうように、飛行服はいいよな。
と、その前に、俺のわがままを聞いてもらえて感謝する。
実は、ワイバーンというのは子供のころからの夢だったんだ」

「そうなんですか?」

「ああ。ワイバーンに乗って空から自分の国を眺める夢を、何度も見たほどだ」

「じゃあ、お二人にプレゼントしちゃいましょうか」

「プレゼント?」

「これ、メイドさんたちが作った飛行服です。
目分量ですので、多少大きめに作ってありますから」

「「おお!」」

「いいのか」

「もちろん。
そのために作ったんですから」

「感謝する!」

「セシルは2日後にパトリアを迎えに来るまで残していきますけど、私はナキュに仕入れに行きますから、よかったら一緒に飛んでみます?」

「是非お願いしたい!」

「よかったな兄さん。
夢がまた一つ叶って」

「ああ、シーリアに出会ってから俺の人生は変ったよ。
もし、ラトランドがワイバーンを独占したままだったら、一生叶わなかっただろうからな」
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