縄文の女神 -異世界なんてないんだよ-

モモん

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第一章

第1話 狩猟生活

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 数日は食堂の冷蔵庫・冷凍庫の食材を食べて過ごした。その間に各自が狩りの武器を作る。俺は1.5mの竹棒に果物ナイフを括りつけた手槍を作った。ナイフは勿論食堂のものを拝借した。一番戦闘力の高いリュウジは、食堂で見つけた牛刀包丁と倉庫にあった鉈を装備している。本人は剣道二段だと言っているので期待していいだろう。コトミは自前のスリングショットらしい。なんでそんな物を常備しているのかは分からないが、近接用には太さ15mmの電気ケーブルをムチにするようだ。

「準備はいいか?」
「「おう!」」
「カラのペットボトルは持ったな?」
「「おう!」」
 今回の目的は、周辺の偵察を兼ねた水の確保だ。学校から300mほどのところを流れる目黒川で6本のペットボトルに水を汲んでくる。非常災害用倉庫に飲料水として180本程のペットボトルが確保されていたが、洗い物などに使うのは勿体ない。そこで、カラになったペットボトルに水を汲んでくるのが主ミッションだ。ついでに、食材があれば確保するし、人の痕跡があれば確認する。
「でも、もしも異世界だったらどうします?」
「ああ、魔法とか使われたら太刀打ちできねえからな……」
「心配するな。物理法則を無視するような事象は起こりえない。」
「委員長は異世界の怖さを知らないからそんな事を言えるんですよ。」
「世界の根源を記録するアカシックレコードのデータを書き換えれば、物理法則なんぞどうとでもできちまうんだぞ。」
「なんだそれは?
「……たとえば……そうだな、ゲームのチートやったことないか?」
「いや、ゲームは縄文プレイバックしかやったことない。」
「なんだそれ……まあいい。PCでもいいんだが、ゲームにはプログラムとデータが存在する。」
「ああ、それは分かる。」
「そのデータを外部から書き換えたらどうなると思う?」
「どうなるって?」
「例えばこの牛刀包丁のデータを、博物館にあるような日本刀のデータで上書きしてやると、その瞬間にこいつは日本刀になるって訳だ。」
「それって物理法則を無視してるじゃねえか。」
「それが魔法とか神の力ってことだよ。」
「いやいや、そんなこと現実に起こるわけないって。じゃ、いくぞ。」

 人のいない地域だ。道などあるはずもない。とはいえ10月の後半ともなれば枯れた草も多い。俺たちは比較的背丈の低い枯草を踏みながら川まで進む。目黒川は、東京都町田市と神奈川県相模原市の間を流れる境川の支流で、下流は江の島の横に注ぐ。水源はつきみ野から3kmほど上流の湧水になる小川程度の支流だ。川岸まで高低差10mほどの坂を下っていく。
「おっ、キジだ。」
「狩りましょう。」俺の声にミコトが応じる。
「どうやる?」
「俺がやります。この距離であのサイズならスリングショットでいけますよ。」
 ミコトはそういうとベルトにさしてあったスリングショットを引き抜き、ポケットから小石を取り出した。そして簡単に狙いをつけ小石を放った。バシュッ!っと小気味よい音を立て胸の辺りに命中しキジは倒れた。俺たちはキジまでの10m程を走って獲物を見つめた。まだバタバタと動いている。ミコトはポケットからナイフを取り出し、首のあたりを切った。
「すげえな。」手際の良さにリュウジが感嘆の声をあげる。
「何をやってるんだ?」こっちは俺の問い。
「血抜きっすよ。こうやって血を抜かないと、肉に血が回って不味くなるっす。それから、肛門から開いてっと……内臓をとるっすよ。これも鉄則っす。」
「なんでそんなこと……」
「委員長、前に言ったじゃないっすか。俺の爺ちゃん東北で漁師やってたって。」
「そういや、そんなこと言ってたな。」
「あっ、委員長ちょっと持っててください。メスもいますから。」
 ミコトはそういうとキジの足を持ち上げて俺に手渡した。首から血が滴り落ちている。メスはオスと違って尾羽が短い。ミコトは次の獲物も同じように仕留め、淡々と処理していく。
「なあ、キジって国鳥じゃなかったっけ?捕まったりしないのか?」
「おいおいリュウジ、この状況で誰に捕まるんだよ。それにキジが国鳥に指定された理由って、美味いからなんだぜ。」
「委員長もよく知ってるっすね。世界でも国鳥を食べる国って日本くらいらしいですよ。」
「くっ、雑学大会かよ……、どうせ俺は脳筋だよ……」
 メスの方はリュウジが持ち、俺たちは川で水を汲んだ。ミコトはナイフの血を洗い流し、タオルで水をふき取っている。
「ステンレス製のナイフっすけど、刃物類は使ったらすぐに汚れを落とした方がいいっすよ。」
 なんだか、ミコトが漁師に見えてきた。

 帰りには栗を拾い、木の実を確認した。
「なんだこれ?」
「ブルーベリーっぽいよな。」
「リュウジ、試してみろよ。」
「どれどれ……ウゲッ!酸っぱくて渋い……おえ……無理だ、食えねえよ。」
「染物とかには使えそうっすね。」
「少し持ち帰って図書室の図鑑で確認するか。」
「こっちはクズっすね。確か、根っこが食用になるはずっすよ。」
「葛根湯だな。風邪をひいたときに役立ちそうだ。他にもいろいろあるから、サンプルをとって調べてみよう。」
「植物に関しては知識無さすぎっすね。」
「しょうがないだろ。こんな事態は想像できなかったからな。」
「うー、まだ口の中が渋い……ペッペッ……あれ?なんだ?」
「どうした?」
「ほら、校舎の入口の横のほう……白いのが……」
「イヌっぽいですね……」
「仮に今が縄文時代だとすると、あんなイヌはまだ存在してないハズだぞ。」
「じゃあなんだよ。」
「多分オオカミだろうな。だが、ニホンオオカミにしては大きすぎる。しかも白いオオカミとなると……ホッキョクオオカミか……シンリンオオカミあたりかな。どちらも日本にはいなかったはずだが。」
「委員長、詳しいっすね。」
「ああ、こいつは縄文オタクとオオカミオタクで有名なんだ。」
「こうして眺めてるわけにもいかんから、少し近づいてみるか……。野生なんだ、油断するなよ。」
 俺も手にした手槍を握り直し、少し腰を折り曲げて近づいていく。
「なんでそんなへっぴり腰なんだ?」
「動物に対しては、威圧感を与えないようになるべく低く接したほうがいいんだ。」
「そっ、そうなのか……」
 10m……5m……、白いヤツはうずくまったままウーッと威嚇してくる。3mまで近づいたところでキバをむき出しにして唸り声が大きくなった。
「この辺りが限界だな……」
「ケガしてるんじゃねえか。ほら胸と脇腹のあたりに血が滲んでる。」
「餌付けしてみましょうか。本当は一晩寝かせておいた方が美味くなるんですけど。」
 ミコトはそういうと俺のぶら下げていたキジを取り上げ、キッチンテーブル代わりの机に向かった。
「リュウジさん、火を起こしてください。」
「おっ、おう。」
 俺は3mの距離でしゃがみこんだ。
「ほら、怖くないよ。俺たちは敵じゃない。」
 なるべく優しく語りかけるが、そう簡単に威嚇は止まない。焦ってはいけない、こういうのは時間が必要だ。
「お前、お腹が大きいな。もしかして子供がいるのか?大丈夫だよ。俺たちが守ってやるから。」
 ウーッ威嚇は止まない。
「どこから来たんだ?北海道か……大陸からか?」
 ウーッ
「お前、もののけ姫に出てくるモロみたいだな。きれいな毛だ。」
 モロとはもののけ姫に出てくる山犬?の母犬の名前だ。ちなみに2匹の子供の名前は知らない。見つめあっているうちに、鶏肉の焼ける匂いが漂ってきた。白いオオカミは一瞬視線を外して匂いの元を確認する。



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