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第四章
第24話 終話
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西日本との戦いに向けて、各地の神を招集する。
「これ、セオさんの剣です。」
「我はそのようなモノは要らぬのだが。龍の息吹がある故な。」
「そんな事言わないでくださいよ。当日、持参してくれればそれだけでいいんですから。」
「仕方ないのう。ところでどうじゃ、お主のイメージにあったゴスロリというのを再現してみたんじゃがどうかのぅ?」
「それ、俺のイメージじゃなくリュウジのですよね。」
「うっ……」
一部の神はイメージを具現化することができる。玉藻前は平安時代のような姿だったし、ナミはサーファーのような外見になっている。ここの高床式建築もその能力によるものだ。残念ながら俺にその能力はない。セオさん(セオリツヒメ)はその能力が特出している。今回新たに加わったアラハバキさんは、俺の提供した剣を気に入ってくれて、それに合わせたフルアーマー姿がお気に入りだ。なんでも自分は鉄と大地の女神だからというのが理由みたいだ。ガチャガチャと歩く音が少し煩いが可愛いから許されているのだろう。
「そういえば学校はどうするっすか?」
「本だけこっちに移して、あとは解体するしかないだろうね。この時代に鉄筋コンクリートなんか出現したら、それこそオーパーツになっちゃうよ。」
オーパーツとは、その年代にあるはずのない人工物のことだ。ちなみに、鉄の加工物は4300程前のトルコの地層から発見されており、たとえフルアーマーがこの年代の遺跡から出土しても年代的にオーパーツとは言えない……と思う。
「ひらがなの書かれた木片とかは大丈夫なんすかね?」
「ひらがなの起源って、はっきりしてないから平気だよ。というか、漢字以前にひらがなが存在していて、漢字は音をあてはめただけって説もあるくらいだからね。」
ちなみに、神同士であれば記憶の共有も可能で、みんな俺たちが持ってきた本を読んでいる。困るのはフィクションと史実の区別がつかないことで、これからの和国は、ゴジラに備えた防衛が必要だとか真剣に話し合っていることだ。ライトノベルに出てくる魔法は能力の参考にできるみたいで、一方通行やレールガンとかを実現した神もいる。なんとガンダムを試作する者まで現れる始末だ。
「でもよ、決戦の場にガンダムとかが現れたら、相手もさすがにビビるんじゃないか。」
「いや、フルで動かしたら3分で力が尽きたみたいだよ。」
「まるでウルトラマンみたいっすね。」
こんな様子で決戦当日を迎えた。全員で奈良に向かう。体力温存のためにシェンロンが変化した龍に乗っていく。俺たちが近づくと玉藻前と妲己も奈良の上空に現れた。
「返事はどうっすかね。おとなしく帰ってくれませんか。」
「今更議論は無駄だろう。倭国神族の終焉じゃ、そろって天界に帰るがよい。」
そう言い放つと、玉藻前と妲己は巨大な火の玉を投げつけてきた。俺はその瞬間に自分の時間を最大まで加速した。ほぼ静止状態の火球を左手で吸収し、玉藻前の正面に移動し心臓を剣で貫いた。そのまま、妲己も葬り元の位置に戻る。時間にして0.2秒。仲間の神たちは打合せ通り自分の技を繰り出そうとしているところだった。俺の時間を通常に戻すと数秒後に神たちの技が発動した。龍の息吹や、スサノオの斬撃波・アマテラスの火球などだ。見物人がいたとしても、和国の神たちが繰り出した技で九尾の狐が滅んだと思うだろう。
「終わりっすね。」
「ああ、大陸から来た人間を船に載せて送り返せばね。」
俺に関する会話は禁忌事項だ。
古事記・日本書紀などの記録にツクヨミがほとんど登場しないのは、箝口令を敷いたからに他ならない。和国最恐の神たる所以はその能力にある。時とエネルギーを自在に操るツクヨミの能力は他国に知られるわけにいかない。過去・現在・未来においてもである。そのために俺は、この時代に成長の痕跡を残さず、アマテラス・スサノオと共に未来から転移してきたのだ。そう、ミサイルなど偶然重なったにすぎない。俺の中のツクヨミがタイムジャンプを行っただけのことだ。
「委員長、少しは手伝ってくださいよ。」
「いや、俺は歴史の表面に出るわけにはいかないんでね。悪いなアマテラス。」
そう、アマテラスはこれからの2000年間、日本を統治し王族を形成しなければならない。その子が神武となり少なくとも4000年後の未来まで血筋は続くのだ。
俺は、サクヤと共に西日本をめぐり神を復活させながら賽の神を据えるという裏からの手助けに準じるのだ。ハクとシェンロンも俺たちと一緒に旅をする。俺の腰にあった剣は三種の神器としてミコトにとられてしまった。
「最初はどちらへまいりましょうか?」
「ハママツからだね。太平洋沿いに南下して帰りは日本海沿いに北上してこよう。」
「わたくし、秋は京都で過ごしたいと思っているのですが。本で見た景色が忘れられませんの。」
「いいと思うよ。どうせなら京都に別荘を作ろうか。」
「本当ですか。」
「それくらいの贅沢は許されると思うよ。」
俺たちは急ぎ足で太平洋沿岸を南下し、各地の神を復活させていった。西日本で復活した神は古事記や日本書紀で記録されている神が多い。同時に巫女の勧誘?も行っている。紀伊半島をまわり、神戸から淡路島を経て四国に入る。こうして俺たちは九州に入った。九州で稲作が始まっているのを確認し、種籾を分けてもらう。ここでも対価はモリ頭だ。そして日本海側を北上すると出雲にいたる。当然だが大国主も復活した。因幡の白兎とは一体何のことだったのか問いただしたい……。実際にはこれから何かが起きるのだろうが。
まだまだ、これから色々とあるのだろうが、俺の物語は一旦終わりにしよう。この時代の先に俺たちのいた現代があるのかは分からない。もし、4000年前の鉄器が発見されればその可能性は高いと思う。いずれにしても、この国は和を重んじる貴重な民族なのだ。四回に分けてアフリカを出発した人類は、いつの時も先住民族を皆殺しにしている。これほどの期間争いの起こらなかった民族はほかに類をみないのだ。この貴重な血脈を俺は守っていきたい。
-完-
【あとがき】
ツクヨミの話を書きたい、という思いから始まった物語です。舞台をどの時代にしようかの検討から始まり、全体の枠組み作りなど結構楽に書けた話でした。
ラストの決戦ですが、例えば九尾に「和国にこのような神がいたなど記録にない……まさか、ツク……」というようなセリフを用意していたのですが、秘密兵器なのでそんなヒントも与えられず倒さなくてはということで、あっさりと終わってしまいました。拙作にもかかわらず応援をいただきましてありがとうございました。また次回作にご期待くださいましたら幸いです。
本当にありがとうございました。
「これ、セオさんの剣です。」
「我はそのようなモノは要らぬのだが。龍の息吹がある故な。」
「そんな事言わないでくださいよ。当日、持参してくれればそれだけでいいんですから。」
「仕方ないのう。ところでどうじゃ、お主のイメージにあったゴスロリというのを再現してみたんじゃがどうかのぅ?」
「それ、俺のイメージじゃなくリュウジのですよね。」
「うっ……」
一部の神はイメージを具現化することができる。玉藻前は平安時代のような姿だったし、ナミはサーファーのような外見になっている。ここの高床式建築もその能力によるものだ。残念ながら俺にその能力はない。セオさん(セオリツヒメ)はその能力が特出している。今回新たに加わったアラハバキさんは、俺の提供した剣を気に入ってくれて、それに合わせたフルアーマー姿がお気に入りだ。なんでも自分は鉄と大地の女神だからというのが理由みたいだ。ガチャガチャと歩く音が少し煩いが可愛いから許されているのだろう。
「そういえば学校はどうするっすか?」
「本だけこっちに移して、あとは解体するしかないだろうね。この時代に鉄筋コンクリートなんか出現したら、それこそオーパーツになっちゃうよ。」
オーパーツとは、その年代にあるはずのない人工物のことだ。ちなみに、鉄の加工物は4300程前のトルコの地層から発見されており、たとえフルアーマーがこの年代の遺跡から出土しても年代的にオーパーツとは言えない……と思う。
「ひらがなの書かれた木片とかは大丈夫なんすかね?」
「ひらがなの起源って、はっきりしてないから平気だよ。というか、漢字以前にひらがなが存在していて、漢字は音をあてはめただけって説もあるくらいだからね。」
ちなみに、神同士であれば記憶の共有も可能で、みんな俺たちが持ってきた本を読んでいる。困るのはフィクションと史実の区別がつかないことで、これからの和国は、ゴジラに備えた防衛が必要だとか真剣に話し合っていることだ。ライトノベルに出てくる魔法は能力の参考にできるみたいで、一方通行やレールガンとかを実現した神もいる。なんとガンダムを試作する者まで現れる始末だ。
「でもよ、決戦の場にガンダムとかが現れたら、相手もさすがにビビるんじゃないか。」
「いや、フルで動かしたら3分で力が尽きたみたいだよ。」
「まるでウルトラマンみたいっすね。」
こんな様子で決戦当日を迎えた。全員で奈良に向かう。体力温存のためにシェンロンが変化した龍に乗っていく。俺たちが近づくと玉藻前と妲己も奈良の上空に現れた。
「返事はどうっすかね。おとなしく帰ってくれませんか。」
「今更議論は無駄だろう。倭国神族の終焉じゃ、そろって天界に帰るがよい。」
そう言い放つと、玉藻前と妲己は巨大な火の玉を投げつけてきた。俺はその瞬間に自分の時間を最大まで加速した。ほぼ静止状態の火球を左手で吸収し、玉藻前の正面に移動し心臓を剣で貫いた。そのまま、妲己も葬り元の位置に戻る。時間にして0.2秒。仲間の神たちは打合せ通り自分の技を繰り出そうとしているところだった。俺の時間を通常に戻すと数秒後に神たちの技が発動した。龍の息吹や、スサノオの斬撃波・アマテラスの火球などだ。見物人がいたとしても、和国の神たちが繰り出した技で九尾の狐が滅んだと思うだろう。
「終わりっすね。」
「ああ、大陸から来た人間を船に載せて送り返せばね。」
俺に関する会話は禁忌事項だ。
古事記・日本書紀などの記録にツクヨミがほとんど登場しないのは、箝口令を敷いたからに他ならない。和国最恐の神たる所以はその能力にある。時とエネルギーを自在に操るツクヨミの能力は他国に知られるわけにいかない。過去・現在・未来においてもである。そのために俺は、この時代に成長の痕跡を残さず、アマテラス・スサノオと共に未来から転移してきたのだ。そう、ミサイルなど偶然重なったにすぎない。俺の中のツクヨミがタイムジャンプを行っただけのことだ。
「委員長、少しは手伝ってくださいよ。」
「いや、俺は歴史の表面に出るわけにはいかないんでね。悪いなアマテラス。」
そう、アマテラスはこれからの2000年間、日本を統治し王族を形成しなければならない。その子が神武となり少なくとも4000年後の未来まで血筋は続くのだ。
俺は、サクヤと共に西日本をめぐり神を復活させながら賽の神を据えるという裏からの手助けに準じるのだ。ハクとシェンロンも俺たちと一緒に旅をする。俺の腰にあった剣は三種の神器としてミコトにとられてしまった。
「最初はどちらへまいりましょうか?」
「ハママツからだね。太平洋沿いに南下して帰りは日本海沿いに北上してこよう。」
「わたくし、秋は京都で過ごしたいと思っているのですが。本で見た景色が忘れられませんの。」
「いいと思うよ。どうせなら京都に別荘を作ろうか。」
「本当ですか。」
「それくらいの贅沢は許されると思うよ。」
俺たちは急ぎ足で太平洋沿岸を南下し、各地の神を復活させていった。西日本で復活した神は古事記や日本書紀で記録されている神が多い。同時に巫女の勧誘?も行っている。紀伊半島をまわり、神戸から淡路島を経て四国に入る。こうして俺たちは九州に入った。九州で稲作が始まっているのを確認し、種籾を分けてもらう。ここでも対価はモリ頭だ。そして日本海側を北上すると出雲にいたる。当然だが大国主も復活した。因幡の白兎とは一体何のことだったのか問いただしたい……。実際にはこれから何かが起きるのだろうが。
まだまだ、これから色々とあるのだろうが、俺の物語は一旦終わりにしよう。この時代の先に俺たちのいた現代があるのかは分からない。もし、4000年前の鉄器が発見されればその可能性は高いと思う。いずれにしても、この国は和を重んじる貴重な民族なのだ。四回に分けてアフリカを出発した人類は、いつの時も先住民族を皆殺しにしている。これほどの期間争いの起こらなかった民族はほかに類をみないのだ。この貴重な血脈を俺は守っていきたい。
-完-
【あとがき】
ツクヨミの話を書きたい、という思いから始まった物語です。舞台をどの時代にしようかの検討から始まり、全体の枠組み作りなど結構楽に書けた話でした。
ラストの決戦ですが、例えば九尾に「和国にこのような神がいたなど記録にない……まさか、ツク……」というようなセリフを用意していたのですが、秘密兵器なのでそんなヒントも与えられず倒さなくてはということで、あっさりと終わってしまいました。拙作にもかかわらず応援をいただきましてありがとうございました。また次回作にご期待くださいましたら幸いです。
本当にありがとうございました。
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