魔法指導師 -異世界職業斡旋所-

モモん

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第一章 勇者ロンド

第3話 魔力切れ

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 アリシアからの魔力提供は6時間おきに、1日4回行われた。
 その間も、食事はきちんと摂り、魔力を巡らせながらジョギングしたり、プールで泳いだりと、体力の増強も並行して行われる。

「うん、魔力の濃さもボチボチだし、身体も魔力に慣れてきたな。」

「はい。」

「じゃあ、次のステップだ。魔力を流す速度を倍にして、更に魔力を濃くしていく。」

「……うわぁ!」

「慌てるな、落ち着いてやれば出来るハズだ。」

「め、目が回って……」

 ロンドはフラフラと揺れ、床に倒れた。
 まあ、実際には倒れる寸前に紫色の髪をしたメイドのミサトが駆け寄って抱きかかえたのだが……。

「まあ、初回は仕方ないか、ベッドで寝かせてくれ。」

「承知いたしました。」

 約1時間後、ロンドはベッドの上で目を覚ました。

「ご気分は如何ですか?」

「ミ、ミサトさん、ついていてくれたんですか、ありがとうございます。大丈夫です。」

「ゲボされて、窒息死されても困りますからね。」

「あっ……」

「そうそう、汗が酷かったので着替えさせていただきました。」

「えっ……パ、パンツも……」

「大丈夫ですよ。成長すれば剝けますよ……多分。」

「そ、それは……」

「火星人の可能性もありますし。」

「……そういえば、俺の着替えとか、どうやって手に入れているんですか?」

「私が毎晩、羽を抜いて織っています。」

「あんたは鶴ですか!」

「時々、お尻から糸が出るので、それで編んだりする事もあります。」

「クモですか……」

「あとは……」

「いいですよボケは!」

「ちっ、これだから東京モンは……」

「関西人ですか!」

「実は、物々交換をするバーターという魔法がございます。」

「物々交換?」

「こう、右手にボールペンを持って……」

「ボールペンですか……」

「左手にリンゴを持ちます。」

「ペンとリンゴ?」

「それでこう!」

「ヤメロ!……ナニやってるんですか!」

「オチまでやらせてくれないと……」

「ボケは結構です。」

「思いやりがなく、クソ真面目……っと。」

「ナニ、メモしてるんですか!」

「この島には娯楽がありませんので、少しでも気晴らしになればと……仕方ありません……」

「脱がないでください!」

「……火星ボーヤは童貞っと。」

「メモするな!」

「チェリーなんですよね?」

「……」

「バーターという魔法は、例えばこのペンダント。ロンド様の世界でいえば10万円程の価値があります。」

「唐突に本線に戻りますね。」

「本番アリのお店なら2回分。路上の女性なら3回いけるかもしれません。」

「何の情報だよ!」

「バーターと唱えて、そういう女性を強くイメージすると……」

「ゴクリ……」

「行為ですから、そういう交換はできません。あっ、少し期待しちゃいましたね。」

「するか!」

「隠しても無駄です。私にはロンド様の心拍数や血圧の変化などが……」

「そんな事まで……」

「分かるハズないのですが。」

「おい!」

「実際にバーターを発動させれば、同等の価値のある物品と交換する事ができます。」

「魔法は本当なんだな……」

「ですから、JKが使用した下着等も、割高ですが入手可能です。」

「そんな趣味はねえよ!」

「半年の間に習得できればいいですね。」

「ああ、頑張る。」

「ヨコシマな想いというのは、時に原動力になりますからね。」

「JKのパンツなんて欲しくないから!」

「どうしても我慢できない時は、私の下着を……」

「いらねえよ!」

「まあ、夢精というのは気持ちが良いと聞きますし、そちらを望まれるのなら汚れたパンツを洗うのも一興。」

「頼む……返事に困るような投げかけは……」

「まあ、どうしても我慢出来なくなったら、胸くらいは触らせてやってもいいが……」

「ミ、ミサトさん……健全な青少年に……」

「健全な青少年は、下半身が聖者だとでもいうつもりですか?」

「いや、……」

「という訳で、夕食の時間までは高速で魔力を循環させてください。」

「はいはい。いい気分転換ができましたよ!」

「では、ご褒美にこちらを……」

 ミサトはメイド服の裾をゆっくりと持ち上げていく。

「な……なにを……」

 ロンドの視線はミサトの足から離せないようだ。

「あっ、そういえば下はドロワーズでしたわ。」

「くっ、青少年を揶揄うのが、そんなに楽しいですか!」

「そうそう、この詠唱を覚えてください。」

「魔法の詠唱ですか!」

「身体の各機能を強化する魔法です。暗唱できるように繰り返し唱えて覚えてくださいね。勿論、高速で魔力を循環させながらです。」

「全能なる孔雀院アリシア様にお願い申し上げる……って、これが魔法の詠唱なんですか?」

「正直申し上げると、固有名称はナンでも良いのです。必要なのは対象と効果が明確になっている事と、自分がそれを具体的にイメージ出来ること。それがポイントになります。」

 魔力を循環させながら、紙に書かれた文章を読み上げると、確かに身体能力が向上するのが感じられた。
 嬉しくなって何度も続けているうちに、ロンドの視界は真っ暗になり、穴の中に落ちていく感覚に包まれたままロンドは意識を失った。


 2時間後、食事が出来たというミサトの言葉で、ロンドは意識を取り戻した。

「えっ、まだ頭がクラクラするんですけど……」

「魔力切れですね。身体強化の詠唱は、何回くらい唱えました?」

 そう言いながらミサトはロンドの身体に魔力を流していく。

「あっ、ありがとうございます。詠唱は5回くらいだったと思います。」

「魔力切れを起こすまで消費すると、魔力の総量が少し増えるんですよ。」

「魔力がなくなると、あんな風に意識を失っちゃうんですね。」

「ええ。魔力がなくなる寸前の状態を覚えて、日中はそのギリギリまで魔力を使って補充してもらうようにしてください。夜、寝る直前は魔力を空にして意識を失う。そうすれば、起きたときに半分くらい魔力が回復しているハズです。」

「ううっ、あの魔力がなくなる直前の、暗い穴に落ちていくみたいな感じイヤなんですけど……」

「でも、それが魔力量を増やす一番効果的な方法なんですよ。それに、意識を失っちゃえば、夢精もしなくて済むじゃないですか。」

「……やけに、夢精にこだわりますね。」

「だって、自分じゃ経験できないですからね。」

「……それは、そうでしょうけど……」

 こうしてロンドは毎日魔力を高速で循環させながら、身体強化の魔法を使い続けていった。
 身体強化した身体で走り回り、プールで泳ぐと、その効果も日に日に高まっていくのが実感できる。
 そうして、1カ月過ぎた頃には、イメージだけで身体強化を発動できる程度には成長していた。

「使える魔法は身体強化だけですが、完全に無詠唱で発動できますし、30回くらいは連続でかけられる程度の魔力量は保有しています。」

「凄いものですな。1カ月でこれほどまでに育つとは……」

「次のステップでは、4元素の魔法を教えます。来月来る頃には、4元素を無詠唱で発動できる程度にはなるでしょう。」

「期待していますぞ。」

 1カ月目のお披露目には、国王も同席しており、その成果に驚いている。
 
「この1カ月、毎晩魔力切れを起こして倒れるくらいまで追い込んでいますからね。まあ、この指導に耐えられるだけの素質があったんでしょう。優秀な魔導士になりますよ、彼は。」

「やっぱり、素質によって差が出るのですね。」

「まあ、凡人であっても国でトップクラスの魔法師程度には育てられますけどね。」


【あとがき】
 個別指導の1か月目です。
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