魔法指導師 -異世界職業斡旋所-

モモん

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第三章 小さな勇者たち

第26話 師匠との再会

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「ふむ、確かに両耳が聞こえていないようだな。それで?」

「師匠なら、この子とコミュニケーションをとる方法が分かるんじゃないかと思って来ました。」

「ふん。私が何でもできると思ったら大間違いだ。」

「ダメですか……」

「だが、試してみたい事ならあるぞ。」

「えっ!」

「まず、レイたちにやったみたいに、手をつないで二人の間に魔力を循環させてみろ。」

「こ、こんですか……」

「そうしたら、お前から送り出す魔力に、相手を大切にしているというイメージを込めて見ろ。」

「エマを大切に思うイメージ……ですか……」

「一度だけじゃなく、それをずっと続けて見ろ。」

 ロンドがしばらくそれを続けていると、エマの目から涙が零れてきた。

「ふん、気持ちは伝わるみたいだな。」

「どうしてこんな事が……」

「私がミサトたちとそれをやった時、彼女たちの感情が流れ込んできたような気がしたんだが、やっぱりあれは間違いじゃなかったって事だな。」

「じゃあ、これを続ければいいんですか?」

「どこまで通じ合う事ができるのか、私には分からないが、焦らないでゆっくり気持ちを伝えて見ろ。急ぐなよ。押し付ける気持ちもダメだ。お前は自分にとって大切な存在なんだと理解してもらうんだぞ。」

「はい!ありがとうございます。」

「ところで、そのエルフの子供は何だ?」

「こう見えて、ファラは50才なんですよ。」

「ふん、やっぱり子供ではないか。」

「えっと、師匠は23才とか……」

「うるさい。ファラとやら、私ならそこのボンクラよりも高度な魔法を教えてやれるぞ。」

「ボクはロンドがいい。」

「ふん、そうか。まあ、バカ弟子に飽きたらいつでもここに来るが良い。」

「来る必要はないから大丈夫。」

 ロンドたちは家に戻った。
 しばらく、エマは本家の方でロンドたちが面倒を見ることにする。
 子供たちの暮らす建屋にはハウスという名称がつけられ、既にエルザを中心とした態勢が出来ている。
 ハウスには、帝国での募集により、二人の50代女性が応募してくれたため、すでに仕事を始めてもらっている。
 そして、教師希望の男性も応募があったとの事で、夕方から面接の予定になっている。

 彼は流行り病で妻と子供を亡くした50代の男性で、目を悪くしていたのだが、メガネのおかげで周囲が見えるようになり仕事を始めようと思っていたと情報が入っている。
 ロンドは面接の際、とある希望を伝えた。

「できれば、計算もこのそろばんを使って指導をお願いしたいのですが、いかがでしょうか。」

「ロンドさんが導入された電卓ではいけませんか?」

「電卓だと、答えは簡単にだせますが、計算する能力は育たないんですよ。」

「なるほど、これを使うと、計算するちからがつくんですね。」

「ええ。この上の玉は5になります。」

「下の玉をあわせると9で、もう一つ加わると10になるから左側の玉が一つあがると。」

「上の玉は、初期状態はこうやって上にあげておきます。」

「すると、中央に寄せたものが現在の値という事ですか。ふむ、これは持ち帰って練習してもよろしいですかな。」

「どうぞ。これに慣れてくると、簡単な計算なら頭の中でそろばんをイメージして、ぱっと答えを出せるようになります。」

「もし、こんなものを使いこなす子供が現れたら、商人に重宝されるでしょうね。」

「文字の読み書きができて、計算能力も高ければ孤児だって城で採用されると思うんですよね。」

「孤児でも、能力があれば城で採用される。面白いですね。私も微力ながら、その夢のお手伝いをさせてください!」

「お願いします。」

 こうして、教師役のジェームズ・ロビンス男爵が採用となった。

 働き口については、城の店を拡張すればいくらでも確保できる。
 そこは全く心配いらなかった。
 
 こうして、ハウスでの教育は順調に進み、3か月過ぎた頃には、ゆっくりだが読み書きが出来るようになってくる。
 計算だって、2桁ならば暗算で出せるようになってくる。

 畑も広くして、サツマイモを中心に栽培が進んでいく。

 魔力も順調に増え、身体強化はいつでも発動できるようになっている。

 そして、エマとの魔力循環によるコミュニケーションも進んでいた。
 今は、身体の部位を覚えさせている。

『ここがカオだ』

『かお』

『そしてクチ』

『クチ』

『真ん中がハナ』

『ハナ』

 こんな感じで、双方向に意思の疎通も可能になっている。
 ファラも4元素の魔法をマスターし、治療系の魔法に進んでいた。

「見ててね。」

 ファラはテーブルに麦の粒を一つ置いて集中する。
 目の前で麦は発芽し、芽と根が3cmくらいまで成長する。

「すごいな。」

「やっぱり、エルフの神力というのは、魔力じゃないかと思うの。」

「ほう、そうだとすると、エルフはその気になれば魔法が使えるんだな。」

「どうだろう。エルフの神力は、森に使っているところしか見たことがないのよね。」

「身体強化とかも使ってないのか?」

「元々、人間よりも身体能力が高いから、必要なかったんじゃないかと思うけどね。」

「その辺は、他のエルフに会ってみないと分からないって事か。」

「そう。できれば、浄化や復元は覚えて貰いたいですけどね。」

「あと、障壁もだな。」

「エルフは争いを好まないんだけど……身を守る能力は持ってほしいわ。」

「じゃあ、エルフの森探しもやっていかなくちゃだね。」

「それは、もう少し後でいいわ。バーターも覚えたいし、物を引き寄せるアポートと、物を任意の場所に送るアスポートも使いこなさないとね。」

「ああ、呪文はこれだ。並行して覚えればいいよ。」

「ありがとう。ところで、治療系の魔法ってどうやって練習したの?」

「えっ?」

「だって、怪我しないと使えないでしょ。」

「そ、それは……」

 ロンドは思い出した。
 祖母が糖尿病で、毎日指に針を刺して血を出して測定していた。
 あれなら……と、バーターで医療用穿刺器と針を取り寄せた。

「こ、これで指に針を刺して出血させて治療してたんだよ。」

「自分で針を刺すなんて怖そうね……」

「だ、だから、師匠のところのアスカさんとかにやってもらってたんだ……」

「レイさんは?」

「レイはそういうの苦手だからさ……」

「そ、そうよ、アハハッ……」

「じゃあ、やって見せて。」

「えっ、俺が?」

「だって、自分じゃ怖いじゃないの。」

「そ、そうだね……」

 ロンドは説明書を読んで使い方を覚え、針をセットしてファラの手をとった。

「まさか、乙女の肌を傷つけるつもり?」

「えっ?……だって……」

「治療は、人の身体でいいんでしょ?」

「そ、それはそうだけど……」

「だから、ロンドが自分で自分に打てばいいでしょ。」

「いやいや、変だろ。何で俺がファラの犠牲になるんだよ。」

「だって、私たち家族じゃない。ねえ、お姉さま。」

「そ、そうよね。家族だもの、……誰が適任かと聞かれたら……当主……」

「レイ!裏切るつもりか!」

「あれ、こんな時間。お夕飯の準備しなくちゃ。」

 レイはキッチンに走っていった。

「しょうがないなぁ。私がやってあげる。」

 パチッ!
「いてっ!」 『全能なる……復元!』

 こうして、夜遅くまでロンドの悲鳴が止む事はなかった。
 ファラは、4日で復元魔法を覚えたのだった。


【あとがき】
 聴覚障害の部分を書いているときに聞いていた曲です。
This Is Me:https://www.youtube.com/watch?v=ydoAIdx4c1Y

 色々な方やグループが動画をアップされています。
 元々はグレイテストショーマンという映画の劇中歌で、身体的に個性を持った人々が、それを人前で披露するのですが、”これが私”と胸を張って主張する歌ですね。
 映画のストーリーはともかく、歌の部分は圧巻です。

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