魔法指導師 -異世界職業斡旋所-

モモん

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第三章 小さな勇者たち

第27話 アーク

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「やっと復元を覚えられたよ。」

「……おかげで、俺の心はボロボロだよ……」

「そこは姉さまに癒してもらうんだね。」

「次は引き寄せと送りだね。これを使いこなせれば、一人でダンジョンに潜れるよね。」

「それはダメだ。ソロって言うのは何が起きるか分からない。最低でもペアを見つけるんだ。」

「えーっ、今のボクに釣り合うとしたら、Bランクくらいだよ。」

「だったら、ハウスのアークでも連れて行ったらどうだ?」

「ダメだよ。やっと身体強化が使えるようになったみたいだけど、魔力量が少ないから5回くらいで魔力切れを起こしちゃうんだ。」

「そんなレベルなのか!剣の訓練は真面目にやっているようだが……」

「そういえば、畑仕事の時は開墾しかやらないですね。」

「そう。それで周りの子からも苦情が出ているんだ。字や計算の方もあまり覚えたないみたいだよ。」

「ったく、そこまで冒険者に拘ってるのかよ……」

「どうしますか?」

「本人次第だな。周りの子の士気に影響するなら、帝国に帰してやったほうがいいのかもしれない。」

「でも、あの子の性格だと……」

「ムリな依頼を受けて、命を落とすだろうな。まあ、それも仕方ないだろう。」

 ロンドはアークを家に呼んだ。

「農業は嫌いなのか?」

「俺は冒険者だ。農家じゃない。」

「文字の勉強や計算も中途半端なようだし、魔力操作もいい加減にやってるだろ。」

「だから、俺は冒険者なんだ!文字も計算も必要ねえ!魔法なんて、剣士の俺には要らねえんだよ!」

「やる気がないのなら、国に帰ってもらうぞ。」

「……」

「ここで暮らすのならば、言われた事を実行しろ。」

「だったら、もっと剣を教えろよ。こんな生活じゃあ強くなれねえんだよ!」

「……お前は、どうやったら強くなれるのか考えた事があるのか?」

「なにぃ!」

「何を鍛えたら強くなれる?お前に不足してるのは何だ?朝と夜に、いくらでも時間は作れるだろ。」

「……」

「お前の言う強いって基準は何だ。筋肉モリモリの体力バカなのか?」

「それは……」

「Aランク冒険者っていうのはな、単純な力の強さじゃなれないんだよ。俊敏性や状況判断力。適切な依頼を選ぶ洞察力。まずは、自分の目標をしっかり見定めて見ろ。そうすれば、何が必要なのか分かるだろう。」

「こんな生活じゃ、強くなれねえんだよ……」

「それは、お前が真剣にやってないからだ。いいか、力だけ強い冒険者なんて、強くなってもCランクどまりだ。」

「えっ?」

「まあ、ごく稀に力だけでBランクにあがる奴もいるが、そんなのは国全体で見ても1人か2人しかいない。」

「じゃあ……」

「上位の冒険者ってのは、頭のいいやつしかなれないんだ。ちゃんと自分の力を分かっているから、絶対にムリをしない。依頼書の内容だってきちんと理解して受注する。」

「えっ……」

「例えば、やたら報酬の高い依頼っていうのは、必ず理由がある。それを理解しない奴は、報酬の高さだけで依頼を受けちまうから失敗するんだ。そして、そういう奴らは死んでしまう。」

「あっ……」

「依頼する側は、少しでも安く、早く解決してほしいから、ヤバい情報は隠してランクを下げた内容で少し報酬を上乗せする。冒険者が死んでも、依頼者には関係ない。パーティーが全滅しても魔物の数を減らしてくれれば次のパーティーが殲滅してくれる。」

「そんな……じゃあ、あの時も……」

「自分たちならギリ行けるだろう。そう考える奴らは、死ぬか怪我をして引退していく。本当に強い奴は、余裕で達成できる依頼しか受けないんだよ。」

「お、お前はどうなんだよ……」

「レイはBランクだが、実質俺と同じくらい強いぞ。ファラなんてEランクだが、それは実績がないだけだ。全属性の魔法を使えるし、治療系の魔法を使えるようになったから、ドラゴン程度ならソロで行けるんじゃないかな。」

「ドラゴン……」

「だ、だけど魔法師は詠唱に時間が……」

「お前だって、無詠唱で身体強化を発動できるんだろ。」

「あっ……」

「他の子供たちは、もう水魔法を覚え始めていて、マチルダなんて氷魔法を練習しているんだ。すぐにお前よりも強くなるぞ。」

「そんなバカな……」

「俺の言った事を実践しているから、魔力量も随分増えている。氷の矢なら100本連続くらいで撃てるんじゃないか。無詠唱で瞬時に飛んでくる矢を、お前は何本まで受けられるんだ?」

「だ、だけど俺は剣士だ……」

「俺だって剣の訓練からスタートしたよ。まあ、今は剣と魔法どっちも使うけどな。」

「剣と魔法が使える上に、治療魔法が使えるなんて反則だろ!」

「そんな俺でさえ、半年は師匠について魔法だけを学んだんだぞ。」

「半年だとぉ……」

「もちろん、半年間生活を保証してくれなかったらそんな期間学ぶ事に集中できなかったさ。半年分の授業料は金貨50枚だった。」

「金貨50枚だとぉ!」

「高額だよな。だが、半年後、その授業を終える時には、金貨50枚なんてはした金になってた。まあ、それだけ必至になって学んだ成果ではあるけどな。」

「何で金貨50枚がはした金になるんだよ!」

「簡単だよ。金の鉱脈を探って掘り出せばいいし、金属を加工して武器屋に売ってもいい。冒険者で稼ぐなら、ドラゴンを10匹くらい倒せばそれ位になるだろう。」

「ど、ドラゴン10匹だと……」

「ドラゴンでなくても、高値で売れる魔物はいくらでもいるし、宝石を捜して加工するのもありだ。魔法は、魔物を討伐するための武器ではなく、生活を豊かにするツールなんだよ。」

「生活の……道具……」

「魔道コンロや魔導水道、は勿論だけど、土魔法を使いこなせればいくらでも稼げるようになる。だけど、魔法を使いこなすのに必要なのは、魔力量を増やして自在に操れるようになる事だ。でも、お前はそれを否定してる。」

「だ、だって、そんなの知らないから……」

「儲かるって知ってたら、もっと本気でやってたとでもいうのかよ。」

「そりゃあ、そうだろ!」

「つまり、お前の強さへの拘りなんて、その程度のものって事だ。」

「……」

「言い換えれば、お前は自分の事しか考えていない。みんなのために協力しようなんて気持ちは、これっぽっちもないんだろ。」

「……そんな……」

「俺たちは、そんな自分勝手なヤツの面倒をみるつもりはない。」

「えっ……」

「あの教会は不正をしていたから、孤児院は閉鎖された。自分の好きなように生きればいい。ほら。」

 ロンドはアークに金貨1枚と布袋を渡した。

「金貨1枚あれば、1カ月は食いつないでいけるだろう。その袋に着替えも入れてある。まあ、好きに暮らすんだな。」

「ま、待ってくれ!」

「聞いてるぞ。お前、面倒を見てくれたオバちゃんや、食事の世話をしてくれたエルザさんに感謝した事ないんだってな。」

「だ、だって俺は……」

「強くなりたいんだろ。身体強化を無詠唱で使えれば、Cランクくらいにはなれるだろ。頑張るんだな。」

 ロンドはアークをバルチの冒険者ギルド前に転移させた。

「それでよかったの?」

「今からでも魔力を増やしていけば、冒険者として暮らしていく事はできるだろう。俺はあいつの家族じゃない。これ以上面倒はみれないよ。さあ、メシにしよう。」

 突然ギルド前に送られたアークは、一瞬状況が理解出来なかったが、島へ移動した時に転移は経験している。
 そして、ロンドに対する怒りで頭がいっぱいになった。
 自分が見放された事が、どうしても納得できない。
 最初から魔法の事を教えてくれれば、本気で訓練したのに、それが出来なかったのはロンドが教えてくれなかったからだ。
 だから、責任はロンドにある。
 これからどうするかと考えるよりも、頭の中はロンドへの憎しみでいっぱいになり、他の事は考えられなかった。


【あとがき】
 アークを留めるか、放り出すか。
 色々と悩みましたが、放出する事になりました。
 やっぱり、自分自身がこういう人間を嫌いなんでしょうね。

 オズの魔法使いという映画で使われた曲です。
Over the Rainbow:https://www.youtube.com/watch?v=H53QBgHFJUg

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