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第二章
カエデ
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浅見からのメールで、俺は会社に呼び出された。
「おお、末永君。悪いな呼び出したりして」
「いえ、何かありましたか」
「例のメーカーから、すこしばかり嫌がらせが入ってね。
ちょっと、応接で話そうか、浅見も来てくれ」
「一点目なんだが、あの写真の権利を全面的に譲れと言ってきた」
「僕は素人ですし、べつに構いませんよ」
「あれをお抱えのカメラマンの作品にしたうえで、そいつ自身の手でもっといい写真を撮るから彼女たちを渡米させろと言ってるんだ」
「パスポートを取れるのは二人だけですね」
「カエデとルシアね」
「そうだ。しかもカエデは妊娠しているから、安定期に入らないと飛行機は無理だな」
「はあ、どうするかな……」
「やっぱり、予定通り今回限りの契約にして、こっちはカエデの写真集を出しちゃいましょうよ。
シリーズ・マーメイド第一弾として。
毎週発売の写真集として、価格設定を少し下げれば間違いなく売れますよ。
その実績をもって、ライバル社に売り込む」
「だから、カエデは妊婦だって……」
「まだ大丈夫。逆に言えば最後のチャンスかもね」
「俺はプロじゃねえよ」
「間違いなく、プロ級よ。
だから向こうもプロの名前で出そうとしてるんだもの」
「それに、プロの使う機材じゃねえよ」
「D200でしょ」
「知ってんのか……」
「撮影データに記録されてるからね」
「後継機種も持ってるけど、あれは違うんだよ。
あのシャッター音は、その気にさせてくれるんだ」
「よし、その気になった!」
「なってねえよ」
「カエデには、和装で剣を持たせたいと思わない?
私的には緋袴かな。道場で老人の師と対峙するカエデ。
もちろん、真剣で殺気を出してもらうの」
「やめておけ、本気ってのは遊びじゃないんだ。
あの二人に真剣なんか持たせてみろ、シャッターなんか切れるもんかよ」
「ともかく、一週間で仕上げてみて。
実物を見て判断するわ。
契約先に喧嘩を売る以上、室長の了解はもちろん取締役会の承認が必要だろうから」
「そういう腹のくくり方好きですよ。精一杯やってみます。
浅見、衣装の手配は任せた。できれば、ライバル会社の製品でまとめろ」
「了解よ。今日中になんとかする」
家に帰ってレンズと周辺機材をチェックする。
前回はサンプルってことでズームを使ったが、ポートレートなら単焦点だ。
標準レンズの50mm f/1.8、望遠の85mm f/1.8
ホントは鳥メインだったので広角なんか持ってない。
レフ版に三脚にケーブルレリーズ。
「カエデ、道着を着てくれ。
道場で少し写真を撮りたい」
「はい」
「木刀を下げて自然体で」 パシャパシャパシャ
「中段に構えて」 パシャパシャパシャ
「上段」 パシャパシャパシャ
「先生、カエデとギリギリの間合いで対峙してください」 パシャパシャパシャ
「2,3合、打ち合ってください」 カン!カン!カン! パシャパシャパシャ
「剣を合わせてください」 パシャパシャパシャ
「カエデ……、日本刀を持ってくれるか」
「はい」
「中段、無の心境で」 パシャパシャパシャパシャパシャパシャ
「俺に殺意を向けてくれ」 パシャパシャパシャパシャパシャパシャ
「カエデ、落ちてくる葉を切れるか」
「多分」
イヤー! パシャパシャパシャ
「ふう、先生もありがとうございました」
「ああ、久しぶりにカエデの相手をしたが、前よりも鋭くなっておる。
こりゃあ、わしの隠居も近いかな」
「門下生のみなさんも協力ありがとうございました」
「いや、俺ら飯喰ってただけだし……」
「シュウ、ステーキ追加!」
「おかわり!」
「なんだよ、すき焼きって……、うちの母ちゃん、こんなの作ってくれなかったぞ……」
「ああ、ザムザの卵も愛称バッチリだ」
「先生、俺の打った日本刀です。
よろしければ、使ってみてください」
「ああ、だがこいつは人を切るもんだな……
美しくもあり恐ろしくもある」
「俺も、これ以上日本刀を打ちたくはありません。
それが、最初で最後の一振りです」
「おお、末永君。悪いな呼び出したりして」
「いえ、何かありましたか」
「例のメーカーから、すこしばかり嫌がらせが入ってね。
ちょっと、応接で話そうか、浅見も来てくれ」
「一点目なんだが、あの写真の権利を全面的に譲れと言ってきた」
「僕は素人ですし、べつに構いませんよ」
「あれをお抱えのカメラマンの作品にしたうえで、そいつ自身の手でもっといい写真を撮るから彼女たちを渡米させろと言ってるんだ」
「パスポートを取れるのは二人だけですね」
「カエデとルシアね」
「そうだ。しかもカエデは妊娠しているから、安定期に入らないと飛行機は無理だな」
「はあ、どうするかな……」
「やっぱり、予定通り今回限りの契約にして、こっちはカエデの写真集を出しちゃいましょうよ。
シリーズ・マーメイド第一弾として。
毎週発売の写真集として、価格設定を少し下げれば間違いなく売れますよ。
その実績をもって、ライバル社に売り込む」
「だから、カエデは妊婦だって……」
「まだ大丈夫。逆に言えば最後のチャンスかもね」
「俺はプロじゃねえよ」
「間違いなく、プロ級よ。
だから向こうもプロの名前で出そうとしてるんだもの」
「それに、プロの使う機材じゃねえよ」
「D200でしょ」
「知ってんのか……」
「撮影データに記録されてるからね」
「後継機種も持ってるけど、あれは違うんだよ。
あのシャッター音は、その気にさせてくれるんだ」
「よし、その気になった!」
「なってねえよ」
「カエデには、和装で剣を持たせたいと思わない?
私的には緋袴かな。道場で老人の師と対峙するカエデ。
もちろん、真剣で殺気を出してもらうの」
「やめておけ、本気ってのは遊びじゃないんだ。
あの二人に真剣なんか持たせてみろ、シャッターなんか切れるもんかよ」
「ともかく、一週間で仕上げてみて。
実物を見て判断するわ。
契約先に喧嘩を売る以上、室長の了解はもちろん取締役会の承認が必要だろうから」
「そういう腹のくくり方好きですよ。精一杯やってみます。
浅見、衣装の手配は任せた。できれば、ライバル会社の製品でまとめろ」
「了解よ。今日中になんとかする」
家に帰ってレンズと周辺機材をチェックする。
前回はサンプルってことでズームを使ったが、ポートレートなら単焦点だ。
標準レンズの50mm f/1.8、望遠の85mm f/1.8
ホントは鳥メインだったので広角なんか持ってない。
レフ版に三脚にケーブルレリーズ。
「カエデ、道着を着てくれ。
道場で少し写真を撮りたい」
「はい」
「木刀を下げて自然体で」 パシャパシャパシャ
「中段に構えて」 パシャパシャパシャ
「上段」 パシャパシャパシャ
「先生、カエデとギリギリの間合いで対峙してください」 パシャパシャパシャ
「2,3合、打ち合ってください」 カン!カン!カン! パシャパシャパシャ
「剣を合わせてください」 パシャパシャパシャ
「カエデ……、日本刀を持ってくれるか」
「はい」
「中段、無の心境で」 パシャパシャパシャパシャパシャパシャ
「俺に殺意を向けてくれ」 パシャパシャパシャパシャパシャパシャ
「カエデ、落ちてくる葉を切れるか」
「多分」
イヤー! パシャパシャパシャ
「ふう、先生もありがとうございました」
「ああ、久しぶりにカエデの相手をしたが、前よりも鋭くなっておる。
こりゃあ、わしの隠居も近いかな」
「門下生のみなさんも協力ありがとうございました」
「いや、俺ら飯喰ってただけだし……」
「シュウ、ステーキ追加!」
「おかわり!」
「なんだよ、すき焼きって……、うちの母ちゃん、こんなの作ってくれなかったぞ……」
「ああ、ザムザの卵も愛称バッチリだ」
「先生、俺の打った日本刀です。
よろしければ、使ってみてください」
「ああ、だがこいつは人を切るもんだな……
美しくもあり恐ろしくもある」
「俺も、これ以上日本刀を打ちたくはありません。
それが、最初で最後の一振りです」
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