【短編集】スライム・スライム

モモん

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ショゴス

第2話 魔物研究所のクラフマン伯爵

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 オークは途中で解体して、肉だけを保管し、骨や内臓・頭部等はミュウに吸収させる。
 こうする事でミュウは生体バイオマシンを生成してストックしておけるのだ。
 
 もう一つの依頼はガーゴイルだ。
 この依頼はガーゴイルを素材として求めており、何処という指定はない。
 多くの冒険者は、ガーゴイルの巣を見つけて山登りをするのだが、俺は飛んでいるガーゴイルを捕まえる事ができた。
 俺は触手で飛行中のガーゴイルを捕らえ、麻痺毒を撃ち込んだ。

 京浜都市に戻った俺は、依頼書に記載されていた貴族街の魔物研究所を訪れた。
 魔物研究所はジョン・クラフマン伯爵の敷地内に看板が出されており、俺はレッドキャット姿のミュウを連れて、ナノマシンで作った荷車にガーゴイル3匹を乗せてドアを開いた。

「いらっしゃいませ。」

 鈴のような声でメイド服姿のお姉さんが迎えてくれる。
 部屋の中は、ギルドのカウンターの向こう側のように、4台の机が並びそこで2人のメイドさんと若い白衣姿の男性。一番奥に50代くらいのメガネをした男性が座っていた。

「うん?……おー!ガーゴイルではないか!しかも縛ってあるという事は生体じゃないか!」

「あっ、はい。ギルドの依頼を受けたのでお持ちしました。」

「くぅ、生きたままのガーゴイルが3体とは!素晴らしい!」

 興奮した様子の男性が立ち上がって迎えてくれたが、他の3人はテンションが低い様子だ。
 むしろ、余計な事を……といった感じで冷たい視線を向けてくる。

「あらっ、スカーレットじゃないですか。ああ、なんていう奇麗な毛並み、ホワイトの細い首輪も素敵ですわ。」

 迎えてくれたメイドさんは、ガーゴイルには目もくれずミュウを抱き上げた。

「あの、依頼書に完了確認をお願いします。」

「勿論だよ!ライド君、このまま処置台へ運んで血液採取してくれたまえ。」

 白衣の男性が面倒くさそうに荷車からガーゴイル3匹を降ろして奥の部屋に抱えていった。
 身長は180cmくらいありそうだ。意外と体格もいい。

 依頼書にサインをもらって帰ろうとすると、メガネの男性に話しかけられた。

「私はジョン・クラフマン。この魔物研究所の責任者だよ。」

「あっ、始めまして。ケンギといいます。平民なので家名はないです。」

 驚いた。
 握手した相手は伯爵本人だった。
 貴族なんて相対するのは初めてだったし、会話も初めてだ。

「ケンギか、強そうな名前だね。」

「俺、孤児なんですけど、自分でケンギって名乗ってたらしいんですよ。だから、本当はケンジじゃないのかとかからかわれますけどね。」

「ほう。家族はいないと……」

 伯爵がニヤリと笑い。何故か背筋がゾクリとした。

「昨夜出したこの依頼を、どうやったら午前中に達成できるのか……」

 その事実に、室内の3人がギョッとした表情で俺を見た。

「まあ、興味はあるが、そこは冒険者のスキルだろうから追及はしないが、興味深々だよねぇ。」

「あははっ……黙秘します……」

「ガーゴイルの巣まで、一番近いところで馬車で1日半。そこから崖を登って捕獲してって考えると、最短で4日だろうと考えていたんだけどねぇ?」

「黙秘でお願いします。」

 しまった!そこまでアタマが回らなかった……
 
-大丈夫、落ち着いてください-

「えっ?」

 思わず声に出てしまった。

「どうしたのかな?」

「い、いえ。何でもないです。」

「何だか君には運命的なものを感じるよ。」

「い、いえ。俺はただの冒険者ですから……」

「ふむ。その冒険者ケンギ君に頼みがあるんだがねぇ。」

「な、何でしょう!」

「簡単な事だよ。研究所の職員になりたまえ。」

「へっ?」

「正式には私の秘書だな。月3回程の魔物捕獲で、それ以外は自由にしていい。給料は月に金貨10枚出そう。」

「き、金貨10枚ですか!」

「屋敷に部屋も用意しよう。そうすれば食事つきだし、なんならメイドを口説いてもいいぞ。」

「ま、マジですか……」

「伯爵!いくら何でも初対面の相手に無謀です!」

「私は賛成ですわ。こんな奇麗なスカーレットを毎日モフモフできるんですよ。」

「お、お嬢様まで、何を言い出すんですか!」

「お嬢様?」

「ああ、娘のアイラだ。どこに嫁に行ってもいいように、今はメイドとして修行させておる。」

「紹介が遅れました。アイラ・クラフマンでございます。」

 スカートの両端をつまんで、足を交差して頭を下げた。
 金色の長い髪を後ろで束ねている。
 瞳は、引き込まれそうな深い海色をしていた。

「あっ、えっと、ケンギです。」

「この子は?」

「ミュウと言います。」

「うふっ、可愛い名前。」

 俺のような冒険者にとって、月に金貨10枚は願ってもない条件だ。
 しかも、貴族の屋敷住まいとなると、破格といってもいい条件だ。

 だが、今の俺には一人になれる時間の方が重要だった。
 金もそこまで重要ではない。
 多分、今日の稼ぎだけで金貨5枚くらいになるはずだ……
 俺は申し出を断わり、3日おきくらいには顔を出すから、捕獲などの要望があれば依頼として受けると約束した。

「ああそうだ、貴族の人ってオークの肉とか食べますか?」

「オーク!」

 アイラさんが嬉しそうな声をあげたので、俺は厨房に案内してもらって、1匹分のオーク肉を差し入れした。

 冒険者ギルドで2枚の依頼書を処理してもらい、金貨4枚を受け取った。
 お金が入った俺は、武器屋とか道具屋を回って色々と買いそろえた。
 防具はミュウに吸収してもらえば、ナノマシンでいつでも再現してもらえる。
 
-ご主人さま、あれを見てください-

 3軒目の道具屋でミュウが呼びかけてきた。
 ミュウの意識にあわせると、鈍色と球が棚の上にあった。

「オヤジ、それは何だい?」

「ワシにも分からねえんだ。叩いても熱しても、何も反応しねえんだ。」

「金属なのかい?」

「それも分からねえんだ。」

「そりゃあ気になるが……売り物なのかい?」

 オヤジはメガネの上からギロッと俺を見た。

「金貨5枚。」

「ば、バカを言うなよ。金貨5枚ありゃあ3年は遊んで暮らせるじゃねえか。銀貨5枚の間違いだろ。」

「まあ、確かに金貨5枚は高すぎか。金貨3枚でどうだ。」

「得体の知れねえ玉に金貨3枚はぼりすぎだろ。金貨1枚なら考えてもいいが……」

「まあ、冒険者じゃあ、そんなところだな。ほれ持ってきな。」

 俺はスリープ状態のショゴスを買い取った。
 ウミネコ亭に帰った俺は、オーク肉2匹分と大豆油を女将さんにあげた。

「こ、こんなにどうしたんだい?」

「今日は久しぶりに冒険者の仕事だよ。好きに使ってくれ。」

「言っとくけど、こんなんじゃメルもサキもやらないからね。」

「言っておくが、俺は幼女趣味じゃねえ!」

「ちょっと、誰が幼女なのよ!幼女はサキだけでしょ。」

「14才も立派な幼女だよ。」

「おや、アタシが欲しかったのかい?」

「ババアにも興味ねえよ。」

「バカだねえ。30代前半が、一番具合がいいんだよ。」

「売り込んでんじゃねえよ!」

 俺は部屋に戻った。
 薄暗くなってきたが、ミュウが体から光を発してくれる。

 机に置いたスリープモードのショゴスにミュウが触手を接続し、待機モードに誘導する。

-マスター登録しますので、血を吸引させてください-

「ああ、いいぞ。」

 ミュウから新たに伸びてきた触手で、俺は肘の内側から血を吸われた。
 そのまま触手はショゴスに伸びて血の受け渡しが行われたみたいだ。


【あとがき】
 2匹目のショゴス
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