【短編集】スライム・スライム

モモん

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ショゴス

第4話 山岳地帯

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「グレイウルフ5体ですね。雌雄、成体幼体は?」

「できれば雌雄が欲しいな。」

「承知しました。こちらの受け入れ態勢はできているのですか?」

「ああ、ここで血液採取を行った後に、城の魔物園に送るから問題ない。」

「魔物園?」

「今年オープンした魔物の生態研究のための施設だよ。一般開放エリアもあって子供たちには人気なんだよ。」

「伯爵、今はまだ貴族限定の公開ですから、彼が知らないのも当然かと思います。」

「そうですね、俺は闘技場と冒険者ギルドくらいしか行きませんから、世間の話題には疎くて……」

 グレイウルフもしくは灰色狼は、北の山岳都市に生息するモンスターの一種だ。
 モンスターといっても完全な生態系から派生した種で、イヌ科の動物である。
 これがモンスターに加えられているのは、その一部が魔法を使うと言われているからなのだが、それについて明確な報告はされていないと聞く。

 俺は一度ウミネコ亭に帰って、宿の解約をした。
 余剰分はこれまでの世話賃として返金不要というと、寂しそうな顔をしながらも女将は喜んでくれた。
 俺が宿にきて、もう1年経っている。多少心残りはあったが仕方ない。

 そして俺は、町外れの城壁に面した海沿いの家を買った。
 そこを城壁と同じ5mの塀で囲んで家を改造していく。
 最初に城壁に穴を開けて外側の森を切り拓き、そこも鉄の塀で囲む。
 城壁の外は、切り拓いた者が好きに使えるのだ。

 護岸をコンクリートで固め、ミュウとレイは核融合の発電所を作った。
 これで、電気を好きなだけ使える。
 外側にも鉄筋とコンクリートを組み合わせて広い建物を作っていく。
 建物の窓はシャッターで覆い、夜は光が漏れないようにしてある。
 そして二人はナノマシンで人型の機械人形を10体作った。
 ゴムで皮膚も作り、メイド服を買ってきて家事をさせるのだ。

 掘り出した金があるので、無尽蔵に金貨が複製できる。
 カーテンでも布団でも、好きなように買い付ける事ができる。
 1週間かけて拠点を整備し、俺は外側に作った開閉式屋根の大型倉庫からドローンタイプと言われる飛行艇を発進させた。
 6個の飛行ユニットは全て自動でコントロールされており、13人乗りのたまご型飛行艇は十分な積載量もある。
 全長10m幅4mの飛行艇00号は音もなく飛んでき、2階構造のここにはトイレとシャワー、キッチン等の生活設備も完備してある。
 
 最高で時速500kmの00号はほぼ自動操縦だ。
 京浜都市から山岳都市まで約1500km。
 北上するにつれて気温は下がっているハズだが、空調によりコントロールされている室内は快適だった。

「マスター、まもなく高原エリアに入りますので、低速飛行に切り替えます。」

 いつの間にか、レイの呼びかけがマスターに変わっている。
 ミュウは変わらずご主人さまと呼んでくる。
 ”自我”みたいなものが芽生えているのかもしれない。

 上空から温度センサーでモニターに表示させているので、生物ならばすぐに判断できる。
 ジャイアントバニーとかも、氷の麻酔針を撃ち込んで、マジックハンドという金属製の腕で檻に取り込んでおく。
 アイスフォックスとかのモンスターも眠らせて捕獲していくが、ウサギとかクマなどの動物は仕留めて収納していく。
 
「ご主人さま、あの洞窟グレイウルフ程度の大きさで反応があります。」

「よし、降りてみよう。」

 洞窟はそれほど深いものではなかった。
 入るとすぐにグルルという警戒音がして、ライトで照らした先に横たわったオオカミがいた。

「マスター、腹部から出血しています。呼吸も荒いし危ないかもしれません。」

「治療は?」

「生体ナノマシンで可能です。幼体が……5匹いますね。」

「治療を優先。ミュウは周囲を警戒。」

「「了解!」」

 見る間に傷が修復されていく。

「ご主人さま、ブレードフォックスが5匹やってきます。」

「えっと、モンスターだったな、眠らせて捕獲。」

「了解!」

「こちらは治療完了です。ナノマシンを撃ち込んでありますので、意識共感可能です。」

「じゃあ、子供と一緒に保護するって伝えて。」

 子供はまだ満足に歩けない程で、本当に産まれて間もないのだろう。
 レイは母オオカミを抱え、子供たちを触手で捕まえて飛行艇に運んでいく。
 更に移動しながら、グレイウルフの成体で、オス3匹とメス2匹を眠らせて捕らえた。
 麻酔は8時間くらい効果があるらしい。

 目的を達した俺たちは拠点に帰り、成体は檻に乗せ換えて研究所に向かった。
 目立たないよう、機械式の走りトカゲに曳かせた荷馬車だ。
 本物の皮を被せてあるので気づかれる可能性は低いだろう。

 石畳を進んでいくと、ガタガタと揺れるし、乗り心地は最悪だ、

「みんなよくこんなのに乗ってられるな。」

-一般的な荷車を模倣しただけですからね。タイヤを中空のゴム製にして、サスペンションを衝撃吸収タイプにすれば改善可能です-

「やって。すぐに改善希望です。」

 その場で改造できてしまうのが彼女たちの素晴らしいところだ。
 今はネコの姿だが……

 10分ほどで黒いゴム製のタイヤに代わり、サスペンションも4輪独立式のものになった。
 静かだし殆ど揺れない。
 一応御者席に俺が座っているが、実際にはミュウたちがナノマシンでコントロールしている。

 研究所に着いた俺たちは、馬車の荷台から折り畳み式の台車を降ろしてオオカミの入った檻を押して研究所に入った。

「ただいま戻りました。」

 全員がギョッとしてこちらを見た。
 片道1500kmを馬車で移動すると、往復で90日くらいかかると言われていた。
 俺が出発して、まだ8日だった。
 いや、7日は拠点を作っていたのだが……

 俺は台車を押して奥の処置室に向かう。

「待て!ケンギ、それは何だ……そんな手押し車、見たことないぞ。」

「ああ、特注品ですよ。平らなところだと、こういうタイプの方がいいんじゃないかと思って。」

「ライド君、それよりも寝ているうちに血液採取と検体を!」

「あっ、はい。」

 俺たちは処置室で採血と個体の検査を行った。
 
「多分、あと2時間くらいで目を覚ますと思います。」

「ちょっと待て!これはどうやって眠らせたんだ?」

「薬ですよ。麻酔薬。オリジナルの調合で、10ml注射すれば8時間くらい効果が続きます。」

「くっ、そんなモノがあるとは……お前が調合したのか?」

「ええ。普通使うモルヒネ草とマヒ苔、そこに別の素材をブレンドしたオリジナルです。」

「例えば、吹き矢の先につけて撃ち込んだら効くのか?」

「そこまで即効性はないですし、そんな少量では1分くらいで回復しちゃうんじゃないですかね。」

「試してみる価値はありそうだな。」

「良かったら使ってください。30ml入ってますから。」

「いいのか、有難い。」

 俺はライドさんにガラス瓶を渡した。
 
 事務所に戻った俺は所長に問いかけた。

「ブレードフォックスやアイスフォックスなんかも捕まえたんですが、要りますか?」

「ホントか!別に手当を出すから、是非引き取らせてくれ!」

 俺とライドさんとで手分けをして獲物を運び込んだ。
 グレイフォックスを除いて全部で22匹。
 俺たちは何とか目覚める前に全部のチェックを終わらせた。

「ああ、これ使いますか?」

「何だね、それは……手袋か?」

「特殊な素材で編んでありますから、オオカミくらいなら噛まれても大丈夫ですよ。肘まで保護できますしね。」

 3層構造になっており、防刃・防突き刺しに有効な手袋だ。
 勿論、ミュウたちに作ってもらった特殊なモノだった。


【あとがき】
 まだ本題に誘導できません……
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