短編集【令嬢の憂鬱】

モモん

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最恐スライム・∞

最恐スライム・∞ 06

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「ここでネックになりそうなのが上原しじみなんだ」

「なんで?」

「あの子、異世界願望が強いからさ。
みんながここで救援を待とうとか言ったら、脱走するかもね」

「まさか……そんな……」



結局、その日は自習で終わった。
明日にでも保護者会を開くので、それまでは第三者には情報を流さないように注意され、僕は桃花先生の研究室を訪れた。

「君は、ブーちゃんのような優れた魔法師なりたくはないかい?」

「僕はお二人に憧れて、ここの中学に編入してきました。
お二人は僕の目標です」

「それは光栄だね。
できれば、君の手を借りたいのだが、どうだろうか。
転移持ちが欲しかったんだが、なかなか有望な人材がいなくてね」

「僕なんかでよければ、いつでもお使いください!」

「ありがとう。
じゃあ、早速性器を出してくれるかな。
サンプル採取するからさ」

ニコッと笑う先生は、とても魅力的で、急に股間が……
言葉の意味が理解できなかったが先生にされるまま……

「あれっ?先生の髪って、銀色でしたっけ……耳も、こんなにとがってたんですね」

先生は少し口の中でクチュクチュしていたが、僕と唇を重ねた。
思ったとおり、ドロッとした液体状のものが入ってきた。

「君の遺伝子に私のものを重ねた。
2~3日すれば全身に浸透するはずよ。
そうすれば、私のことも分かるわ。
今のは、二人だけの秘密だからね」

「あっ、はい。じゃあ、失礼します」

そういって部屋を出た。
どうやって家まで帰ったのか……覚えていない。

「ねえ、今日学校で何があったの?」

母さんが聞いてきた。
いろいろありすぎて、何を答えたらいいのか分からなかった。
僕の一大事は、桃花先生とのアレだが、あれは流石に教えられない。

「どうして?」

「ニュースでやってたの。何とかって外国人の分析官が、あんたの学校で死亡したって。」

「ああ、多分緊急の保護者会があると思う。
ちょっと・・・どこまで話していいのか分からないから、学校で聞いてくれる」

「あんた、まさか……」

「なに?」

「学校で悪いことしたんじゃないわよね」

「それは……多分、ないと思う……」

人に言えない……後ろめたいことがいくつか頭に浮かんだ。
本当なら、クラスメイトのことが気になって、眠れなかったんじゃないかって思うのだが、無性に眠たかった。

翌朝の目覚めは爽快だった。
覚醒は世界に違う意味を持たせてくれたのだ。

「おはよう」

教室に入ると、話題は半数のクラスメイトのことだった。
生きているのか、救出は可能なのかetc
回答は頭の中にある。それを口にするわけにはいかないが、不安感を払しょくできるようなヒントを与えることはできる。

「僕も、帰ってからいろいろと考えてみたんだけど、あの祭壇には動物が徘徊したような痕跡はなかっただろ。
争ったような痕跡もなかったから、そういうイレギュラーな場所じゃないかと思うんだ。
結界で囲われているとかね。
スライムは例外。あれが何なのかは、政府が分析中。
転送された場所は、石川さんのチップを解析すれば確認できるから、もう一度同じ座標に対してロストをかけてやれば呼び戻せるはずだよ」

これは概ね正しい。スライムの分析は、桃花先生……いや、モモちゃん先生が行なっており、座標もモモちゃん先生が確認済み。
あとは佐藤分析官に教えて、佐藤分析官がどうやったのか辻褄をあわせれば対策に着手できる。

問題は、誰がロストを実行できるか……
石川さんのロストは、完全な暴発で再現は不可能。
魔法回路自体がパンクしており、基礎魔法すら使えないだろうと診断されている。
政府が術者を用意できれば良いのだが、転移系術者はただでさえ数が少ない。
ましてやロストなんて言う派生形の最上級魔法で、かつ別の世界への転移などできるとは思えない。

そう……普通なら。

モモちゃん先生は、僕なら異世界への転移が可能だろうと考えている。
あと3日くらい、必死に訓練すれば確率80%くらいで普通に転移できそうだと……

だが、その場合、そんなことのできる高校生(術者)がいるとバレたらどうなるか。
モモちゃん先生の下僕でいられなくなってしまうじゃないですか!
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