短編集【令嬢の憂鬱】

モモん

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最恐スライム・∞

最恐スライム・∞ 07

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なに?
何があったの?
ここは?
学校はどうしたの?
体育館だったよね・・・

田中さおりが口にする疑問は、みんなが感じていた。

”ガタン!”と、物音がした方にみんなの注意が集まる。
10mほどの円形の床であるが、端っこの一部が1mほど欠けていた。

「いたたたっ、下は倉庫だったんだね。
床が剥がれて落っこちちゃったよ」

「トーカちゃん、大丈夫?」 「ケガしなかった?」

仲の良い染谷あかねと今井きよりが駆け寄って穴から出るのに手を貸す。
穴から顔を出したのは同じジャージ姿の散花トーカ。
ショートカットで小柄な少女だ。

這い出した彼女は、手でお尻をパンパンと叩きながら周りを見回した。

「さおりん、落ち着こうよ。
みんなも同じだよ。
まず、状況確認のための情報交換。それから対策を考えよう」

「そうだな。
トーカの言う通り、何が起こったのか考えよう。
この中だと……吉田、お前にまとめ役を命じる」

「赤石、なんでお前に任命されなくっちゃいけないんだよ。
まあ、いいけどさ」

「「「いいのかよ!」」」
軽い突っ込みも入る。

「多分、きっかけは”ロスト、みんな消えちゃえ”とかいうセリフ。
あれって、石川さんかな?」

「はーい。多分、原因はうちの班だね。
例によって石川さんが遅れていたんだけど、みんなおとなしく待ってたんだよ。
そこに誰かがぶつかって集中力を乱して失敗。
思わず漏らしたため息が気に入らなかったんでしょうね。
悪かったとは思っているんだけどさ……」

「でもさ、あのタイミングでぶつかるってないでしょ。
井上サイテイ!」

「ロストって?」

「うーん、多分転移系の派生上位魔法だと思うよ。
空間ごと入れ替えるタイプ」

「トーカちゃん、さすが物知り」

「じゃあ、ここの石畳が体育館に出現してるのね」

「えーん、もうバスケットできないじゃない」

「そういうのは後にしようよ。
毒島先生がいるんだから、リバース使うと思うんだ。
だから、しばらくはここから動かない方がいいよ」

「おっ、染谷ちゃんの毒島先生登場か!
先生、お礼に私の純潔を捧げますぅ!」

「ねえ、きよりんさあ、結界ってはじき出すのにも使うんだよ。
今は、この中に何か入ってこないようにしてるんだけどさ」

「……ごめん、もう魔法使ってたんだ」

「俺も、探査かけてるんだけど、今のところ100m以内に大型の動物とかはいないようだぞ」


「10分経ったけど、リバースは効かなかったみたいだね。
ただ、救出はこの座標に対して行われるはずだから、あまり離れない方がいいと思うんだけど、どうかな?」

「けっ、毒島も使えねえな」

「じゃあ、俺が帰還できるようにしたら、染谷の純潔は戴きだな」

「帰れないってパターンもあるんじゃねえの」

「そうなったら俺たち最強じゃね」

「ケヒケヒ、ハーレムも夢じゃねえってか」

「馬鹿は放っておきましょう。
寝るのは下の倉庫が使えそうだから、吉岡君ちょっと補強しておいてくれる」

「わかった」

「赤石君と今野君は、食料調達に使えそうなもの探してみてくれるかな」

「「了解」」

「それと、トイレが必要ね。
まどかちゃんと阿部ちゃん、それと西原君。三人でトイレをどうするか考えてくれる」

「ほい」「トイレね」

「それから、残っている人で、少し周辺を確認してみましょう。
絶対に単独行動はしないこと。
特にしじみちゃん。ダメだからね」

「うっ……なんで」

「違う世界だって気付いているんでしょ」

「なんでバレたの」

「目がキラキラしてるから」
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