短編集【令嬢の憂鬱】

モモん

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超合金ロボ

脳の修復

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たった数時間一緒にいただけなのに、こんなにも彼女が愛しい……


彼女の家に戻ると、シェラさんが目を覚ましたところだった。
僕の姿を認めると、彼女の目からボロボロと涙がこぼれた。
僕への告白はヒュドラを倒した高揚感がさせたもので、本当は好きじゃないとか、実は他に好きな人がいるとかえずきながら訴えてくる。

「でも、僕はシェラさんが大好きで、どうしようもないくらい好きで、シェラさんに嫌われたら死んでしまうんじゃないかってくらい好きなんだ」

そういって彼女の頭を抱き寄せると、彼女はワーッと大声をあげて泣いた。
御免なさい、こんな身体になってゴメンナサイと何度も泣いた。

「大丈夫だから。僕が絶対にシェラさんを治すから信用してください」

胸の中で何度もコクコクとうなづくシェラさん。

ノエルさんに連れられてトイレにいき、用意してもらった食事を済ませてベッドに横たえる。

「多分、イフリート召喚が過負荷となって、頭の中が少し壊れています。
最初に大雑把に修復してから、切れてしまった数千本の糸を一本ずつ繋ぎなおします」

「はい」

「シェラさんが動けるようになるまで、僕はここで眠り治療を続けます。どこにも行きませんから安心してください」

「はい」

「時々は、エッチなことをしちゃうかもしれません」

「あらあらん、できれば結婚まではキレイな体でお願いします」

「クスッ、もう裸も見られていますから大丈夫です」

「では、始めます。シェラさんは寝ていてもいいですからね」

「はい」

『治癒』
左手で脳内をモニターしながら、右手で魔法を発動する。

「ぐっ……」

「痛みますか?」

「あ、頭の中を刺すような……痛みが……」
そういってシェラさんは意識を失った。

「大丈夫です。傷ついたニューロンが回復するための痛みです」自分に言い聞かせるように言葉にする。

僕のモニターには、順調に修復中と表示されており、30分ほど続けると初期修復完了と表示された。
呼吸・脈拍・血圧も正常と表示されている。

「続いて、シナプスの再構成に入ります。
モニター拡大表示。シナプスの方向に注意して両端を確認したら復元魔法で処置します」

手順を確認するために口に出す。
シナプスは隣のニューロンとつながっているとは限らない。
一つの知識が全く別の他の知識と関連付けされるときに、アインシュタインのいう思考のジャンプが起きる。
他の知識が、隣り合ったニューロン同士ではなく、まったく別方向のニューロンの場合もあるからだ。
このイメージが正確なものなのかすらわからない。あくまでも僕の主観……というか、以前見たTVの影響だろう。

もし、間違えて接続したらどうなるのだろうか?
大発見につながるのか、とんでもない勘違いにつながるのか……

ペアであることを確認した両方のシナプスに復元をかけると、両端から繊維状のシナプスが伸びて絡み合って接続が完了する。
一か所に一分。半日続けても700本程度。
損傷を受けたシナプスは1万か所以上あった。

一週間続けても大きな変化は見られなかった。
多少顔色がよくなり、起きている時間が少し長くなったくらいだ。

劇的な変化は、8日目の昼過ぎに起こった。
一組のシナプスをつなぎ終わった途端、一気に太さが2倍になった。
HPもMPも限界値が2047になり、現在値も回復していく。
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