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超合金ロボ
脳神経が焼き切れただと……
しおりを挟むノエラさんの案内で彼女の家に移動し、ベッドで眠るシェラさんと対面する。
寝息は浅く、顔色も悪い。
「シェラさん……
お義母さん、すみませんが僕なりのやり方で検査したいのですがよろしいですか?」
「もちろんですよ。シェラはあなたのお嫁さんなんですから遠慮しないでいいわよ」
シェラさんの身体の上に手をかざし探査を発動する。
手を少しずつずらして全身をくまなくスキャンする。
どうだ?
【気管支に火傷の痕跡あり。他に異常は見られません】
そうか。気管支は治療が必要か?
【自己修復により治癒しているため、治療の必要なし】
【MP値が0/255.HP値が50/255です。これらの回復機能が作動していないものと推測されます】
【MPは前頭葉の前頭前皮質部分。HPは中脳。もしくは、ニューロンの異常やシナプスの断裂も考えられます】
「ふう。体に異常は見られません。
ということは、脳……頭の障害が考えられます」
頭部全体をスキャンしていくと、前頭葉と中脳に異常がみられた。
【前頭前皮質部分のニューロン複数損傷とシナプスの断裂が観測されました。発熱による焼損と思われます】
【ニューロンの損傷は治癒で修復可能ですが、シナプスの再接続には刺激性の治療が必要です】
【ブドウ糖の不足が計測されました。即効性のあるブドウやイチジク。時間をかけて分解される米やパンを補給してください】
「イフリートの影響で、脳の一部が焼けてしまったようです。
僕の治療だけでなく、脳のエネルギーとなる栄養補給が必要です」
「脳の栄養補給って、具体的に何を食べさせればいいんでしょう?」
「即効性のある果物類と、時間をかけて分解されるお米やパン。両方を与えたいのですが……」
「果物は何でもいいのですか?それと、お米とは何でしょう?」
「果物はブドウや柿・イチジクがいいです……が、僕の国とは呼び名が違うかもしれません。
お米は、麦よりもコロコロした穀物なんですが……国によっては流通してないかもしれませんね」
「ブドウは時期じゃありませんが、干したものでも大丈夫ですか?」
「干しブドウでも大丈夫ですので、起きたら食べさせてください。
僕は治療の準備をしてきます。
それと、魔力の続く限り治療を行いますが、魔力を使い切ったらそのままここで寝ることをお許しください」
「あらあら、結婚前に同衾ですか」
「そんなんじゃありません。
この体では、口づけすることもできません。
まったく不甲斐ない……」
「うふふっ、シェラは幸せ者ですね」
一旦家を出て、街を歩きながら脳内で問答する。
脳の活性化に必要なことや、活性化を促すアイテム。
断裂したシナプスを復元するための魔法構築。
例えば柑橘系の香りは脳を刺激して活発にする。
瞑想や料理、魔法発動の手順を復習したり、ストレスを減らすことなど、できることは全部やるつもりだ。
できればチョコレートや納豆を用意したいが……
チョコレートの製造は難易度が高いな……
納豆は、大豆と稲わらがあれば作れるが、コメが流通していないのでは話にならない。
ブドウ糖にせよチョコや納豆にせよ、日本ならば簡単に手に入るものがあまりに遠い。
彼女がこうなったのは僕の責任だ。
彼女が望んだにせよ、同行を許可したのは僕なんだから……
いや、心を偽るのは無しだ。
たった数時間一緒にいただけなのに、こんなにも彼女が愛しい……
こんな体の僕でもいいと言ってくれた彼女は、何としてでも回復させる。
応援ありがとうございます!
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