短編集【令嬢の憂鬱】

モモん

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超合金ロボ

魔人

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「煩いですね。人の部屋の前で何を騒いでおられるのですか?」

漆黒のマント・マスク・衣装。目と口の部分だけがそれとわかる怪人が出現した。
そして、その後ろにたたずむ女性は……

「マフユー!」

兵士を飛び越してマフユの正面に立つ。

「探したぞ、さあ一緒に帰ろう」

「……だれ?」

あっ、変身していたんだ。人形態に戻る。

「俺だ、エイジだ。日本へ帰ろう」

「エイジ……確かに。
でも、私はハルバード様の妻になった。だから帰らない」

「何馬鹿なことを言ってんだよ。召喚術とかで急にいなくなって、家族がどれだけ心配してると思ってんだ」

一瞬だがマフユの目に動揺がはしる。

「エイジとやら、確かに召喚術で呼んだことは詫びよう。
だが、マフユは私の妻だ。この世界にとどまることを決めた。諦めよ」

「元凶のお前が言うんじゃない。
宝物庫から武具を持ち出し、合成モンスターなんか作りやがって。
周りがどれだけ迷惑をしたと思ってるんだ」

「すべてはこの体を手に入れるためだ。武具の持ち出しや合成モンスターなど、些末事にすぎんよ」

この身体……探査には人間と魔王と竜王の合成モンスターと表示されている。
魔王と竜王だと……

「ハルバード殿!宝物庫からの数々の持ち出し、確かに認められましたな。
衆人の場で詮議いたします。我らと同行願います」

「今、些末事と言ったぞ。
これから我は、世界のすべてを支配する。そして、人も魔物も等しく我の配下となるのだ。
いずれ我のものとなるのに、先に使って何が悪い」

「世迷いごとを……仕方ありません、拘束させていただきます」

「我を拘束だと。面白い、だがいささか面倒であるし、殺戮は好まぬ。
マフユ、配下を呼べ!」

「四天王召喚!」

魔族3体とドラゴン一体が現れた。

「くっ、スキルエディット、イレース!」
マフユの召喚術を消した。次は……

「おかしなスキルだな、だがスキル封印!」

二つ目のスキル消しは発動しなかった。

「あはは、これで全員が体恤のみだ。魔族やドラゴン相手にどこまでできるか楽しみではないか」

ハルバードの言葉通り、兵士たちはドラゴンと魔族に蹂躙されていた。

だが人間側にも強者とマスタークラスがいた。

「弱い奴は下がってろ。オラオラオラ!」

「マフユ、こんな化け物と一緒にいるつもりか」

「私の勝手」

「そうか、スリープ」

これはスキルではなく、オリジナルの物理作用だから発動した。

「シェラさん、マフユをお願いします。
僕はこいつを、倒します」

「ふん、面白いことを言う。
マフユはお前を倒すまで預けておいてやろう。チェンジ・魔王」

ハルバードは背中の翼を広げて舞い上がり、左右の掌から火のボールを打ち出してきた。
火を無視して重力制御で追いかける。

「それもスキルではないというのか」

「うおりゃ……」

右ストレートがもろに魔王の顔面を捕らえ吹き飛んでいく。
魔王は途中でドラゴンへと姿を変えた。

「くらえブレスを!」

吹き飛びながらブレスを使うとどうなるか……
体制を整えないまま放たれたブレスは空を切り裂き、本体は反対方法である地面に突き刺さる。

「ぐお、やってくれたな」

いや、俺は何もしてないけど……
そのまま、蹴りを放つが竜の鱗に阻まれてダメージにはつながらない。

「竜王の鱗にそんなものは効かぬ」

ふと思いついて剣を取り出し、高速で振動させる。

「じゃあこれは?」

振動させた剣は、竜の腕を容易く切り落とす。

「ぐあ、な……なにをした。
なぜ、竜王の鱗に刃がとおる」

「秘密……」
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