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第弐拾漆章
turning point
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平野葵として生活をすることになったアマテラス。しかし、いきなりのピンチに立たされていた。
「記憶は確かに共有されているのですが…。どこへ向かえばいいのか分かりません!」
アマテラスも葵も方向音痴なのである。つまり、記憶の共有を可能にしている現状でもこの2人の持つ特性が悪い意味で噛み合ってしまったのだ。
「困りました…。このままではゲームの進行以前に彼女の今後に影響を与えてしまうかもしれません。私が正しく導かなければ…。」
アマテラスが葵の将来を考えながら途方に暮れていると、背後から突然「あの!」と聞き覚えのない男子の声が聞こえ、少し体をビクッとさせながら恐る恐る振り返ると…。そこには、全く見たことも会ったこともない他校の男子高校生が立っていたのです。葵ことアマテラスは思考を巡らせて彼に返答をしました。
「えと…なんですか。」
いつもの天真爛漫な葵とは違って少し緊張と恐怖が混じったような声で尋ねました。その表情と声に男子生徒は少し頬を紅らめながら言いました。
「いや、その…道に迷ってる感じだったので。」
少し照れくさそうにしながら葵を見ながら聞くと、恥ずかしくなった男子生徒は視線を逸らして続けました。
「さっき手に持ってた受験票をすれ違った時にたまたま見たんだけど、真逆の方向に進んでいくから追いかけて来たんだよ。」
彼は照れくささと恥ずかしさの中に少しの優しさを感じさせる声でことの経緯を話すと葵の返事を待つこともなく「会場は1組だから」と捨て台詞のように走ってしまいました。
アマテラスは、お礼くらい言いたかったのにと思いつつも心の中で感謝を言い言われた通り1組の教室へと向かうのでした。
こうして、無事に受験を終えたアマテラスですが、先程の男子生徒のことが気になるのか辺りをうろついていると、「おい」と聞き覚えのある声が背後から聞こえたのです。振り返ると、そこにたっていたのは大山和真、葵の幼なじみでした。葵はホッと肩を下ろすも少し残念そうな顔で和真に言いました。
「あーあ~、和真だったか~」
その言葉に少し不満そうな顔をして和真が「なんだよ」と言い返そうとした時、2人の目の前に葵を案内してくれた男子高校生が立っていたのです。葵は咄嗟に顔を逸らして和真を盾にするように後ろに下がりました。すると、男子生徒は不満そうな顔で葵を見下ろすと、和真の方へ歩み寄って来たのです。ことの経緯を知らない和真は少し睨みながら「なんだよ」と少し威圧するような口調で尋ねました。その反応に男子生徒は冷静な口調で言い返しました。
「そこの後ろの子が朝から道に迷ってたから助けてやったんだよ。なのに男の後ろに隠れて俺が悪者みたいじゃんかよ~。それに、あんたも彼氏ならちゃんと案内くらいしてやれよ。」
すると、さっきまで和真の後ろに隠れていた葵が彼氏というワードに反応して顔を真っ赤に染めながら反論しました。
「こんな奴彼氏でもなんでもないから!た・だ・の!幼なじみだから!こんなツンデレ無感情ノンデリ男のことなんて全然、まったく!なんとも思ってないから!」
すると、明らかに罵倒されていることがわかった和真は笑顔の中に怒りを含めたような表情で言い返しました。
「誰がツンデレ無感情だ~?」と葵の方にゆっくり顔を向けながら言いました。和真が普段の冷静さから想像が出来ないほどの反論をしました。
「ノンデリはお前もだろ!?だいたい朝から迷子って相変わらず方向音痴だな!こんなとこどうやったら迷うんだよ!しかも、よく知らない男に道案内されるってどんだけボーッとしてんだよ!」
痴話喧嘩のような光景を見せつけられて男子生徒は少し引き気味で「仲良いんだな」と言うと、2人の地雷を踏んでしまったようで、「良くない!」と2人の息のあった反論が返ってきました。苦笑いをしつつその場を離れようとした時、「名前…」と少し恥ずかしそうな女の子の声にえ…。と一瞬時が止まったようにさっきまで言い合っていた声は静かになっていました。
「だから、名前!あなたの名前なんて言うの?」
早く教えてと言わんばかりの目つきで葵が男子生徒を見つめると少し慌てながら答えました。
「速水蓮二です!」
すると、葵が名前をまるで心に刻むかのように小声で呟きました。「速水…蓮二くん。」そう呟くと蓮二の方を真っ直ぐに見つめながら続けました。
「今朝はどうもありがとぉ!速水蓮二くん!」
いつもの天真爛漫な笑顔で言うと、蓮二は少し頬を紅く染めながら下を向くと、小さな笑みを浮かべて聞こえるか聞こえないか分からないような声で「蓮二で…ぃぃょ。」と呟くも、「よく聞こえない、なんて言ったの?」と葵に聞かれ。
「蓮二でいいよ!」
声と同時に頭を上げて真っ直ぐな眼差しで葵を見ながら答えると、「わかった」と太陽のように明るい笑顔で葵が「蓮二くん!」と呼びました。
しかし、ここが3人の運命の分岐点になるとは…。この時は誰も想像がつきませんでした。
「記憶は確かに共有されているのですが…。どこへ向かえばいいのか分かりません!」
アマテラスも葵も方向音痴なのである。つまり、記憶の共有を可能にしている現状でもこの2人の持つ特性が悪い意味で噛み合ってしまったのだ。
「困りました…。このままではゲームの進行以前に彼女の今後に影響を与えてしまうかもしれません。私が正しく導かなければ…。」
アマテラスが葵の将来を考えながら途方に暮れていると、背後から突然「あの!」と聞き覚えのない男子の声が聞こえ、少し体をビクッとさせながら恐る恐る振り返ると…。そこには、全く見たことも会ったこともない他校の男子高校生が立っていたのです。葵ことアマテラスは思考を巡らせて彼に返答をしました。
「えと…なんですか。」
いつもの天真爛漫な葵とは違って少し緊張と恐怖が混じったような声で尋ねました。その表情と声に男子生徒は少し頬を紅らめながら言いました。
「いや、その…道に迷ってる感じだったので。」
少し照れくさそうにしながら葵を見ながら聞くと、恥ずかしくなった男子生徒は視線を逸らして続けました。
「さっき手に持ってた受験票をすれ違った時にたまたま見たんだけど、真逆の方向に進んでいくから追いかけて来たんだよ。」
彼は照れくささと恥ずかしさの中に少しの優しさを感じさせる声でことの経緯を話すと葵の返事を待つこともなく「会場は1組だから」と捨て台詞のように走ってしまいました。
アマテラスは、お礼くらい言いたかったのにと思いつつも心の中で感謝を言い言われた通り1組の教室へと向かうのでした。
こうして、無事に受験を終えたアマテラスですが、先程の男子生徒のことが気になるのか辺りをうろついていると、「おい」と聞き覚えのある声が背後から聞こえたのです。振り返ると、そこにたっていたのは大山和真、葵の幼なじみでした。葵はホッと肩を下ろすも少し残念そうな顔で和真に言いました。
「あーあ~、和真だったか~」
その言葉に少し不満そうな顔をして和真が「なんだよ」と言い返そうとした時、2人の目の前に葵を案内してくれた男子高校生が立っていたのです。葵は咄嗟に顔を逸らして和真を盾にするように後ろに下がりました。すると、男子生徒は不満そうな顔で葵を見下ろすと、和真の方へ歩み寄って来たのです。ことの経緯を知らない和真は少し睨みながら「なんだよ」と少し威圧するような口調で尋ねました。その反応に男子生徒は冷静な口調で言い返しました。
「そこの後ろの子が朝から道に迷ってたから助けてやったんだよ。なのに男の後ろに隠れて俺が悪者みたいじゃんかよ~。それに、あんたも彼氏ならちゃんと案内くらいしてやれよ。」
すると、さっきまで和真の後ろに隠れていた葵が彼氏というワードに反応して顔を真っ赤に染めながら反論しました。
「こんな奴彼氏でもなんでもないから!た・だ・の!幼なじみだから!こんなツンデレ無感情ノンデリ男のことなんて全然、まったく!なんとも思ってないから!」
すると、明らかに罵倒されていることがわかった和真は笑顔の中に怒りを含めたような表情で言い返しました。
「誰がツンデレ無感情だ~?」と葵の方にゆっくり顔を向けながら言いました。和真が普段の冷静さから想像が出来ないほどの反論をしました。
「ノンデリはお前もだろ!?だいたい朝から迷子って相変わらず方向音痴だな!こんなとこどうやったら迷うんだよ!しかも、よく知らない男に道案内されるってどんだけボーッとしてんだよ!」
痴話喧嘩のような光景を見せつけられて男子生徒は少し引き気味で「仲良いんだな」と言うと、2人の地雷を踏んでしまったようで、「良くない!」と2人の息のあった反論が返ってきました。苦笑いをしつつその場を離れようとした時、「名前…」と少し恥ずかしそうな女の子の声にえ…。と一瞬時が止まったようにさっきまで言い合っていた声は静かになっていました。
「だから、名前!あなたの名前なんて言うの?」
早く教えてと言わんばかりの目つきで葵が男子生徒を見つめると少し慌てながら答えました。
「速水蓮二です!」
すると、葵が名前をまるで心に刻むかのように小声で呟きました。「速水…蓮二くん。」そう呟くと蓮二の方を真っ直ぐに見つめながら続けました。
「今朝はどうもありがとぉ!速水蓮二くん!」
いつもの天真爛漫な笑顔で言うと、蓮二は少し頬を紅く染めながら下を向くと、小さな笑みを浮かべて聞こえるか聞こえないか分からないような声で「蓮二で…ぃぃょ。」と呟くも、「よく聞こえない、なんて言ったの?」と葵に聞かれ。
「蓮二でいいよ!」
声と同時に頭を上げて真っ直ぐな眼差しで葵を見ながら答えると、「わかった」と太陽のように明るい笑顔で葵が「蓮二くん!」と呼びました。
しかし、ここが3人の運命の分岐点になるとは…。この時は誰も想像がつきませんでした。
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