カルピスサワー

ふうか

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カルピスサワー 46

 すりガラスの窓からのぞく、空のみずいろと朝日のいろ。アパートの前を通る車のエンジンの音、どこかで犬の鳴く声。そんな日常が気になる。誰かは壁の向こうで普通に朝を迎えているのに、俺は……。
 昼日中のセックスに覚える背徳感。それをベッドの上よりも強く感じる。

「んっ……」

 高く上がる声を、くちびるを噛んで我慢する。力を入れると、反射的に抱えたままの足を強く抱く。
 揺れる足に、ちゅ、と宮下がキスをする。思わずこぼれそうになる声を堪えて、がくがくと小さく震える。その反応に、ベロリと宮下がふくらはぎを舐め上げた。ゾワリと走るしびれを息を止めてやり過ごす。

 尻に差し込んだ指は、ゆっくりと抜き挿ししながら、俺を堪らなくさせるために中を探って、拡げる動作を繰り返す。最初は苦しかっただけのそれも、慣れしまえば指だけじゃ足りないと、そう叫びだしたくなる、それになっていた。
 もっと、と言いたくて、だけど言葉を飲み込む。
 たぶん、宮下はそんなオレを分かっていて、とんとんと堪らなくなるその場所をたたいて声を上げさせようとする。

「ん、んっん……」

 耐える声が堪えきれなくなる。

「ぁっ」

 小さく声が上がると、ちゅ、と足にキスをする。その度にゾワゾワと背中をしびれが駆け上がった。
 それを幾度となくくり返していくと、どこかで快感に抵抗していた理性がグズグズと溶けて消えていく。理性と一緒に身体の力も抜けて、ただただ、どこまでも快感を飲み込むように貪欲になる。

 痺れた頭の中が、ただゆらゆらと揺れる。ぼんやりと俺に快感を与える男を見た。
 うっとりと、どこか虚ろにも見える表情で、時おり足にキスをしながら、手を動かして俺の身体を小さく揺さぶる。はっと熱い息を吐く宮下がとんでもなく愛しく思えて、なんだか泣きそうになる。
 だけど、そんな俺をどこか冷静に見ている俺もいて──。スイッチ入ってるな、なんて思って眺めている。さっきまで恥ずかしいとか言ってたのに、もういいの? みたいな、そんなふうに頭の中で語り掛けられる。

 ぐちゅり。
 そう響いた音に、俺は身を縮み込ませた。
 前立腺と入口の浅い場所ばかりを探っていた指が、思い切り奥まで押し込まれて、深い場所にまで届く。
 ひゅ、と息を詰めて、ガクガクと小さく震える。けれどそれは一度で終ることなく、ギリギリまで引き抜かれてまた、ぐちゅん、と音を立てて押し込まれる。

 奥まで押し込まれた指が、ぐりぐりと奥を探った。
 その感触。奥を探ると、ヌルヌルと手のひらがペタリと触れた穴の周りを撫でまわる。
 今まで、そこを意識したことはあまりない。けれど、ついさっきまでカミソリを当てられ嫌っていう程意識していたそこは、その感覚を忘れていなかった。
 ぬるぬると這い回る手のひらの感触。ざり、と毛を逆撫でるみたいなくすぐったさ。それから緊張感の名残。

「んんっっ……っ」

 息がつまって、声がこぼれた。
 触れているそこが感じすぎて辛くなり、逃れようと身をよじる。奥まで指を挿し込まれたまま、わざとそこをぐるりと手のひらが撫でた。

「…あっ……、やっ……」

 思わず声が上がる。

「何が、嫌、なんですか?」

 宮下の興奮した掠れ声。

「それっ……ぞわぞわ、する、のっ…、やだっ……」
「ぞわぞわ、するんだ?」

 ふぅーん、と呟いて、足を掴んでいたもう一方の手を、つるつるになったその場所に伸ばして撫でる。

「あっ……」

 毛で覆われ守られていた場所が、初めて何の庇護もなく触れられる。今まで守り続けられていたその場所だけは、まるで赤ちゃんだ。
 ぬるりと触れられて撫でられる。わざとなのか、ローションのぬめりは完全に落としきれてなくて、つるつると滑る手がもどかしいくすぐったさを残す。
 その間にも、後ろの穴に差し込まれた指は抜き挿しを繰り返して俺を堪らなくさせていく。

「ぁ、ぁ、っ、ぁあっ、ぁ、」

 我慢していたはずの声が、いつの間にか手の動きに合わせて、こぼれだす。

「ぞわぞわしてるのも、気持ち良さそうですよ?」
「んっ、ぅん、……いっ……」
「気持ちいいの?」

 ぽわぽわと揺れるみたいな頭に聞かれて、うん、と頷く。初めての感覚に、強がって嘘をつくことすらできない。

「……もち、いっ…いっ……」

 あ、とこぼれる声の合間に訴える。

「このまま、イク?」

 その声にイヤイヤと首を振る。気持ち良くて、それを止められるのは嫌なんだけど。だけどそれ以上に一人で気持ち良くなってるのが寂しい。
 声にしたくて、だけど言葉は全部嬌声に呑まれる。
 何でだろう、一緒にイキたいと、宮下を慕う言葉を口にするのはひどく恥ずかしい。

 身体だけじゃなく、はだかのこころを投げ出すような、そんな心許なさと、恥ずかしさ。
 宮下なら受け止めてくれると、喜んでくれるとわかっているのに、なんでかその一歩はいつも、なかなか踏み出せない。

 けれど……。
 足を掴んでいた手を離して、宮下に手を伸ばす。宮下がそれに気付いて身体を近付けた。
 きゅ、と背中を抱き寄せて、小さく呟いた。

「いっしょに、イキたい……」
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