市霊狩り

美味しい肉まん

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本来の姿

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 クッソ! 幾ら穿いても斬り裂いても無限に再生してくる。獣が吠えると首が三本になった、攻撃がより立体的になって来る。キョーコとの修練のおかげで捌けるが向こうは無限コッチは有限どうするよ! 遠くからキョーコが呼んでいる、それどころじゃない! 今注意を逸らすと……胸を牙がかすめる! ほら見ろクッソ! 更に雄叫び上げると尻尾が三本に増えて蛇になってる。
 もう逃げよう……大きく息を吸って全力でキョーコの方へ向かって逃げてく、キョーコがもう一人の私をおぶっている。
「逃げるよ!」
「どこによ!? それよりも聞いて! 茉希の呪力を吸い取っているのよあの獣が!」
「はぁ!?」
「ごめん……なさい……」
「もうええわ!! 取り敢えずここから離れよう!」
三人で逃げ出す、どっか隠れられる場所が……あった!! キョーコの手を引っ張る
「こっち!!」
製紙会社の工場へと逃げ込み倒れ込む
「はぁはぁっ!」
「ふぅ~!」
少しは時間が稼げるか……
「おいアタシその呪力自分で操れないのかよ!」
「あの獣に……奪われて……いるの……よ」
「要は勝手に吸い取られてんだな?」
「そうね……ほら……」
指を指すと、獣がいる! もう気付きやがった。
「コイツはアタシがおぶって行く、キョーコとはここでお別れだ!!」
「まって!! 行かないで!!」
きっと獣はコイツの呪力を全て奪うつもりだろう、だからこそ呪力を辿りすぐ見つかる。
「クッソ! 飼い犬に手を噛まれてんじゃないよ!!」
走って逃げる!! コイツはアタシだアタシの影だ! ふと女神の言葉を思い出す。

▲ ▲ ▲

女神様達の手がアタシの胸を貫く
「今こそ全てを一つに、より濃い光と影を持ちし娘よ選びなさい……魂の力を……」
そんなの決まってる、さっきも言った
「悪いね女神様アタシは、小心者でね用心深いんだ……何度も言わせんなよ……この力全てだ! 光だぁ?影だぁ? 知るか!」

◆ ◆ ◆

 つまり……アタシ達の事か!! って言うか、あの女神共! 気付いてたんなら教えてくれよ
「おいアタシと一つに戻らないか?」
「消えたく……ない……の……」
「大丈夫だ! きっとアタシたち元に戻るだけだ。アタシでも無い、お前でも無い存在に生まれ変わるんだよ」
「生きられ……るの……」
「さあね、お前が産み落とした獣をどうにかしないと。どっちに転んでもアタシら死ぬんだ」
「これ以上は……もう……持た……ない」
「だったら尚更だ! 行くぞ」
立ち止まり下ろして、オデコを合わせて意識を合わせていく。

◇ ◇ ◇

 「キョーコとはここでお別れだ!!」
「まって!! 行かないで!!」
その場で愕然とする、獣が脇を通り過ぎていき、マキを追いかけていく。私は……置いていくの? 置いていかれたの? そんなの許さない!! 絶対に許さない……足はもうガクガクするけど、追いかける。追い付いたら引っ叩きたい……失いたく無い……
 獣が脚を止める、その先にマキが立ってオデコを合わせている。
「あぶないっ!! マキィィィイ!!!」
声に応えるように眩しい光を放つ。獣が脚を引っ込める。
 その先には……

◆ ◆ ◆

 ここはアタシの茉希とマキが本来あるべき魂の場所なのだろうか? 茉希が立っている
「ずっと怨んでいた……私を切り離し、消し去ろうとした。マキ……あなたと女神達と人間をね」
「まだヤル気!? 時間が無いんだけど!」
「ここは現実世界とは時間の流れが違う」
「でも……もうどうでも良い……コレはケジメよ、さあ構えて」
「素手だけど!?」
「行くわよ!!」
取り敢えず頭突きを鼻っ面にかます。
「実績経験はアタシのほうが上、アンタおわかり?」
「それでもね!!」
顔面で茉希の拳を受け止める
「ワタシ」
「アタシ」
「「達が分かり合うには必要でしょうね!!」」
殴りあって行くに連れて、茉希の怨んでいた気持ちが流れ込んでくる。アタシがその立場ならきっと同じ事を仕出かしただろう。でもね茉希……アタシにはこんな思い出が有るんだよ……意識が溶け合うほど混ざり始める。
「こんな事があったのねマキ……」
「そうだよ茉希……これからは一緒に生きて行こう二人で生まれ変わろう」
ドクンと鼓動が聴こえる。新しい生命としての産声が鼓動となって聴こえる……一体感を感じる……私は……アタシは

『渡辺茉希だっ!!!』

「あぶないっ!! マキィィィイ!!!」

キョーコの声がする……

◆ ◆ ◆

 目を開けると目の前に獣が居た。腕を振りかざし槍を引き寄せる、もうコイツには呪力を補充する術は無い筈だ。頭の一つを斬り飛ばすと頭は再生はしない。ゆっくりと滑らかに脚を斬り落とす。獣の悲鳴とうめき声が煩い、私が産み落とした獣よ消えなさい。獣の頭を二つ纏めて穿き斬り裂く、獣が動かなくなる。それを見て京子が近寄ってくる……

バッシーン!!

本気の平手打ちをくらう
「いったーい! 何すんのよ!!」
「ふざけるんじゃ無いわよ!! 何がここで、お別れだ。よ!!」
「いやそういう意味では無くて……っ!!」
キョーコを抱えて飛び退く、獣の爪が空振る。おかしい確かに息の根を止めた筈だ。なのに何で元の姿に戻ってるんだ! まさかこの獣自体が呪いが顕現したものか……だとしたらとんでもないモノを産み落としたなアタシら……
 キョーコを、お姫様抱っこしたまま逃げる
「どうするの?」
「手はあるけど……一旦スポーツセンターに戻るよ!!」
今のアタシらなら分かる……そこに根源がある事を……後ろからの追撃をキョーコが三角結界で防ぎ続ける。
「ありがとうキョーコ!」
「後ろは任せて!!」
一気にスポーツセンターまで駆け抜けた。呼吸が乱れていない、キョーコを抱えて走ったのに……今のアタシらになら消滅させられるかもしれない、根源を。
 焼け焦げたスポーツセンターの私の部屋まで降りていく。この先の空洞にそれはあった。空洞内に獣が天井を壊しながら降りてくる根源を護るために。
 私は神三角槍の石突きを捻って引っ張る、ガコンと音がして穂先が変形して。更に巨大な槍というより巨大な三角剣へと姿を変える。
「キョーコこれから獣と根源を消滅させる、最後まで見てて」
剣を構え神気を注ぐ、今の剣には全てを注いでも良いだろう。構える手にキョーコが手を添える。
「最後まで添い遂げるわよ」
獣が襲いかかるがこの剣の光の前では塵となり消滅する。根源が剥き出しになる。キョーコの手を優しく離す。
 剣が蒼く光り狙いを定め自身の身体に霊気を宿し宙に浮く
「まって!! 置いて行くの?」
「まさか! 帰るとこが無いと突撃出来ないじゃん」
獣が修復されつつ有る
「じゃあね! そう言う訳だから」

「行って来ます!」

蒼い光の矢となって獣と根源諸共穿いた。

 この力は人間が持つには、あまりにも危うい一歩間違えば呪いとなる。根源とは神気の結晶だった、通りで女神様が手を出せない筈だ。
 何時からここにあったのだろう? 私にも分からない、気が付いたときにはここに居て。この結晶に願った、五年かかって幽鬼共を作り出し。自分の身体をいつの日か取り返すと。
 だが簡単な事だった、私はアタシ何だって事を気付かなかった。随分と遠回りをしてしまった、でも今は渡辺茉希と言える。ねがいが叶った。
 
△ △ △
 
 さようなら結晶、アンタの存在は人間界では不要だ。願いの形は人それぞれ様々だ、『幸せと不幸』『希望と欲望』どれも叶えてしまったら駄目だ。良かろうが悪かろうが、人は自分で決めて。自分の足で夢を、ねがいを叶えるべきだろう。光の無い人生だとしても光を求めて歩き続けるべきだと思う……まぁ偉そうなこと言ったけど。取り敢えず、ちゃんと女神の元へ俺と還ろう……


◆ ◆ ◆

 ヤガミタケシの声が聴こえた様な気がした。目を開けると空洞の中心にいた。服はボロボロで槍は木っ端微塵になっている、身体に異常は無い様だ。キョーコが呼んでいる声がする、振り返ると走ってキョーコの元へと向かう。
「さっさと行こうか、アタシ服がボロボロでさ」
「そうね鷲尾さんに連絡して後始末をしてもらいましょう」
「オッサン大丈夫かなぁ」
「きっと平気よ、それよりもマキあなたの目どうしたの?」
「見えてるよ大丈夫」
「いや……そうじゃ……まぁ良いわ! 帰りましょう」
外に出ると野次馬や消防署に警察官まで集まってる。事情を知ってる警察官にガードされながら、バイクに跨がりその場を後にした。

「ただいま~」
「ただ今戻りました」
「お疲れ様二人共! あら……マキ貴女……上手く行ったのね?」
「結構ギリギリだったけどね」
ヤエが顔を覗き込む
「ちゃんと魂が一つになってるわね、でも鏡を見てご覧なさい」
そう言われて鏡を覗き込むと、瞳の色が左右で違う!!
「こっこれって治る?」
「治らないわよ、これで本当の渡辺茉希に戻ったって事でめでたしめでたしってね」
「い~や! まだだね、現場で見つけた根源あれは何だ?」

「それを聞くの?」
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