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『もうやめない?』
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「なぁこれで何度目だ?」
「十二回目ね」
「もうやめない? もう無理だって諦めよう? 俺さ何度も死にたくないんだけど……」
「駄目よ! きっと皆が幸せになれる道がある筈なのよ!」
「なら……自分達で何とかしろよ! 俺は、戻される度に記憶がリセットされて十二回も死んでるんだぞ!」
ここは時の止まった神の座の更に奥、二人の女神と俺が正座で話し込んでいる。
「お前ら神様だろ? 何で俺がこんなにも面倒くさい事しなきゃならないんだ?」
「あなたと私達は魂が繋がってるのよ? 小間使いにして何が悪いのよ!」
「じゃなくてお前等が過去に戻れよ! 俺を送り出すな!」
「出来たらとっくにやってるわよ! 『アノ時点』から以前とこれ迄の間の時間を往来が出来ないの!」
「お前がかけた『呪い』のせいだってのは理解してるよ。でも俺は満足して死んだんだ! それで良いじゃないか!」
「その後に色々拗れちゃったじゃないの!」
「お前等だって拗れてんじゃねーか!」
「私達は特別よ! 二人で一人の……」
「あ~もういい! でっ! どうすんだよ!」
「もう一度よ! あの時に『戻る』のよ、アンタならやれる。何度でも……」
「聞くのも嫌なんだけどさ……毎回毎回死んでるんだよね……具体策とかないの?」
「お前等さ神様だろ? 何か超越的な力って無いの? 少しは歴史に干渉するとかさ……」
「だからさっきから言ってるでしょう! あの時から私達には戻れないのよ!」
ん!?
「ちょっと待て! あの時からなら干渉できるのか?」
「無理ね、私が『呪い』となってしまっているから」
「じゃあさ、お前が『呪い』から切り離されてたら干渉できるのか? なら今すぐその時に干渉しろよ二人で」
「それが出来ればとっくにやってるわよ!」
いつも通りの言い合いだ……これ迄で合計十二回失敗している。その度に俺は『死んで』コイツらの神の座へとやって来る。何度でも『呪い』を解いても俺は死ぬ、それは別に良い。問題はその後だ『呪い』の残滓がどうしても残ってしまい、それは解決するのだが。どうしても全て後味の悪い? 人によっては良いのかもしれないが『結果』が残ってしまう。欲張りな神様は皆が幸せになれる『結果』になれる様に俺を送り込むが……その度に毎々それまでの記憶は失われてしまい、ほぼすべて同じ未来にしか到達しない。ゲームで言えばバッドエンドが俺が死んだ後に何度かあった。
「あのさぁ……確かに拗れたけど前回が一番まともじゃないか? 幸せなんて人それぞれ様々だよ?」
「だから俺も今『存在』してるんだし」
「まぁね、そこは認めるわよ」
「でもね、私達は欲張りなのよ……」
「仮に俺が生き残ったとしたら、それはそれで歴史が変わるだろ?」
「あぁそれなら大丈夫よ。アンタは解決させたらその時点で、存在そのものが現世から消える」
「酷くない!?」
「アンタはもう人間じゃないのよ?」
「忘れたの? 私達は神核まで繋がってるのよ、もうアンタを離すもんですか!」
「そうよ、アンタの自我が戻るまでどれだけ世話してやったと思ってるのよ!」
「結局人間としては既に消滅してるのかよ……まっ良いけどさ、未練も無いし……此処に戻れるなら」
「「でしょ! だから力を貸しなさい!」」
やっぱりコイツらには何を言っても無駄だろう。どうせ心は読まれてるしなぁ
「当たり前じゃない、有り難く思いなさい。三位一体何だから」
「そうなの?」
「私達は因果律を超えた者同士。そこまで繋がってるのよ! 例えて言うならば一つの魂の枠に私達三人がハマっているって事」
「じゃあ二人共俺のお嫁さんじゃないの?」
パッシーン
平手打ちをくらういつもの事だ。
「ふざけるんじゃないわよ!」
「言ってみただけなのに……」
「とにかく対策よ!」
「俺の記憶さえ飛ばなけりゃなぁ」
「そう、そこなのよ! おかしいのは! アンタには私達の加護がある筈なのよ」
「邪魔者がいるとか?」
「そんな気配があれば私が感知するでしょうね」
「まぁ……お前は寝てるしなあの時」
「ぐっ……」
う~んどうなんだろう? 運命って決まってる訳じゃない事は既に知っている。でも何かが引っかる、そもそもコイツらとは繋がっている神核までどっぷりと……
「なぁ俺達の繋がりって過去でも一緒なの?」
「さっき言ったでしょ因果律を超えて繋がっているって」
「いつもの事だと思ってたけど変だよな?」
「何がよ?」
「因果律とか難しいから割愛して、お前等とはあの時迄は繋がりってないよな?」
「今は違うわよ? もうアンタと私達は……」
「「あっ……もしかしたら!」」
「やっぱりアンタもう一度行きなさい!」
「過去に戻って私の産み出した『呪い』を祓って神核を同調させて!」
「それなら何度もやったじゃん」
「ちっがうわよ! 上手く同調させれば今の私達の神核はアンタと一体化しているの! 上手く行けば、その時と場所に行けるはず。状況は変わるわよ」
「過去のお前等はどうなるんだ?」
「同調した瞬間今の私達になるだけよ。だから今度は、アンタだけじゃない私達も一緒よ」
「でもさ肝心な俺の記憶が飛ぶんだよ? またお前等助けなきゃなの? って言うかまた最初っから?」
「そこは仕方ないわよでも安心して、同調した瞬間に私達は今アンタの目の前に居る女神として顕現するわ。『呪い』何て私達が消し飛ばす!」
「また最初っからかよ……んで同調の方法は?」
「オデコを合わせてくれれば神核が同調して顕現するはずよ!」
「じゃあ最後に記憶はどうするんだよ?」
「いつもより強めに行くわよ!!」
「何が!?」
「アンタは神気が使えるでしょうが! それで身を守りなさい」
「ちょっと待てよ! お前等まさか……」
「今回は超特急で過去へ送るわよ! 邪魔されないようにね!」
「今回は結晶も持って行きなさい! 最悪の場合、結晶に神気を込めれば防壁が張れるから!」
「いやちょっと待って!! そんないきあたりばったりはやめよう?」
「それでアンタは私達を救ったでしょうが! 覚悟決めなさい!!」
「「行くわよ!!」」
「ねぇちょっ……!」
二人の女神に背中を蹴られ、今迄にないスピードで堕ちていく。アイツら覚えてろよ!! 右手を前にかざし神気を集中させ結晶で防壁を作る、また最初っからかよ……考え込んでいると、過去へと戻る時空間の前方に呪力の壁の気配がする。不味いな結構強力だぞこれ、今までコイツのせいで記憶が? 神気を更に集中させると結晶が蒼く光る。後ろから声が聞こえてきた。
「「穿いて!!」」
身体が蒼い光の矢となり呪力の壁を突破する。時空間を超えてあの日へと遡っていく……
2021年
この年は、年初からいつもと違う違和感を感じていたんだっけ。ここ何年も雪が積もる事も少なくて、30センチ程度で大雪と騒がれていた程度の我が市だったのだが。正月三が日が過ぎた頃から1メートルから最大3メートルと言う災害級の大雪から始まった。
大雪程度と自分はそこまで気にしていなかったのだが、流石に降りすぎていて。住んでいるアパートを雪に潰される訳にはいかないから。屋根の上の雪降ろしを住人総出で終わらせたんだった。疲れ果て、部屋に戻り実家に安否確認をしようとスマホを取出し画面のロックを解除すると着信アリの表示があった。
「結局始まりはここからか……」
△ △ △
市役所は正月休み明けから大騒ぎであった、あまりにもの大雪による除雪の要請、倒壊しかねない建築物の報告、其れ等の喧騒を横に市長に呼ばれたため市長室に向かっていた。市長室には他にも何名かの来客者がおり、皆神妙な表情を浮かべていた。
「塚田君お疲れ様です、貴女に来て貰った理由の前に此方の方を紹介します。」
そう言うと渡辺市長は私に紹介した
「此方が郷土資料館館長、田辺さん」
「八幡神社宮司、杵淵さん」
「日枝神社宮司、土田さん」
私は困惑気味に挨拶を返した、全く私の仕事とは関係ない人達を紹介されたからである。そして更に困惑する事が告げられる。
『15年目の呪い』
と告げられた、私にはなんの事か全く理解できなかったと言うか。
「ふざけているんですか?」
そう言う他に言葉が出て来なかった。
しかし市長以外の3名は神妙な顔をこちらに向け、代表として郷土資料館館長田辺さんが口を開く
「至って真面目です、もともとこれは予測されていた事なのです」
「塚田さん貴女は五泉市が合併した年を覚えていますよね?」
「2006年だったかと記憶しておりますが」
「そうですそれから2021年つまり15年です」
「既に年明けからの異常なまでの五泉市での大雪これは始まりです」
「ですからそれと呪い何てものがどう関係するんですか」
「市町村合併により歪んだ土地神の力が衰えて来ていたのです。」
「土地神の力がしっかりと根付いて入れば様々な厄から護ってくださいます。しかし…」
そこまで聞いて横にいる二人の宮司を横目で見ると、顔色が悪い、何か嫌な予感がする。
「仮にですよ、仮にその話を真に受けたとしてですよ?」
そう言って私は続けた
「私はそう言う祭事ごと?と言うのは詳しくないのですが必要な事じゃないんですか」
「もともと合併前は村松町と五泉市、二人の神様がいた事になりますよね?だったらどっちかの神様が居なきゃおかしくありませんか?」
田辺さんは俯き二人の宮司を見ながら
「確かに村松町と五泉市二人の土地神様がいらっしゃいました」
「いました?」
「はい」
まさか聞かなければ良かったと思ったが既に遅かったようだった。
「今この市には土地神様はおりません」
「市町村合併後から年々と少しずつですが、その影響は出始め当時から数えて15年も土地神様が居なければ、その土地には厄が訪れましょう」
そこまで聞いて私は
「市長こんな話しを信じてるんですか?」
「子供騙しにも程があります、すみませんが部署に戻らせていただきます!」
「塚田君聞いてくれ、そしてその目で見てくれ」
市長は静かにそう言い私を市役所の隣にある五泉市中央病院へと連れて行き信じられないものを見せた。
▲ ▲ ▲
着信履歴があったのを確認する、雪降ろしで痛む腰を温めながら履歴を見る
【五泉市役所 塚田】
ほらきた……
まあ、無視は不味いよなぁ……市役所はやっている時間だったよなぁ、しょうがない電話するかと思いもう一度着信履歴を見た
【五泉市役所 塚田】
【五泉市役所 塚田】
【五泉市役所 塚田】
【五泉市役所 塚田】
【五泉市役所 塚田】
うん懐かしくて涙が出た、何でこんなに着信履歴あるの?
ヤバい大人しく慌てず早急に電話かけ直さないと大変な事になる。確かもう一回
【五泉市役所 塚田】
ほらきた、物凄い勢いで電話に出る
「もしもし五泉市役所の塚田ですがヤガミタケシさんですか?」
「電話に出られず申し訳ございませんでした!」
「実は私共の方からヤガミさんにお願いがありまして、明日市役所に来てください」
まぁ要件は分かっている、が一応聞いてみる。
「電話じゃ駄目なんですか?」
「はい……今日はもう閉庁ですので明日の朝、必ず来てください」
どうも何時もと調子が違う声だったよなぁこの時、何というか声が怖い
「わかりました歩いていくので時間掛かりますけど良いですか?」
「朝八時半開庁ですので」
「わかりました開庁時刻に伺います!」
「それでは失礼致します」
通話が終わった、やけに声が怖かった普段はもう少し優しいんだけど。お願いか……懐かしいな……まぁもう何十回も繰り返したのだろうが! 雪降ろしのせいで疲れていたこともあり、そのまま簡単な夕食を食べ熱い風呂に入りそのまま眠った。
△ △ △
電話が終わった、市長や郷土資料館館長そして宮司の二人と今後について話したのが正午。そこから人選を行い彼に決まった。やるやらないでは無い、やらせる拒否権は認めない。出なければ五泉市は厄に覆われる、既に始まっている大雪? そんなの大した事じゃないもっと最悪な事が起きる。
ヤガミタケシ、別に彼でなくても良い代わりはいくらでも居る、いや正確には彼がどんな事になったとしても代わりはいる。明日、彼は恐らく時間通りに来るだろう。告げる私が聞いたことを、馬鹿にするだろうだがならば見せる。今日私が見て恐怖した物を……
▲ ▲ ▲
一月二十八日
朝六時
寒い布団から出たくない、なのに目が覚めてしまう約束の時間に間に合わせる為には、一時間前に家を出ればいいか。
ストーブに火を付けコーヒーを飲みながらこれからの事を考える
ちょっと怖い声だった、確かこの時の塚田さんはもう……
外を見ると鈍色の空、雪は少しは降っているがこれなら余裕で歩いて行ける。どうせなら道中にある、久し振りの人間界でのすぎ家で朝食セット食べてから行こうか。俺は出掛ける仕度を整えた。
思ったより雪は積もっていなかった、道中朝食セットを食べてゆっくり歩いても余裕があった位だった。
午前八時二十分
10分前には到着していた、幸い市役所のホールはもう空いていた中に入り時間を潰そうとした所に彼女、塚田さんが来るのを分かっていたとばかりにその場にいた。
「おはようございます」
「おはようございます」
挨拶を交わす、この五年後塚田さんが、あんな事やこんな事に……違う意味で泣きそうになる。今度こそ皆を幸せにする覚悟を決めた!
「塚田さん、昨日のことなんですけど何ですかお願いって?」
まどろっこしいのは面倒くさい一応要件は聞いておく
「こちらへ」
後に付いてくるように促される
「いつもの場所じゃないんですか?」
「こちらへ」
小会議室と思われる場所に案内された。
塚田さんは開口一番
「あなたは神を信じますか?」
声には出さなかったが。信じてますよ皆の幸せを願う優しい女神達をね。
「十二回目ね」
「もうやめない? もう無理だって諦めよう? 俺さ何度も死にたくないんだけど……」
「駄目よ! きっと皆が幸せになれる道がある筈なのよ!」
「なら……自分達で何とかしろよ! 俺は、戻される度に記憶がリセットされて十二回も死んでるんだぞ!」
ここは時の止まった神の座の更に奥、二人の女神と俺が正座で話し込んでいる。
「お前ら神様だろ? 何で俺がこんなにも面倒くさい事しなきゃならないんだ?」
「あなたと私達は魂が繋がってるのよ? 小間使いにして何が悪いのよ!」
「じゃなくてお前等が過去に戻れよ! 俺を送り出すな!」
「出来たらとっくにやってるわよ! 『アノ時点』から以前とこれ迄の間の時間を往来が出来ないの!」
「お前がかけた『呪い』のせいだってのは理解してるよ。でも俺は満足して死んだんだ! それで良いじゃないか!」
「その後に色々拗れちゃったじゃないの!」
「お前等だって拗れてんじゃねーか!」
「私達は特別よ! 二人で一人の……」
「あ~もういい! でっ! どうすんだよ!」
「もう一度よ! あの時に『戻る』のよ、アンタならやれる。何度でも……」
「聞くのも嫌なんだけどさ……毎回毎回死んでるんだよね……具体策とかないの?」
「お前等さ神様だろ? 何か超越的な力って無いの? 少しは歴史に干渉するとかさ……」
「だからさっきから言ってるでしょう! あの時から私達には戻れないのよ!」
ん!?
「ちょっと待て! あの時からなら干渉できるのか?」
「無理ね、私が『呪い』となってしまっているから」
「じゃあさ、お前が『呪い』から切り離されてたら干渉できるのか? なら今すぐその時に干渉しろよ二人で」
「それが出来ればとっくにやってるわよ!」
いつも通りの言い合いだ……これ迄で合計十二回失敗している。その度に俺は『死んで』コイツらの神の座へとやって来る。何度でも『呪い』を解いても俺は死ぬ、それは別に良い。問題はその後だ『呪い』の残滓がどうしても残ってしまい、それは解決するのだが。どうしても全て後味の悪い? 人によっては良いのかもしれないが『結果』が残ってしまう。欲張りな神様は皆が幸せになれる『結果』になれる様に俺を送り込むが……その度に毎々それまでの記憶は失われてしまい、ほぼすべて同じ未来にしか到達しない。ゲームで言えばバッドエンドが俺が死んだ後に何度かあった。
「あのさぁ……確かに拗れたけど前回が一番まともじゃないか? 幸せなんて人それぞれ様々だよ?」
「だから俺も今『存在』してるんだし」
「まぁね、そこは認めるわよ」
「でもね、私達は欲張りなのよ……」
「仮に俺が生き残ったとしたら、それはそれで歴史が変わるだろ?」
「あぁそれなら大丈夫よ。アンタは解決させたらその時点で、存在そのものが現世から消える」
「酷くない!?」
「アンタはもう人間じゃないのよ?」
「忘れたの? 私達は神核まで繋がってるのよ、もうアンタを離すもんですか!」
「そうよ、アンタの自我が戻るまでどれだけ世話してやったと思ってるのよ!」
「結局人間としては既に消滅してるのかよ……まっ良いけどさ、未練も無いし……此処に戻れるなら」
「「でしょ! だから力を貸しなさい!」」
やっぱりコイツらには何を言っても無駄だろう。どうせ心は読まれてるしなぁ
「当たり前じゃない、有り難く思いなさい。三位一体何だから」
「そうなの?」
「私達は因果律を超えた者同士。そこまで繋がってるのよ! 例えて言うならば一つの魂の枠に私達三人がハマっているって事」
「じゃあ二人共俺のお嫁さんじゃないの?」
パッシーン
平手打ちをくらういつもの事だ。
「ふざけるんじゃないわよ!」
「言ってみただけなのに……」
「とにかく対策よ!」
「俺の記憶さえ飛ばなけりゃなぁ」
「そう、そこなのよ! おかしいのは! アンタには私達の加護がある筈なのよ」
「邪魔者がいるとか?」
「そんな気配があれば私が感知するでしょうね」
「まぁ……お前は寝てるしなあの時」
「ぐっ……」
う~んどうなんだろう? 運命って決まってる訳じゃない事は既に知っている。でも何かが引っかる、そもそもコイツらとは繋がっている神核までどっぷりと……
「なぁ俺達の繋がりって過去でも一緒なの?」
「さっき言ったでしょ因果律を超えて繋がっているって」
「いつもの事だと思ってたけど変だよな?」
「何がよ?」
「因果律とか難しいから割愛して、お前等とはあの時迄は繋がりってないよな?」
「今は違うわよ? もうアンタと私達は……」
「「あっ……もしかしたら!」」
「やっぱりアンタもう一度行きなさい!」
「過去に戻って私の産み出した『呪い』を祓って神核を同調させて!」
「それなら何度もやったじゃん」
「ちっがうわよ! 上手く同調させれば今の私達の神核はアンタと一体化しているの! 上手く行けば、その時と場所に行けるはず。状況は変わるわよ」
「過去のお前等はどうなるんだ?」
「同調した瞬間今の私達になるだけよ。だから今度は、アンタだけじゃない私達も一緒よ」
「でもさ肝心な俺の記憶が飛ぶんだよ? またお前等助けなきゃなの? って言うかまた最初っから?」
「そこは仕方ないわよでも安心して、同調した瞬間に私達は今アンタの目の前に居る女神として顕現するわ。『呪い』何て私達が消し飛ばす!」
「また最初っからかよ……んで同調の方法は?」
「オデコを合わせてくれれば神核が同調して顕現するはずよ!」
「じゃあ最後に記憶はどうするんだよ?」
「いつもより強めに行くわよ!!」
「何が!?」
「アンタは神気が使えるでしょうが! それで身を守りなさい」
「ちょっと待てよ! お前等まさか……」
「今回は超特急で過去へ送るわよ! 邪魔されないようにね!」
「今回は結晶も持って行きなさい! 最悪の場合、結晶に神気を込めれば防壁が張れるから!」
「いやちょっと待って!! そんないきあたりばったりはやめよう?」
「それでアンタは私達を救ったでしょうが! 覚悟決めなさい!!」
「「行くわよ!!」」
「ねぇちょっ……!」
二人の女神に背中を蹴られ、今迄にないスピードで堕ちていく。アイツら覚えてろよ!! 右手を前にかざし神気を集中させ結晶で防壁を作る、また最初っからかよ……考え込んでいると、過去へと戻る時空間の前方に呪力の壁の気配がする。不味いな結構強力だぞこれ、今までコイツのせいで記憶が? 神気を更に集中させると結晶が蒼く光る。後ろから声が聞こえてきた。
「「穿いて!!」」
身体が蒼い光の矢となり呪力の壁を突破する。時空間を超えてあの日へと遡っていく……
2021年
この年は、年初からいつもと違う違和感を感じていたんだっけ。ここ何年も雪が積もる事も少なくて、30センチ程度で大雪と騒がれていた程度の我が市だったのだが。正月三が日が過ぎた頃から1メートルから最大3メートルと言う災害級の大雪から始まった。
大雪程度と自分はそこまで気にしていなかったのだが、流石に降りすぎていて。住んでいるアパートを雪に潰される訳にはいかないから。屋根の上の雪降ろしを住人総出で終わらせたんだった。疲れ果て、部屋に戻り実家に安否確認をしようとスマホを取出し画面のロックを解除すると着信アリの表示があった。
「結局始まりはここからか……」
△ △ △
市役所は正月休み明けから大騒ぎであった、あまりにもの大雪による除雪の要請、倒壊しかねない建築物の報告、其れ等の喧騒を横に市長に呼ばれたため市長室に向かっていた。市長室には他にも何名かの来客者がおり、皆神妙な表情を浮かべていた。
「塚田君お疲れ様です、貴女に来て貰った理由の前に此方の方を紹介します。」
そう言うと渡辺市長は私に紹介した
「此方が郷土資料館館長、田辺さん」
「八幡神社宮司、杵淵さん」
「日枝神社宮司、土田さん」
私は困惑気味に挨拶を返した、全く私の仕事とは関係ない人達を紹介されたからである。そして更に困惑する事が告げられる。
『15年目の呪い』
と告げられた、私にはなんの事か全く理解できなかったと言うか。
「ふざけているんですか?」
そう言う他に言葉が出て来なかった。
しかし市長以外の3名は神妙な顔をこちらに向け、代表として郷土資料館館長田辺さんが口を開く
「至って真面目です、もともとこれは予測されていた事なのです」
「塚田さん貴女は五泉市が合併した年を覚えていますよね?」
「2006年だったかと記憶しておりますが」
「そうですそれから2021年つまり15年です」
「既に年明けからの異常なまでの五泉市での大雪これは始まりです」
「ですからそれと呪い何てものがどう関係するんですか」
「市町村合併により歪んだ土地神の力が衰えて来ていたのです。」
「土地神の力がしっかりと根付いて入れば様々な厄から護ってくださいます。しかし…」
そこまで聞いて横にいる二人の宮司を横目で見ると、顔色が悪い、何か嫌な予感がする。
「仮にですよ、仮にその話を真に受けたとしてですよ?」
そう言って私は続けた
「私はそう言う祭事ごと?と言うのは詳しくないのですが必要な事じゃないんですか」
「もともと合併前は村松町と五泉市、二人の神様がいた事になりますよね?だったらどっちかの神様が居なきゃおかしくありませんか?」
田辺さんは俯き二人の宮司を見ながら
「確かに村松町と五泉市二人の土地神様がいらっしゃいました」
「いました?」
「はい」
まさか聞かなければ良かったと思ったが既に遅かったようだった。
「今この市には土地神様はおりません」
「市町村合併後から年々と少しずつですが、その影響は出始め当時から数えて15年も土地神様が居なければ、その土地には厄が訪れましょう」
そこまで聞いて私は
「市長こんな話しを信じてるんですか?」
「子供騙しにも程があります、すみませんが部署に戻らせていただきます!」
「塚田君聞いてくれ、そしてその目で見てくれ」
市長は静かにそう言い私を市役所の隣にある五泉市中央病院へと連れて行き信じられないものを見せた。
▲ ▲ ▲
着信履歴があったのを確認する、雪降ろしで痛む腰を温めながら履歴を見る
【五泉市役所 塚田】
ほらきた……
まあ、無視は不味いよなぁ……市役所はやっている時間だったよなぁ、しょうがない電話するかと思いもう一度着信履歴を見た
【五泉市役所 塚田】
【五泉市役所 塚田】
【五泉市役所 塚田】
【五泉市役所 塚田】
【五泉市役所 塚田】
うん懐かしくて涙が出た、何でこんなに着信履歴あるの?
ヤバい大人しく慌てず早急に電話かけ直さないと大変な事になる。確かもう一回
【五泉市役所 塚田】
ほらきた、物凄い勢いで電話に出る
「もしもし五泉市役所の塚田ですがヤガミタケシさんですか?」
「電話に出られず申し訳ございませんでした!」
「実は私共の方からヤガミさんにお願いがありまして、明日市役所に来てください」
まぁ要件は分かっている、が一応聞いてみる。
「電話じゃ駄目なんですか?」
「はい……今日はもう閉庁ですので明日の朝、必ず来てください」
どうも何時もと調子が違う声だったよなぁこの時、何というか声が怖い
「わかりました歩いていくので時間掛かりますけど良いですか?」
「朝八時半開庁ですので」
「わかりました開庁時刻に伺います!」
「それでは失礼致します」
通話が終わった、やけに声が怖かった普段はもう少し優しいんだけど。お願いか……懐かしいな……まぁもう何十回も繰り返したのだろうが! 雪降ろしのせいで疲れていたこともあり、そのまま簡単な夕食を食べ熱い風呂に入りそのまま眠った。
△ △ △
電話が終わった、市長や郷土資料館館長そして宮司の二人と今後について話したのが正午。そこから人選を行い彼に決まった。やるやらないでは無い、やらせる拒否権は認めない。出なければ五泉市は厄に覆われる、既に始まっている大雪? そんなの大した事じゃないもっと最悪な事が起きる。
ヤガミタケシ、別に彼でなくても良い代わりはいくらでも居る、いや正確には彼がどんな事になったとしても代わりはいる。明日、彼は恐らく時間通りに来るだろう。告げる私が聞いたことを、馬鹿にするだろうだがならば見せる。今日私が見て恐怖した物を……
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一月二十八日
朝六時
寒い布団から出たくない、なのに目が覚めてしまう約束の時間に間に合わせる為には、一時間前に家を出ればいいか。
ストーブに火を付けコーヒーを飲みながらこれからの事を考える
ちょっと怖い声だった、確かこの時の塚田さんはもう……
外を見ると鈍色の空、雪は少しは降っているがこれなら余裕で歩いて行ける。どうせなら道中にある、久し振りの人間界でのすぎ家で朝食セット食べてから行こうか。俺は出掛ける仕度を整えた。
思ったより雪は積もっていなかった、道中朝食セットを食べてゆっくり歩いても余裕があった位だった。
午前八時二十分
10分前には到着していた、幸い市役所のホールはもう空いていた中に入り時間を潰そうとした所に彼女、塚田さんが来るのを分かっていたとばかりにその場にいた。
「おはようございます」
「おはようございます」
挨拶を交わす、この五年後塚田さんが、あんな事やこんな事に……違う意味で泣きそうになる。今度こそ皆を幸せにする覚悟を決めた!
「塚田さん、昨日のことなんですけど何ですかお願いって?」
まどろっこしいのは面倒くさい一応要件は聞いておく
「こちらへ」
後に付いてくるように促される
「いつもの場所じゃないんですか?」
「こちらへ」
小会議室と思われる場所に案内された。
塚田さんは開口一番
「あなたは神を信じますか?」
声には出さなかったが。信じてますよ皆の幸せを願う優しい女神達をね。
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ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
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