完全幸福論

序章～愛する我が家に帰ってきました～

８

ガックリと項垂れたジオにルナは呆れたように笑う。

「ジオったら気が早いわ。幾らアルバでもあと５年は待たないと」
「ちょっと待ってください姫様！私たちはそんなに早くあの子をお嫁に出す気なんてありませんよ！？5年ってステラはまだ１５だし、アルバ様だって１７！！
　ていうかもうアルバ様に嫁ぐの決定なんですか！？」
「そうだぞ！まだ早い!つかステラはどこにも嫁になんてやらねぇ！！
だいたい姫だってセイラがそんなに早く嫁に行くなんて言い出したら嫌だろ！？」
「イヤもなにも、セイラはねぇ……？
　お嫁にやるのが嫌というより、私もノクトも貰ってくれる人が心配やら申し訳ないやらで……！！」
「「……あぁ。それは確かに……」」

まったくまだ１０の子にお嫁にやるやらないだなんて大げさだなぁ。
ジオもニナもすっかり親バカなんだから。
なんて呑気に見ていたリヒトはセイラの話になったとたんルナの口からポロリと零れた言葉にぎょっとして声をあげた。
思わず納得してしまったジオ達にも非難の眼差しを向けてしまう。

「ちょ、姉ちゃんんん！？ジオとニナもなんてこと言うの！？
　セイラはいい子だよ！
　そりゃちょっと気が強いところもあるけど、でも素直で優しくて可愛い自慢の妹だよ！！」
「「「……」」」

どうやら本気でそう思っているらしいリヒトに3人は若干遠い目をしながら黙りこんだ。

ちょっと気が強い？
ボスに真正面から喧嘩ふっかけられる度胸と根性の持ち主がちょっと気が強いだけ？？
可愛くて素直？
それはリヒトの前だけだ。
自分たちには反抗期真っ盛り、むしろ反抗期じゃなかった時が思い出せない。

「え？なんで黙るの！？」
「……そりゃお前の前限定の姿だからだ」

はぁ。という溜息とともに零された言葉にリヒトは慌てて振り向く。

「ボス！！」
「あのクソガキはじゃじゃ馬どころか暴れ馬だぞ。嫁の貰い手なんて早々見つからるかよ」
「パパ、それどういう意味？（というか兄様の前で変なこと言わないで！！）」
「そのツラのどこが可愛いんだよ。鏡見ろ鏡」
「～～～～っ！！」
「ちょ、ボス！？セイラは可愛いよ！すっごく！！
　ね？アルバ！ステラ！」
「……うん。（兄さんの前限定で）可愛い（と思えないこともない気もする）」
「ふぇ？はい！
　セイラ様はリヒト兄様の前では別人のようにお可愛らしくていらっしゃいます！」

なんか色々含まれてたような……。
というか俺の前だけ？別人ってなに？

「……と、とにかく！！セイラは可愛いよ！！」

いろいろ疑問に思うことはあるけれどリヒトはふるふると震えながらノクトを睨みつけるセイラの為に頑張った。