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第3章~あなたの愛に完全幸福します~
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しおりを挟むハプニングを乗り越えて辿りついた王宮にリヒトはすっと目を細める。
そこにはもう家族へと向けられた温かさも優しさもない。
ただ穏やかな好青年に見える仮面を付けた夜闇侯爵の養い子が立っている。
「リヒト殿ですか?」
「はい」
「謁見の間にご案内致します」
リヒトはそう言って恭しく頭を下げた男に黙って付いて行く。
さて、こんなトンデモナイ我が侭を押し通した王女殿下というのは如何ほどの人物だろうかと聞かされた情報を頭の中で繰り返す。
リヒトが王女の家庭教師として招集されたと分かった時に彼女のおおよそのプロフィールは聞かされていた。
情報は大事だ。
話を聞く限り、集められた情報を見る限り、彼女の父王よりは器量よしだと思う。
だから、引き受けた。
自分が動くことで少しでも父の負担が、時期当主になる妹の負担が減ればいいと思ったから。
たとえそこにどんな意図が隠されてあったにせよ今の自分には大切な家族の迷惑にならないように対処できる。
それだけの力はつけてきた。
だから、気になっていることを片付けるついでに家庭教師くらいならと引き受けた。
もっというなら双子の弟妹と同じ年頃の王女が自分を名指しで家庭教師に望んだ理由も知りたかった。
王女と自分は面識などないのだから。
「―――リヒト殿がお見えになりました」
「リヒト様……!!」
入室の案内を遮るようにあげられた声にリヒトは妙な既視感に襲われた。
誰かの声を遮って嬉しそうに自分を呼ぶ声……。
「リヒト様……??」
「え、あぁ、申し訳ありません。」
心配そうに自分を呼ぶ声で我に帰ったリヒトは少女を見て目を見開いた。
あれ?この人確かジェロの従妹で婚約者じゃ……。
けれど何度見ても彼女の頭にはティアラが輝いている。
少女の振る舞いを窘めていたものたちの諦めた顔をみるとどうにもこの少女が自分を呼び付けた本人らしい。
「……なんで俺……?」
だったらなおのことリヒトに家庭教師を頼まなくてもジェロージアにさせればいい。
なにせ従妹で婚約者なのだから。
お忍びでパーティーに紛れこむのを手伝ってやるくらいなのだから仲だって悪くないだろう。
「お久しぶりです、リヒト様。
またお会いできて嬉しい……!!」
そんなリヒトの疑問も頬を染めながら蕩けるような笑みを浮かべている少女には届かないらしい。
説明を請うように玉座に視線を移すも、少女の父親である今生帝は「では頼んだぞ」などといって彼女をリヒトに押し付けてさっさと去って行った。
ふざけるな。
心の中でそう吐き捨てながらリヒトは頬を引き攣らせなんとか笑みを浮かべた。
早くも気になっていた事の答えを得てしまった気がした。
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