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第3章~あなたの愛に完全幸福します~
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しおりを挟むついでにノクトからの手紙を破かれた鬱憤を晴らすつもりで訪れた鍛錬場には予想以上に人が集まっていた。
聞くところによるとこんなふざけたやつではあるものの騎士団の中では実力者として扱われているらしく、そんなジェロが強いと太鼓判を押した自分の実力見たさに集まって来たらしい。
ノクトの養い子だからという興味もあるようだ。
「……嫌がらせとしか思えない。お前本当に俺のこと気にいってるわけ?」
「モチロン。お前は1番のお気に入りだぜ。
だからどんな手を使ってでもここに残ってもらう」
そう軽口を叩くジェロージアに溜息を吐いて剣を構える。
ざわつく空気が静まり返ってどこかから固唾を呑む音が聞こえた気がした。
キィインと鍛練用の剣とは思えない激しい音を立てて剣と剣が交差する。
それでもお互いにまだ小手調べの状態だった。
2合3合と見ている方が疲れるような打ちあいが続く。
先に仕掛けたのはジェロージアだった。
リヒトは打ちこまれた剣をするりと受け流し反撃に出るが阻まれる。まるで模範演技の様な見事な攻防が繰り広げられた。
「お前、こんなに、強かったっけ??」
ガキンと迫りくる剣を弾いてリヒトが薄らと笑う。
まだまだ余裕が見えるリヒトにジェロージアは顔を顰めた。
久しぶりに本気を出してみてもこれだ。
「なに?お前の中じゃ、俺は、そんなに弱かったわけ?」
ニッと笑うリヒトに普段の穏やかさは見えない。
学生時代には見せなかった勝負を楽しんでいる獣のような目にゾクリと背が粟立った。
「さぁね。だけど、流石は期待の新人騎士殿ってとこじゃない?」
遊びはおしまいとばかりに弾き飛ばされた自分の剣と喉元に突きつけられたリヒトの剣。
降参と両手をあげながら弾んだ息を整えた。
チラリと見た鍛錬場の端には興味深々の目でリヒトを見つめる騎士団の団長の姿。
ジェロージアはそっと口の端を釣り上げた。
その笑みに気付いたリヒトは訝しげに眉を寄せてジェロージアの視線を辿り、その先から注がれる熱い視線に頬を引き攣らせた。
やられた。ストレス発散に来たはずなのに、またストレスの原因を自分で作ってしまった。
「やっぱり強いな」
「俺の剣はボスをお守りする為にあるからね。他で使うつもりはないよ」
白々しいことを言うジェロージアににっこりと笑って答える。
牽制の意味を込めて熱い視線のもとである壮年の男に視線を向けると残念そうに肩を落とされた。流石に夜の闇を敵に回す気はないらしい。
ジェロージアから小さな舌打ちが漏れる。リヒトはそれを鼻で笑ってさっさと鍛錬場を後にした。
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