完全幸福論

のどか

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~番外編~

睡蓮の懺悔

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闇色のコートを身にまとい現れた死神は静かな声で私を断罪した


『私だけは絶対に貴女を許さない』



彼女の最愛を傷つけ、ひとり楽になろうとする私を他の誰が―――優しい彼が許しても自分だけは許さないと銃口を突き付け彼女はそう言った。
お義父様、私のダイキライなお義父様。
あなたの言うとおり、私は悪い子です。



『――――まだ、もうすこし、こうしていたいんだ』



彼が来るのを期待して。否、必ず彼が来るのを知っていて。
銃を下げた死神が背をひるがえすのを見送りながら。
彼女の最愛が、私の待ち人がきたことを喜んだ。

ごめんなさい。
私は君の為に生きられないから、きみも私の為には生きられないから。
だからせめて、私は君の為に死にたいのです。
そしてどうか、この傷痕が一生消えることのないように。
穢れた私は残酷にそう願うのです。



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