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~番外編~
魔のお茶会にようこそ!
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魔のお茶会。2月14日に開かれるそのお茶会への参加権を寄宿舎から戻ったがためだけに見事獲得してしまったリヒトは懐かしさ半分諦め半分でノクトの執務室のソファに腰掛けていた。
「ねぇ、ボス、今年はどんなのが出てくるのかなぁ」
「………ステラがいるんだ。食えねぇもんはでてこねぇだろう」
そーだね。そうだといいな。
と遠い目をするリヒトにノクトは何も言えなかった。心境は全く同じだからだ。
まだ10になったばかりの少女に自分たちの未来を託すしかない情けなさ。
キッチンから響く破壊音と悲鳴と涙交じりの声。
涙声で必死に何かを叫んでいるステラに申訳ない気持ちになりつつ、少しでも食べられるものをお願いします!!と必死に祈るばかりだ。
「つーか、リヒト。お前は去年までこのお茶会に参加してねぇだろうが」
まぁ、そのおかげでちい姫からの被害がなかったんだけどな。
リヒト一筋のセイラは、兄様に食べてもらえないのにどうして私が作らなきゃならないの?パパとジオになんて市販のお菓子で十分よ!と宣った。
もちろんノクトとジオは手放しで喜んだ。
毎年恒例のルナが作り出す物体Xの処理だけで済むからだ。
その後にはニナの可哀想な見た目の普通のクッキーとステラの美味しいお菓子が待っている。
ルナに付き合わされるニナには悪いがセイラがキッチンに立たないだけで自分たちの負担はぐんと減る。
リヒトは寄宿舎に入っていたためにその物体Xの処理さえしていなかったはずだ。
「何言ってるの?ちゃんと毎年送られてきたよ。姉ちゃんからもニナからも」
「「……悪かった」」
少しでも魔のお茶会に参加していなかったリヒトを羨ましく思った自分を恥じたノクトとジオにリヒトは小さく息を吐く。
「というかアルバは?」
「!!あのクソガキ自分だけ逃げやがったな」
「ボス、仕方ねぇよ。坊だって自分の命が大事だって」
「失礼な。逃げるなら兄さんを連れて逃げるよ」
どこからともなく聞こえた声にあたりを見回せばげっそりしたアルバが扉の向こうに立っていた。
「お茶会、準備できたから来いってさ」
その一言に重たい腰を上げた。
満身創痍のニナと力なく笑うステラとは反対にやりきったという顔をするルナと期待に瞳を輝かせるセイラにノクトとリヒト、アルバは心底ニナとステラに申訳なくなった。
悪いな。
ごめん、ニナ、ステラ。
……ごめん。ふたりとも。
目で詫びる親子にニナは力なく頷き返し、ステラも苦笑いで答える。
そんなことにも気づかずにルナとセイラは小麦粉やら生地やらチョコレートやらを纏ったままの顔で早く食べてとキラキラした瞳を三人に向けた。
ジオは疲れ切った嫁と娘を労いながらその様子を見守っている(避難している)。
今年の作品はどうやらガトーショコラとトリュフのようだ。
まだ食べやすそうなトリュフにそれぞれが手を伸ばし、口に運ぶ。
ガキッ
決して食べ物を口に入れ、噛んだ瞬間に出る音ではない音があたりに響き渡った。
「……石?」
そう呟いたアルバの頭を涙目のセイラがスパーンと叩く。
「そんなわけないでしょ!!!ちゃんとチョコよ!トリュフよ!!!」
「見た目はな」
そう付け加えたノクトは食べることを早々に放棄した。
「だ、大丈夫だよ、セイラ。ちゃんと溶けてくるし、おいしいよ」
「にいさまぁああああ」
うわぁああああんとリヒトの腹にしがみつくセイラの頭を撫でつつ、リヒトはなかなか口の中で溶けてくれないトリュフに眉を下げた。味は悪くない。ただ固すぎるだけで。
リヒトがトリュフにかかりっきりになっている間にノクトたちはガトーショコラに手を伸ばした。
「ガトーショコラに対する冒涜だ!!!」
「思っても口に出すな」
「どーゆー意味よ!!!」
摩訶不思議な味がするそれに思わずこぼれた本音をノクトに咎められる。けれどそんな反応を期待していたわけじゃないルナはもちろん旦那様と息子をキッと睨みつける。
自分だってリヒトみたいな反応をしてほしかった。
ちょっと味が可笑しくてもおいしいよ!って言うとこなんじゃないの!?と睨むルナの口にノクトは切り分けたガトーショコラもどきを突っ込む。
「………ごめんなさい」
「母さんさ、毎回言ってると思うけど、ひとに食べさせる前にまず味見しようよ」
心底呆れたアルバの声にルナはしゅーんとうつむく。
「褒めてほしけりゃもっと練習するんだな」
「げっ」
本気で嫌そうな顔をするアルバに気付かずにルナはノクトに飛びついた。
どんなものを出しても食べてくれて、どんなものを作っても、もうキッチンに立つなとは言わない旦那様。
うわーんと飛びついてきたルナの頭をよしよしと撫でながらノクトは今年も無事に魔のお茶会が幕を閉じたことに安堵の息を漏らした。
ようこそ魔のお茶会へ!!
(さ、ジオたちも召し上がれ?)
((遠慮します。辞退します。ステラ!部屋に戻るぞ!!))
(父様、母様……!姫様ごめんなさい!)
++++++
ブログで参加させていただいた上花企画参加作品です。
「ねぇ、ボス、今年はどんなのが出てくるのかなぁ」
「………ステラがいるんだ。食えねぇもんはでてこねぇだろう」
そーだね。そうだといいな。
と遠い目をするリヒトにノクトは何も言えなかった。心境は全く同じだからだ。
まだ10になったばかりの少女に自分たちの未来を託すしかない情けなさ。
キッチンから響く破壊音と悲鳴と涙交じりの声。
涙声で必死に何かを叫んでいるステラに申訳ない気持ちになりつつ、少しでも食べられるものをお願いします!!と必死に祈るばかりだ。
「つーか、リヒト。お前は去年までこのお茶会に参加してねぇだろうが」
まぁ、そのおかげでちい姫からの被害がなかったんだけどな。
リヒト一筋のセイラは、兄様に食べてもらえないのにどうして私が作らなきゃならないの?パパとジオになんて市販のお菓子で十分よ!と宣った。
もちろんノクトとジオは手放しで喜んだ。
毎年恒例のルナが作り出す物体Xの処理だけで済むからだ。
その後にはニナの可哀想な見た目の普通のクッキーとステラの美味しいお菓子が待っている。
ルナに付き合わされるニナには悪いがセイラがキッチンに立たないだけで自分たちの負担はぐんと減る。
リヒトは寄宿舎に入っていたためにその物体Xの処理さえしていなかったはずだ。
「何言ってるの?ちゃんと毎年送られてきたよ。姉ちゃんからもニナからも」
「「……悪かった」」
少しでも魔のお茶会に参加していなかったリヒトを羨ましく思った自分を恥じたノクトとジオにリヒトは小さく息を吐く。
「というかアルバは?」
「!!あのクソガキ自分だけ逃げやがったな」
「ボス、仕方ねぇよ。坊だって自分の命が大事だって」
「失礼な。逃げるなら兄さんを連れて逃げるよ」
どこからともなく聞こえた声にあたりを見回せばげっそりしたアルバが扉の向こうに立っていた。
「お茶会、準備できたから来いってさ」
その一言に重たい腰を上げた。
満身創痍のニナと力なく笑うステラとは反対にやりきったという顔をするルナと期待に瞳を輝かせるセイラにノクトとリヒト、アルバは心底ニナとステラに申訳なくなった。
悪いな。
ごめん、ニナ、ステラ。
……ごめん。ふたりとも。
目で詫びる親子にニナは力なく頷き返し、ステラも苦笑いで答える。
そんなことにも気づかずにルナとセイラは小麦粉やら生地やらチョコレートやらを纏ったままの顔で早く食べてとキラキラした瞳を三人に向けた。
ジオは疲れ切った嫁と娘を労いながらその様子を見守っている(避難している)。
今年の作品はどうやらガトーショコラとトリュフのようだ。
まだ食べやすそうなトリュフにそれぞれが手を伸ばし、口に運ぶ。
ガキッ
決して食べ物を口に入れ、噛んだ瞬間に出る音ではない音があたりに響き渡った。
「……石?」
そう呟いたアルバの頭を涙目のセイラがスパーンと叩く。
「そんなわけないでしょ!!!ちゃんとチョコよ!トリュフよ!!!」
「見た目はな」
そう付け加えたノクトは食べることを早々に放棄した。
「だ、大丈夫だよ、セイラ。ちゃんと溶けてくるし、おいしいよ」
「にいさまぁああああ」
うわぁああああんとリヒトの腹にしがみつくセイラの頭を撫でつつ、リヒトはなかなか口の中で溶けてくれないトリュフに眉を下げた。味は悪くない。ただ固すぎるだけで。
リヒトがトリュフにかかりっきりになっている間にノクトたちはガトーショコラに手を伸ばした。
「ガトーショコラに対する冒涜だ!!!」
「思っても口に出すな」
「どーゆー意味よ!!!」
摩訶不思議な味がするそれに思わずこぼれた本音をノクトに咎められる。けれどそんな反応を期待していたわけじゃないルナはもちろん旦那様と息子をキッと睨みつける。
自分だってリヒトみたいな反応をしてほしかった。
ちょっと味が可笑しくてもおいしいよ!って言うとこなんじゃないの!?と睨むルナの口にノクトは切り分けたガトーショコラもどきを突っ込む。
「………ごめんなさい」
「母さんさ、毎回言ってると思うけど、ひとに食べさせる前にまず味見しようよ」
心底呆れたアルバの声にルナはしゅーんとうつむく。
「褒めてほしけりゃもっと練習するんだな」
「げっ」
本気で嫌そうな顔をするアルバに気付かずにルナはノクトに飛びついた。
どんなものを出しても食べてくれて、どんなものを作っても、もうキッチンに立つなとは言わない旦那様。
うわーんと飛びついてきたルナの頭をよしよしと撫でながらノクトは今年も無事に魔のお茶会が幕を閉じたことに安堵の息を漏らした。
ようこそ魔のお茶会へ!!
(さ、ジオたちも召し上がれ?)
((遠慮します。辞退します。ステラ!部屋に戻るぞ!!))
(父様、母様……!姫様ごめんなさい!)
++++++
ブログで参加させていただいた上花企画参加作品です。
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