不遇から始まる逆転人生 ~無能スキル【霊降ろし】が覚醒して、【神降ろし】になりました。神の力で無双する~

長谷川 心

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第一章 底辺からの脱却編

第2話 女神レスティアに出会う

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「……ん。ここは、どこだ……?」

 俺は目を覚ました。だんだんと視界が開かれ、死んだはずの迷宮内にいることが分かる。
 うそ、変な幻覚か……? 辺りを見渡しても、何も見えない。ミノタウロスもいない。

「おいおい、どうなってるんだ? あの世って感じじゃないし……」

 まだ何がどうなっているのか分からない俺は、自分の手足をペタペタと触り確かめる。
 ちゃんと実体はある……。一体何が……?

 すると、突然俺の頭に女の声が流れてきた。

『はーー、やっと起きた……。目覚めないかと思って心配したよ』

「……誰?」

 俺は誰か喋っていると思い、周囲をじっと観察するが……誰もいない。それは分かり切っていることなのだが。
 女は俺に構うことなく、話を続ける。

『誰とは失礼な! 私こそが女神レスティアである! 敬ってもいいのだぞ……?』

 やや傲慢な態度の女神のようだ。

「……え? 女神レスティア……聞いたことがないな」

 俺は素直にそう言った。だって本当に聞いたことがないから。俺が知っている神なら、聖教国の唯一神ドミナントくらいだ。

『な、なんだと……! 君はノルクじゃないのか?』

「いや、ノルクですけど。一体どういうことなんですか? あなたは何か知ってますよね。それに……傷も治ってるし……」

 胸や腹の辺りが抉れて、血がドバドバ出ていたのに今はすっかりと治っている。
 傷跡も残ってないし、かなり高度な回復魔法でもかけられたのかな?

 俺の質問にレスティア様は答えず、逆に質問してきた。
 一応、女神みたいなので様を付けておくことを忘れない。

『うん、質問には答えるけどその前に……なんで声に出してるの? 傍から見れば、一人でブツブツ喋ってるヤバい奴に見えるよ? 心の中で話せば私には伝わるから。あ、あと様は付けなくていいよ。ノルクは特別だから』

 なんなんだ、この女神は……。確かに、周りに人がいなくて良かったと思う。これ以上、不名誉なことを言いふらされたくはない。

 俺はレスティアの言う通り、心の中で話してみる。

『こ、こんな感じかな……?』

『そうそう、で色々と知りたいことあるよね? とりあえず、説明していくから、聞いといてね?』

『了解……お願いします』

 どうやら、俺の知りたいことを教えてくれるようだ。意外としっかりしてる女神だな。

『えっと、じゃあまずはノルクのスキルについて話しとくね。ノルクのスキルって何だった?』

『知ってるんじゃないの? 無能スキルの【霊降ろし】だよ。もう、言いたくないけどね』

『そうそう、そうだよね。けど、今は違うの。死の淵を彷徨ったことで覚醒したの』

『覚醒……? スキルが覚醒するなんてあるの!?』

 俺は思わず声を張り上げてしまった。スキルの覚醒という現象について知りもしなかった俺には、凄い情報なのだ。

 もしかして……無類の強さを誇るSランク冒険者ってスキルが覚醒してるから? なのかな……。

『あるある、それでノルクのスキルは【神降ろし】ってスキルに覚醒したの。だから、私が登場できたのさ!』

『神降ろし……? 聞いたことないけど。名前から読み取ると、霊が神に変わった所だけど……』

『うん、そのまんまの意味だよ。今までは霊をその身に降ろしていたけど、全12柱いる神をその身に降ろすことができるの』

『ま、まじで……? 神って、あの神だよな?』

『どの神の事を言ってるのかは知らないけど、闘神とか剣神、それから盾神に……魔神とか? 後はその他もろもろかな』

 具体的な神を出してくれたことで、はっきりした。マジもんの神をその身に降ろせるらしい。

 喜んだ方がいいん、だよな?

 詳しい事が気になる俺は、さらにレスティアに聞いていく。
 直感で思ったことだが、神を降ろすことをノーリスクでできるのかどうか。それが怪しい。

『えーと、その神降ろしってのは今できたりするの? それに、何か制約というか……リスクを負ったりするの?』

『んーとね……リスクはないよ。ただ降ろせる時間は長くはないから、そこがネックかな。それと、神降ろしはできないのよねーー』

『まだってことは、いずれできるようになると?』

『そうよ。神は神器に宿っていて、それを手に入れれば神とコンタクトを取ることができるの』

『へーー、神器か……』

 まるでおとぎ話みたいだな。神器が実在するなんて、夢にも思わなかった。
 けど……俺にここで1つの疑問が浮かんだ。

『レスティア……神器っていうから、相当価値のあるものだよな? そんなものを手に入れるなんて無理なんじゃないのか? 国が管理しててもおかしくないぞ』

 そう、神器だ。そんな大層なものなら、すでに発見されて誰かが持っているはずだ。
 それをいきなりくれ、と言ったって無理に決まってる。

 しかし、俺の不安に対してレスティアの解答は不安を払拭させるものだった。

『あー、それなら大丈夫だと思うよ。神器って言っても誰しもが分かるものじゃないから。全部が全部ピカピカ光ってる訳じゃないし、すす汚れてるものもあるから。そこら辺の武器屋とかに置いてても不思議じゃないよ』

『神器ってそんなものなのか? 随分と軽いな。まあ、こっちとしてはありがたいけど』

『まあ、探してみないと分かんないしね。当分の目標は決まったんじゃない?』

『ああ、そうだな。せっかく凄いスキルを手に入れたんだ。力をつけるためにも、神器探しは必須だ』

 俺は以前とは違い、ポジティブに考えれるようになった。
 スキルが全ての世界で生きていくには、有用なスキルが必要だ。

 更には、冒険者としてならば尚更必要になってくる。

 俺はふつふつと湧き上がってくる感情を抑えるに必死だった。
 ここは、まだ迷宮なんだ。油断は命取りになる。

 俺の人生はこれからなんだ。


 ◇


 ずっと迷宮内部に留まっていても仕方ないので、俺は移動を開始した。
 移動の最中にもレスティアに色々なことを教えてもらっていた。

『一つ気になったのが、俺の大怪我を治してくれたのはレスティアなんだよな?』

『うん、感謝してよね。けど、治したのは私だけど実際の傷を癒したのは"神気しんき"だね』

『神気? なんだそれ、レスティアの特別な力とか?』

『いやいや、そんなんじゃないよ。ノルクも覚えておいた方がいいよ。神気っていうのは、私達神の源みたいなもの。ノルクも神気を扱えないと、神降ろしが使えないから。神器探しと並行して神気習得も必須条件になってくるね』

『そうか……』

 俺は神気の話しを聞いて、少しだけ怖くなった。もちろん、強くなれるのは嬉しいことだけど。

 神気とかを使い出すと、人間じゃ無くなる気がする……。
 もし、人間として生きられなくなったら……。

 レスティアは俺の気持ちを感じ取ったのか、慰めの言葉をかけてくる。

『心配しなくても、人ならざる何かになることはないよ。ノルクはノルクのままだよ……』

『……ありがとう、レスティア』

 ほんの数時間前に出会った女神に感謝しつつ、俺は迷宮の出口を目指した。
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