不遇から始まる逆転人生 ~無能スキル【霊降ろし】が覚醒して、【神降ろし】になりました。神の力で無双する~

長谷川 心

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第一章 底辺からの脱却編

第9話 剣神の行方

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 不思議な感覚が俺の全身を包む。霊降ろしの時に味わった感覚ではあるが、何回やっても慣れないな。

 突如、俺に凄まじいパワーが溢れ出す。筋肉が膨張し、ミチミチと音をたてる。
 さらに、余裕で着こなせていた服も筋肉の膨張によりピチピチになる。

 霊降ろしとは明らかに違う変化に俺は感激する。

「おおお……今なら何でも壊せそうだ……」

『また、神気の量が増えたね』

『ふむ……中々いい器じゃな。程々に鍛えられておる』

 俺は手をグッパグッパして、感触を確かめる。時間が過ぎるにつれ、馴染んでいく感じだ。
 俺は腰を落とし、徒手空拳の構えをとる。

「ふぅ――」と一息吐き、右足で後ろ回し蹴りを放つ。
 ブォン、と蹴りが空を切る。また、蹴りの風圧で周囲の木々が震える。

 続けて、正拳突きやかかと落としなどを行っていく。一連の動きを確認し、俺は無意識に笑った。
 今までの自分とは、明らかに違う動きに口が歪んでしまう。

『ノルク、今めっちゃ悪い顔してる』

『神気を纏って、あの岩を粉々に破壊してみい』

『ああ、やってみるよ』

 俺は返事をし、巨岩に向き直る。俺の身長の3倍以上はある大岩だ。神気を右手に纏い、腕を引く。

 そして、下半身で溜めた力を余すことなく上半身に伝え、拳を突き出す。

「はああっ」

 ドンッ! ピキ、ピキ……ミシ

 細い亀裂が走っていくが、岩はそれ以上崩れることはなかった。

「え……なんで」

『おれ、おかしいね』

 俺とレスティアが揃って疑問を呈する。神降ろしでトルクを降ろし、さらに神気も纏ったのに……。

 ただの神気を纏ったときの方が破壊力があった。確実に、今回の方が上のはずなのに。
 が、トルクだけがこの疑問に違和感を持っていなかった。

『ノルクよ、お主まだワシの力を完璧に引き出せておらんな?』

『え? いや……構えも問題なかったし、神気もちゃんと纏えていたはずだけど……』

『恐らくじゃが、お主の体はワシの力を使いこなせるだけの器ではないということじゃな』

 俺は盛大に勘違いをしていた。霊降ろしが神降ろしに変わっただけ。たかがそれだけの違いでも、霊と神では次元が違う。
 今まで霊しか降ろしてこなかった俺は、神という存在を正しく認識していなかった。

 レスティアも女神だが、戦闘用ではない。相棒のような感じで接してきたのだ。戦うための力として見ていなかった。

『え、じゃあ……どうすれば……』

『安心せい。ワシを降ろして神気を纏えている時点で体はある程度できておる。後は、さらに己の体を鍛えるのみじゃ』

『そうか……』

 トルクはそう言ってくれるが、俺はどうも納得できなかった。トルクの言葉に不満があるわけではない。
 ただ、そう言われて少し安心している自分に何とも言えない怒りが込み上げてきた。

 俺は自分の強さを過信していたのかもしれない。神気という力を手に入れ、闘神トルクを仲間に迎え、その力を貸してくれるというので。

 自らの体を鍛えるということをしていなかった。もちろん、ガリガリでは冒険者なんてやれないので、平均レベルの体は持っていると思っている。

 それが驕りだったのだ。神降ろしをしてみて、力を引き出せなかった。こんなことじゃ、一生馬小屋から脱却できない。

 俺は決心した。
 ただひたすら己の強さを磨き上げることを。
 全12柱の神全ての力を扱えるようになるために。

『トルク、俺を鍛え上げてくれ。お前の全てを引き出すために……』

『任せとけ、他の神などいらんと思えるほどに鍛えてやる』

『それは却下で、ノルク以外の話し相手がトルクだけなのは勘弁だよ』

 それから、トルク直伝のマッスルトレーニングが開始され、俺は1時間も経たない内にダウンした。

 ◇

 最低限生活していくためのクエストを受注しながら、トレーニングを続けていた。

 それと同時に俺は剣も使いこなそうと思い、剣のトレーニングも始めた。せっかく、婆さんから立派な剣をもらったのだから。

 だが、俺には絶望的なほどに剣のセンスがなかった。力はあるので剣は振れるのだが、こう……なんていうのか剣士のような動き方というのができない。

 何度も言うが力はあるので、一発当たれば大ダメージを与えられる。
 しかし、それは当たればの話だ。当たらなければどうということはないのだ。

 今日も今日とて、レスティアが俺をからかってくる。

『あはは、ノルクまた変な動きしてる』

『うるさいなあ……。こっちだって本気でやってるんだから』

『ノルク、何度も言うとるじゃろ。剣なんていらん、拳一つで敵は粉砕できる』

 トルクは最近、ずっとこれだ。トルクは剣が嫌いなようで、やるたびにぐちぐち言ってくる。
 口を尖らせるトルクに俺も反論する。

『それは、今ならな。これから先のことを考えると、やっぱり剣での戦い方っていうのも必要になってくると思うんだよな』

『むう……確かにそうかもしれんが……』

『けど、ノルクさ。そんなん言ってる割には、全然上達しないじゃん? 剣の達人とかいないの?』

 俺の言い分にレスティアは柄にもなく、ド正論をかましてくる。確かにその通りなんだけどね。

『まあ、王都に剣聖っていう二つ名を持つ人がいるらしいけど。迷宮都市にはこれと言って、剣の達人みたいな人はいないな……』

『うーーん、ならやっぱり剣神を探すべきかもね』

 レスティアの案に俺も無言で頷いて肯定する。それは薄々考えてきたことだ。剣を手に入れた日から。

 闘神と剣神がいれば、接近戦で負けることはまずないだろう。
 魔法系統の神もいいが、順番的には剣神だろう。

 だが、トルクは剣神の名前を出した途端に不機嫌になった。

『ワシはあいつを好かん。剣なぞに頼りおって……神の名が泣くわい』

『敵意むき出しじゃないか……』

『ははは、まだ嫌ってるんだ。ノルク、心配しなくてもいいよ。トルクが一方的に嫌ってるだけだから』

 気になるな……。闘神と剣神に何があったのか?
 また、レスティアに聞いてみるか。

『探すべきなのはそうなんだろうけど、剣神の神器がどこにあるかは分からないんだろ?』

『そうだよ、だから運になるけど。それでも探さないと見つからないじゃん』

 レスティアの言う通りだ。なんだろう、最近レスティアが核心ばかり突いてくるようになった。
 女神も成長するということか。

『だな。それはまたにして、クエストを受けに行こう。トルクが毎日浴びる程酒を飲むから生活費がカツカツだ』

『はーい』

『ワシはそんなに飲んでおらんわ!』

 俺は笑ってトルクの言葉を流しつつ、冒険者ギルドに赴いた。

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