女王陛下、誤解です〜ヤリチン王子が一穴主義になったのはアタシのせいじゃありません!!〜

アムロナオ

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【54】喧嘩 〜ダンスの続きはどうデスか〜

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「んきゃぁぁぁ!」

周囲の景色が風を切って流れ、サニーの黄金の髪が流れ星のよう。

白い歯がのぞく笑顔を網膜に焼き付け、ダニエルは力の限り回り続けた。


「はぁ、はぁ、はぁ、目が……」

「回りすぎだよ、ディディ。ほら、大丈夫?」

サニーは足元の覚束おぼつかないダニエルをフロア脇のテーブルへと案内した。


「待ってて、水をもらってくるから」

「んー、ありがと」


調子に乗って、グルグル回りすぎた。

平衡感覚がグラグラして、テーブルに腕をついてないと立っていられなかった。

が、それも時間が経てば元に戻っていく。



「え~!!彼女さん居るんですかぁ?残念ん~」

「ゴメンナサイね」

ネットリ絡みつくような声を引き連れて、サニーはもどってきた。


「ディディ、大丈夫?ほら、水飲んでくだサイ」

女は図太く、値踏みするようにダニエルを見る。


「彼女さん大丈夫~?」

そしてしつこく声をかけてきた。


「調子悪いなら、少し休んだら~?その間、お兄さんはアタシと踊りに行こうよ」

「あんたねぇ……」

ダニエルはいきりたち、ゆらりと顔をあげた。



「ディッ……ディ!!」

「あたしの男に手をだすんじゃないわよ!」

「なによ、ブス!箒頭!アンタなんかこの男性ひとにつりあってないじゃない」


ダニエルが女の胸元を掴むと、負けじと相手の女も掴み返してくる。

なかなか彼女も血気盛んなようだ、流石肉食女子。


「モッペン言ってみな、この◯ッチ。男なら誰でも良いんだろ、あんたみたいな女を性悪っていうのよ」

「はいはい、もーいいから!!」

聞いていられないと、サニーはダニエルを担ぐ。


「なにすんのよ、サニー!かかってきなさいよ、性悪女!」

「うっせー!乳牛女!あんたなんてそのデッカい乳と尻しか価値ねーっての!!」


「んもぉぉぉー許せん!!寝技でギタギタにしてやる、放してよサニー!」

ダンスフロアに罵声が響き、サニーは逃げるように店をでた。



「ふぅ、ここまできたらいいカナ」

通りに出たサニーは、植え込み前のベンチにダニエルを下ろした。


ダニエルはジロリとサニーを睨む。

不機嫌になったダニエルに、サニーは「どうしたの」と白々しい。


「なんで邪魔するのよ」

「喧嘩はいかんでショ」


「あたしが負けると思う?」

「思わないけど……ディディの綺麗な手が怪我したら大変だからネ」


「サニーがモテるのが悪いのよっ」

他の女からチヤホヤされちゃってさっ、この女たらし!……とまでは言えずダニエルは唇を尖らせた。



するとサニーは往来の激しい繁華街の道の真ん中で、身を屈めてムチュとキスをした。

押し付けられる唇の感触。

二人の関係を周囲にダメ押しで見せつけたような気持ちになり、たちまちモヤモヤ感は吹き飛んだ。


どんなに誘っても、彼がベッドに連れ込みたいのは、あたし!

あたしなのよーー!!

ご機嫌とりでキスしたとしても効果覿面てきめんだ。



「機嫌はなおりましたか、俺のお姫様」

「うん!よし、口直しにもう一軒いこーっ」

「ダメ、ダメ。こりゃ、どこいくの。今夜はもう帰りましょ」


その手から逃げ出そうとしたが、腕を掴まれクルッと反転させられる。

サニーの厚い胸に抱きとめられると、イランイランとバニラとタバコの香りが混ざった匂いが鼻腔をくすぐった。


この匂い、大好き。

火照った頬を男のシャツ元に押し付けると、シルクの肌触りがきもちいいよかった。


「ね?いい子だから、帰ろ」

「んふふふ、帰ってなにするの?」


「ダンスの続きはどうデスか」

「すけべ」

「……さぁ、いこう」

足元に帰路につく二人の影が落ちた。
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