女王陛下、誤解です〜ヤリチン王子が一穴主義になったのはアタシのせいじゃありません!!〜

アムロナオ

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【110】口論① 〜修行〜

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「お嬢様、旦那様を放してください」

ダニエルの正体を知って、ジョンが渋々丁寧な口調で言い直した。


「そうね、もう気を失ってるし」

暴れて気力を使い果たしたのか、父は失神してぐったりしていた。


「あなた!」

「旦那様!!」

母とティアゴ、ジョンが駆け寄ってくる。

ダニエルは父を仰向けにし脈を測ったが、弱々しくもちゃんと動いており、一応ホッとした。



ジョンが「お嬢様、なぜ旦那様にこんなひどい事を?」と責めてくる。

「殴りかかってきたから、拘束しただけよ。ほら……」

ダニエルは足元に転がった燭台を指差し、「窓ガラスを割ったのも父上」と付け加えた。


「それはお嬢様がカーテンを開けたからでしょう。あれほど閉めてくださいと言ったのに、わざと旦那様の嫌がる事をなさったから……」

ダニエルのせいで倒れたと言わんばかりのジョンとベラにダニエルは呆れてしまった。


「あのね!こんだけ痩せ細っていたら、起き上がっただけで貧血起こしてぶっ倒れるのは当たり前よ。そもそもどうしてこんな状況になるまで医者に診せずに放っておいたの?」

「申し訳ございません、そんなつもりはなく……」

ベラは直ぐに頭を下げたが、ジョンは反論した。


「放っておいたわけではありません!旦那様は修行中だったんです」

「修行?」

「ええ。お嬢様のせいで、計画がぐちゃぐちゃです!もう少しで旦那様は悪魔を祓えたのに!!」


「悪魔なんているわけないじゃない」

ダニエルが一蹴したので、ジョンは更にくってかかった。



「悪魔はいます!お嬢様は何も知らないからそんな事が言えるんです。旦那様は悪魔に憑かれ、昼も夜も悪魔を視て怯えておられました。悪魔から逃げるために酒に溺れて……」

母やポーラからも、父が酒に依存していると聞いている。


「そんな旦那様を救おうと我々は必死にサポートしてきたんです。ロンド教を信じ、教えに従い修行すれば苦しみから救われます。悪魔を祓えるのです!!」

“だから悪魔なんていないって”……と、言うのはやめておいた。

ジョンに話をさせて、情報を聞き出す為に。


「ロンド教に入信したおかげで、旦那様はアルコールを克服しました」

母に目を向けると、肯定するように頷いた。


「旦那様のお加減は徐々に良くなってきていたのに……お嬢様のせいで台無しです!」

「なんで台無しなの?」


「お嬢様が旦那様の最終修行をぶち壊したからです」

「最終修行?修行って何をしてたの?」

「一ヶ月間、暗い部屋にこもり経典を昼夜唱え、断食し心身の浄化と煩悩の滅却を行うのです。あと少しで旦那様は修行を終えられたのに……お嬢様が部屋を明るくしたせいで修行は失敗です」

ジョンは悔しそうに歯噛みした。


「修行を終えたら、旦那様は自身の力で悪魔を祓えたはずなのに……」

ジョンは心の底からロンド教と悪魔を信じてるようで、ダニエルは思わず「このデブ何言ってんだ」と呟いてしまった。

小声だったのに全員が此方を見てくる。

気まずくてダニエルはコホンと咳払いをしたが、たぶん誤魔化すのは無理だろう。
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