1.戦災の魔界姫と敵国騎士1★青薔薇の刻印編★

喧騒の花婿

文字の大きさ
81 / 89
第5章★閑話★

5★カラムの町にて【リョウマ√】★※

※リョウマ√です。シチュエーションにカルラと似た部分があります。


 カラムの町1番の高級ホテルでリョウマを裸にした菫は、仁王立ちして満足そうに頷いた。


「青薔薇の刻印、リョウマ様にはなさそうですね。服を着て良いですよ」


 菫が笑顔でリョウマに服を渡す。
 リョウマは頬を赤くしてそれを受け取った。


「あの……倭国王女の前で……見苦しい姿を見せて、申し訳ありません」


 裸のまま頭を下げるリョウマに、菫はきょとんと首を傾げる。
 背中の左上から右下まで伸びた長い傷痕がちらりと見えた。


「見苦しいって? わたしに暴力を振るったこと? それとも今、リョウマ様が裸でわたしの目の前にいること?」


「……どちらもだ。結構な性格しているな、お前……いえ。結構なご性格ですね、菫様」


 身分を明かしたからか、丁寧に言い直したリョウマがおかしくて菫はけらけらと笑ってしまった。


「服を着る前に、シャワーを浴びてきます。ああ、菫様先に入りますか?」


「ふふ、さすが百戦錬磨ね。そうですね……きちんと青薔薇の刻印がないか確かめたいので、体、洗わせてもらおうかな」


 菫の言葉にリョウマは一瞬何を言っているのかわからず、思考が止まった。


「は? 洗う……とは……」


「一緒に入りましょうか、お風呂」


「……おかしなことを言わないでください。菫様は王女で、俺は……ただの敵国の騎士でしょう。身分違いもいいところだ。それに俺は既婚者だ」


 心地よい地声で叫んだリョウマに、菫はからかうように笑った。


「うふふ、暴力とか、暴言とか、夜伽とか連れ歩いているわりには常識的な意見を言いますね」


 菫の笑顔を見てリョウマはグッと硬直した。


「お前も先ほど言っていただろう。俺は既婚者だから、伴侶以外と関係を持つのはおかしいと」


「そうね、おかしいわよ。でもこれは有事ですから。青薔薇の刻印が本当にないか確かめないといけないし」


「……合理的なんだな」


「よく言われます」


 青薔薇の刻印が体のどこかに刻まれた騎士団長は、自由に茨の塔に出入りすることができる。
 その騎士団長は、捕虜にされている菫の母、竜神女王と自由に会うことができているはずである。
 菫は甘えるようにリョウマの腕に絡みついて上目遣いをした。


「ね、リョウマ様お願い。背中、洗わせて。あなたのたくましい体、くせになりそう」


 ニヤニヤと笑いながら試すように言う菫に、リョウマはため息をついて首を振った。


「倭国王女は噂では深窓の姫君だと聞いていたが、とんでもないじゃじゃ馬のようだな」


「あら、失礼しちゃう。深窓の姫君なんて、器量なしと言われているみたいで心外だわ」


「そっちか。じゃじゃ馬の方が心外ではないのか」


 面白くなったリョウマは、思わず満面の笑みを浮かべて声を出しながら笑っていた。
 その笑顔を見た菫は「ふうん」と言いながらリョウマを覗き込む。近い距離に、思わずリョウマは顔を赤らめた。


「な……なんですか」


「ううん。素敵な顔で笑うのね。少年みたいにあどけなくて可愛い」


「いや嬉しくないな……」


 菫はリョウマの手を握り、にこにこしながらシャワールームへと向かう。リョウマは権力至上主義のためか、困惑しながらもおとなしくついてきた。


「奥様に失礼だから、すぐ終わらせますね」


 ボディソープを手で泡立てると、リョウマに向き合って菫が言った。


「……さすがに……拷問過ぎませんか。俺だけ裸なんですか」


「わたしも裸になります?」


 クスッと蠱惑的に笑いながら菫がリョウマを見上げた。リョウマは複雑そうに菫を見下ろすと、ため息をつく。


「余計駄目だろう。俺が我慢できない。気付いていると思いますが、菫様は美しく俺の琴線に触れるので」


「ん? 美しいと我慢できないの? そもそも美醜の基準は個人で違うでしょ。わたしなんて裸に自信がないし」


 人差し指でリョウマの首をなぞりながら言うと、リョウマはビクッと体を硬直させた。


「……あなたは俺から見てとても魅力的、という……意味で言いました……」


 我慢するようにリョウマは目を閉じた。
 菫はリョウマの体に両手の指を這わせながら、じっと観察していく。


「……っ……菫、様……」


 くすぐったいのか、リョウマが身をよじる。


「ホールドアップ」


 菫の声に、すぐ反応するようにリョウマが両手を上げた。菫はその仕草をみて、大きな犬みたいと思った。
 リョウマの脇を手でなぞると「ん……っ」と声を上げたため、菫はうずうずとする。


「す、菫様……もう少し……強く触れませんか? くすぐったいです……」


「あらごめんなさい。フッ、可愛いわね。涙目になってますよ。アコヤ様とはこんなことしないの?」


「……いま、アコヤの名は……出さないでください……」


「青薔薇の刻印を確かめているだけよ。変な気持ちになる必要ないでしょ」


 クスッと笑いながら挑戦的に言うと、リョウマは涙目になりながら熱を帯びた目で菫を見つめる。


「菫様……服が濡れて……透けてしまっていますよ……」


 力なくリョウマがため息混じりに言う。菫は濡れた服を確かめると「ああ、ほんとね」と呟いた。


「わたしも脱ごうかな。着替えの服持ってないし」


 袖に手をかけ、上着を脱ぐと、リョウマが慌てて声を上げた。


「何をしている、男の前で! はしたない」


「だって、濡ちゃうじゃない。着替え持ってないんだもん」


「乾かせば良いだろう! そんなことより男の前で躊躇なく裸になることの方がおかしいんだ!」


「なによ、結構優等生ね。下着は外さないわよ」


 そう言うと菫は脱衣所で下着だけになり、再びリョウマの元へ向かった。


「……本当に脱ぐなよ……」


 フイと菫から視線を外したリョウマだが、菫はリョウマの1つに結いた髪に触れ、ゴムを外す。腰近くまで伸びた髪が垂れ、菫はため息をついた。


「綺麗な髪ですね……洗ってあげるね」


「余計なことをするな! 自分でやる」


「まだ見てないところがあるの。おしり周りね。仁王立ちして下さる?」


「ふざけるな……恥じらいはないのか、お前には……」


 菫はそれを聞いてクスッと笑う。


「触るわよ」


「……あっ……」


 菫が躊躇なく後ろからリョウマの太ももを触ると、ビクッとしたリョウマが声をあげる。


「ねえ、力入れないでよ。見えないじゃない」


「菫……やめ……ろ……あっ……」


☆☆☆☆☆


 たまにカラムの町のホテルの出来事を思い出す。


 リョウマは赤騎士団長の私室で、青薔薇の刻印を確かめられたときのことを思い出していた。
 今宵は星が綺麗に映る満月の夜だった。


「菫……」


 ベッドの上で横になり、窓に映る星を眺めると、菫と共に見た満天の星空を思い出す。
 星空を見て思い浮かぶのは菫の姿ばかり。


 百戦錬磨と謳われた自分が、まさかあんな小娘に翻弄されるとはつゆにも思わなかった。


「……会いたい、菫……」


 菫の満面の笑顔を頭に浮かべ、菫に会う口実を考えながらリョウマは目を閉じた。

☆終わり☆
感想 0

あなたにおすすめの小説

女の子がほとんど産まれない国に転生しました。

さくらもち
恋愛
何番煎じかのお話です。 100人に3~5人しか産まれない女の子は大切にされ一妻多夫制の国に産まれたのは前世の記憶、日本で亭主関白の旦那に嫁いびりと男尊女卑な家に嫁いで挙句栄養失調と過労死と言う令和になってもまだ昭和な家庭!でありえない最後を迎えてしまった清水 理央、享年44歳 そんな彼女を不憫に思った女神が自身の世界の女性至上主義な国に転生させたお話。 当面は2日に1話更新予定!

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

甘い匂いの人間は、極上獰猛な獣たちに奪われる 〜居場所を求めた少女の転移譚〜

具なっしー
恋愛
「誰かを、全力で愛してみたい」 居場所のない、17歳の少女・鳴宮 桃(なるみや もも)。 幼い頃に両親を亡くし、叔父の家で家政婦のような日々を送る彼女は、誰にも言えない孤独を抱えていた。そんな桃が、願いをかけた神社の光に包まれ目覚めたのは、獣人たちが支配する異世界。 そこは、男女比50:1という極端な世界。女性は複数の夫に囲われて贅沢を享受するのが常識だった。 しかし、桃は異世界の女性が持つ傲慢さとは無縁で、控えめなまま。 そして彼女の身体から放たれる**"甘いフェロモン"は、野生の獣人たちにとって極上の獲物**でしかない。 盗賊に囚われかけたところを、美形で無口なホワイトタイガー獣人・ベンに救われた桃。孤独だった少女は、その純粋さゆえに、強く、一途で、そして獰猛な獣人たちに囲われていく――。 ※表紙はAIです

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

猫なので、もう働きません。

具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。 やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!? しかもここは女性が極端に少ない世界。 イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。 「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。 これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。 ※表紙はAI画像です

巨乳のメイドは庭師に夢中

さねうずる
恋愛
ピンクブロンドの派手な髪と大きすぎる胸であらぬ誤解を受けることの多いピンクマリリン。メイドとして真面目に働いているつもりなのにいつもクビになってしまう。初恋もまだだった彼女がやっとの思いで雇ってもらえたお屋敷にいたのは、大きくて無口な庭師のエバンスさん。彼のことが気になる彼女は、、、、