奥様はとても献身的

埴輪

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≪過去②≫

22 君を、悪魔が拾う 前

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 学生時代、優が唐突に文香と結婚したいと言い出したとき。

 正直、嬉しさよりも戸惑いの方が大きかった。
 優と付き合いながら、文香は優と結婚するなどそのときは欠片も考えていなかったのだ。

「なんで? 文香は俺とずっと一緒にいたくないのかよ……」

 それとなく、傷つけないように伝えようとしても受け止める優はやはりショックを受けていた。
 恋人に自分と結婚することなどまったく想定していなかったと告げられたのだから、いくら楽観的な優でも落ち込む。

「何が嫌なんだよ」
「嫌とか、そういうわけじゃなくて……」
「なら、問題ないだろう? 文香、俺の事好きだろ? 俺も文香のことが好き。なら、今から将来の約束をしたっていいだろう?」
「……」
「……なんでそこで黙るんだよ」

 優は本当に唐突だった。
 いきなり結婚したいと言い出し、こうして強引に事を進めようとする。
 だが、無理強いするわけではない。
 捨てられた子犬のような目で見られ、文香は強い罪悪感を抱いた。
 若気の至りだと窘めたが、優を完全に誤魔化すことはできない。
 
 せめて五、六年待って欲しいと、確か一昨日ぐらいに言ったのに。
 優はまるで文香の逃げの口実を塞ぐように、こうして家に押し掛けて来る。
 下手な誤魔化しをこれ以上すれば、もっと攻めて来そうな勢いだ。

「文香は、俺と結婚するのがそんなに嫌なのか?」

 そんなはずがない。
 優のプロポーズともいえない稚拙な求愛に戸惑った後、じわじわと文香の心は喜びで満たされた。
 嬉しくないはずがない、迷惑なはずがない。
 
「……怖いの」

 ただ、怖いのだ。



* 

 
 文香は平凡な家庭に生まれた。
 明るく大雑把な母と生真面目で少し神経質な父。
 
「文香ちゃんはお父さん似だね」

 親戚や近所の人達からそう言われることが多かった。
 容姿のことではなく性格のことを言っているのだろう。
 平凡な両親とは違い、文香の容姿は幼い頃から際立っていた。
 だから大好きな父と似ていると言われるたびに文香は喜んだ。

 年を経るにつれ、父と同じく真面目で正義感が強くなっていく文香は確かに父親とは気が合っていた。
 一方で、文香は母のことがそれほど好きになれなかった。
 母は友達が多く、小さい頃はよく幼稚園を休まされて母に連れられてあっちこっち遊びに行った。
 小学生になってもそれが続き、父は母に幾度も怒っていたことを文香は知っている。
 だが、最後はいつもしゅんと反省する母を父は許していた。
 こっそりそんな両親の姿を見ていた文香は幼いながらも父はまるで母の父親のようだと思った。
 その感覚という名の違和感は年々強くなっていき、文香は自然と理解した。
 母は確かに文香のことを可愛がっていたが、それは娘としてではなく、姉妹や小さな友達に対するような感覚なのだと。
 母は文香のことが好きだけど、父のように愛しているのとは違う。
 文香は母にとってはお気に入りのお人形のようなものだと。
 寂しがり屋で父が家にいないと文香の都合も考えずに構って来ようとする母が文香は苦手だった。
 それでも反抗期もなく、母と距離を置きながら父に勉強を見てもらっていた文香はそこそこ幸せだった。
 学校でいじめにあったとき、父はすぐに気がつき、悩みを聞いてくれた。
 だけど母は暢気に笑い、文香の性格じゃ仲間はずれになるのも仕方がないと言った。
 たぶん、それが母との心の距離が決定的に開いた瞬間だったのだろう。
 時折、父に可愛がられる文香に母が嫉妬していると覚ったときから、文香は無意識に母を避けるようになった。
 娘を女として見ている母が、敵愾心を持つ母が怖かった。
 そんな文香の気持ちに気づかずに構って来ようとする母から逃げる為、文香は色んな習い事に手を出し、父がいないときはなるべく家に寄りつかないようにした。
 もしかしたら、あれは一種の反抗期だったのかもしれない。
 今ではもう分からないが、つまらなさそうに、或いは寂しそうに文香を見送る母に罪悪感を抱いたのは確かだ。

 母とは性格から何までまったく合わなかった。
 それでも文香にとって母は母なのだ。
 文香が母に苛立つのは、母が文香を見てくれないことに対する反発だったのかもしれない。

 夫も娘も側にいないという孤独感は寂しがり屋で社交的な母には耐えられなかった。
 文香が習い事から帰っても、父が仕事から帰っても。
 母は友人達と外で飲んでいたり、遊んでいることが多くなった。
 文香の両親は随分と若い頃に結婚した。
 親戚の一人が避妊に失敗したからだと、文香を見てこっそり言っていた意味を、文香がまだ理解できない頃。

 ついに父は耐え切れなくなった。

 文香は数日祖母の家に泊まることになった。
 理由は分からなかったが、しばらく両親に会えない日が続き、文香は不安な毎日を過ごし、夜になると祖母の部屋で寝た。
 気づいたときには両親は離婚を決めていた。

 憔悴した二人が揃って文香の前に現れたとき、文香はただただ戸惑うことしかできなかった。
 父は文香の手を握りしめ、母の傍に近寄ることを拒んだ。
 ああ、自分はこれから父と暮らすのだと、幼くとも賢かった文香は覚った。

 父は本当はもう母に文香を会わせる気がなかったが、祖母がそれではあまりにも気の毒だと仲裁したのだ。
 祖母は母に同情したのではなく、文香のことを思ったのだろう。
 だが、そんな祖母には悪いが当の文香はそれほど母に対する未練がなく、ただ初めて見る落ち込んだ母の姿が珍しいとしか思わなかった。
 状況をよく理解していなかったせいもある。

 文香は賢くても、まだまだ子供だった。

 両親がどうして離婚したのか、その理由を大人達が説明してくれない程度にはまだ子供だった。
 子供に見られていた。
 だが、大人達が思う以上に冷静で物事を知っていた。

 親戚の誰かが、あるいは近所の誰かが言っていた。
 
 母が浮気していたのだと。

 母は馬鹿な女だ。
 馬鹿というよりも軽率で、想像力が欠けている。
 文香が学校や習い事で家にいないとき、堂々と男を自宅に連れ込んでいた姿を近所の人に見られていた。
 二つ駅の先のホテルに男と入る姿を知人に見られていた。
 文香は母の浮気相手を知らないが、父は知っていたり知らなかったりしていた。

 母の浮気相手は複数人いたそうだ。
 独身であったり、既婚であったり。
 出会い系やナンパされただけの一夜の相手もいれば、学生の頃からの友人もいたりした。

 寂しかったのだと。
 母はただ寂しかったとしか言わなかった。
 祖母の家、父の実家で久しぶりに見た母に対して恋しさは湧かなかった。
 湿っぽく泣き出す母を父は静かに見つめ、文香に部屋を出るように言った。
 長く、母は父に何かをずっと訴え、独り言のように何かを呟いていた。
 しかし、母の口から文香の名は一度も出なかった。

 部屋を追い出された文香は、そっと襖越しに両親の会話を盗み聞きした。

「本当に…… もう終わりなの?」
「ああ。文香とも…… あの子が君に会いたいと言わない限り今後会わせる気はない」
「そう…… なら、一生会えないわね…… あの子、あなたに似て冷めてるもの」
  
 母の静かな声に文香は自分の手が震えるのを自覚した。
 声が漏れないように、手で口を閉ざした。

「……もう、あの男とは別れたのに、それでもあなたは許してくれないのね」

 どこか恨めし気な母の言葉に、父は苦々しく返す。

「浮気する奴は何度でもするさ。君のことなど、もう信用できない」

 文香はこのとき初めて母が浮気したことを知った。
 その詳細はその後勝手に周りが教えてくれた。
 
 不思議と、文香は納得した。
 母の違和感を、女としての色気が溢れ出した母に文香はどこかで気づいていたのだ。

「文香は、俺が育てる」
「……わかったわ」

 いつもは冷静な父の声はどこか感情的で、一方の母の声は静かで冷淡なものだ。

「……母親として、娘に言い残すことはないのか?」

 苛立ったような父の言葉に、しばらく母は考え込んでいた。
 何も言わない母に父は焦れたようにテーブルを叩きつける。

「何一つないのか? 君は、何一つ、あの子に謝ることも、伝えたいこともないのか?」

 父の声の震えはそのまま文香に伝染した。
 怖くて仕方が無かった。

「……君は母親失格だ」

 軽蔑に満ちた父の言葉に、母は笑った。

「そうね、あなたと違って、私は母親失格よ」

 母はどこか楽しそうに笑って言った。
 違和感を、文香と父は抱いた。
 何故、母はこんな場面でも笑えるのか。

「あなたは、本当に立派なパパだと思うわ。文香も…… あなたに懐くのは当たり前よね」

 まるで、父と、そして文香を嘲うように。



* * 

 
「……結婚したら、もう他人でなくなる」

 文香の静かな言葉に優は訝し気に顔を顰める。
 それの何が駄目なのか。
 優には分からないのだ。

 初めて優に告白されたとき。
 高校の文化祭の最後の日に優から告白された文香は、もうその時点で優に好意を抱いていた。
 だが、付き合うことに関して文香は躊躇った。
 好きな男の子に告白されている幸福感と、不安感、後ろめたさがそのとき文香を躊躇わせた。

 あのときは結局優の泣きそうな、真っ赤になって必死な表情に絆されたと言っていい。

 初め、文香は断るつもりだったのに。
 
「ずっと、黙ってたことがあるの」
「黙ってたこと?」

 優はある程度文香の家庭事情を知っている。
 両親が離婚したこと。
 文香は父方の祖母に引き取られたが、その祖母がもう他界したことを知っている。
 
 真っ直ぐ、逸らすことを許さないように文香は優の目を真っ直ぐ見つめた。
 揺れる黒い瞳は夜の湖のようだ。

「あのね、私……」

 ただ愛し合っているだけでは駄目なのだ。
 赤の他人が結婚するということは、それぞれの家族の一員になるということだ。
 二人だけの問題なら、文香はここまで悩まなかった。
 だが、きっといずれは優に伝えなければならないと思った。
 それをしなかったのは、文香自身後ろめたく、優に自分の過去を知られたくないからに他ならない。
 優しい優がそんなことをするはずがないと思いながら。
 文香は怖かった。
 優に、軽蔑されるかもしれないことが。

「私の両親はね…… 二人共、もう別の家庭を持ってるの」

 優は文香が真剣に何かを、頑張って伝えようとしていることを覚り、口を閉じた。
 唐突ともいえる文香の自分語りに戸惑いながらも、耳を傾ける。

「……父は再婚相手との子供もできて、今はとても幸せだって聞いたわ」
「え、じゃあ文香には弟か妹がいるのか?」

 それは初耳だった。
 文香の両親が離婚したことは知っている。
 そしてそのどちらにも引き取られず、祖母とずっと暮らしていたことも。

 デリケートな話だ。
 だが、文香が今それを優に話すということは理由がある。

 結婚したいと迫る優に、文香も誠実にならなければならないと思ったのだ。
 何も知らずに文香と結婚したいと無邪気に望む優を可哀相だとも思った。

「……一度も、会ったことないけどね」

 文香は、どんな顔をして話せばいいのか分からなかった。

 話すことを頭の中で整理しようとすればするほど、自分は優に相応しくないと思った。
 むしろ、自分は結婚してはいけない人間だと思ってしまう。
 文香の両親は生きている。
 顔も声も思い出せないほど会っていないが、確かに生きて、他の家庭を築いているのだ。

 どんなに断ち切りたくとも、文香はこの二人との縁がある。
 結婚すれば、その夫にも縁が繋がってしまう。

 優に迷惑をかけたくない。
 そして純粋に嫌われたくなく、文香は躊躇っている。

 だけど、文香は優の気持ちにちゃんと正面から向き合いたかった。

「私は、もう父の子ではないから」



* * * 


 文香の母は本気で父を愛していた。
 捨てられるぐらいなら二度と忘れられない傷をつけようと思う程。

 そして、文香のことは愛していなかった。
 今も昔も、文香は母にとっての手段でしかない。
 愛する夫を奪う自分の娘を内心で嫌っていたのかもしれない。

 だから、どんな残酷なことをしても。
 母に罪悪感は一切なかった。

「あなたは、本当に立派なパパだと思うわ。文香も…… あなたに懐くのは当たり前よね」

 まるで、父と、そして文香を嘲うように。
 母は嗤った。

「あなたの子じゃないのに」

 襖越しに、湯飲みが倒れた音が聞こえた。

「な、にを……」

 どこか幼くも聞こえる父の戸惑った声に、文香は必死に声を押さえた。
 このときの母の言葉の意味を文香はあまりよく分かっていなかった。
 だが、とてもよくないことを。
 母が酷く悪い事をしたのだと、それだけは理解できた。

「何を驚いているの? さっき、あなたも言っていたでしょう?」

 母は馬鹿にするわけでもなく、当たり前のことのように言った。

「浮気する奴は、何度もするって」

 どうして、これがだと思ったの?

 そう問いかける母の声は、悪意に満ちていた。

 盗み聞きしていた文香は、父の激情に染まった怒鳴り声、家具が倒れる音に反射的にその場を離れた。
 親子三人、これで最後かもしれないからと祖母は家にいなかった。
 いつも祖母と一緒に寝ている部屋に駆け込み、文香は敷いてあった布団の中に潜り込んでじっと恐怖で震える自分の身体を抱きしめていた。
 両親の激しい罵り合いが、叫ぶ声は途切れることなく一晩中続いた。

 文香はまだ母の言っている意味が分からなかった。
 ただ、母がとんでもないことを言ったのだと、それだけは分かった。

 このときの母が言った言葉が真実は虚実かは結局分からなかった。
 父に対する愛憎で咄嗟に出た嘘なのかもしれない。
 しかし、父は母ならありえると思った。
 疑心暗鬼になった父が文香を避けるようになるのは必然だった。

 気づけば父はいなくなっていた。

 祖母の通夜で久しぶりに会った父は一度も文香と目を合わせず、父の再婚相手だという妙齢の女性に挨拶されたとき、文香はとうとう自分が独りぼっちになったのだと覚った。

 母にも父にも、文香は捨てられたのだ。
 祖母が亡くなったのは文香の面倒で心労が溜まっていたせいだと親戚に言われても、父は庇ってくれなかった。
 父親にそっくりだと言っていた大人達が、成長し、更に容姿が際立っていく文香を揶揄する。
 平凡な両親から生まれたとは思えないほど文香は綺麗だと、どちらにも似ていないと。
 父親にそっくりだと言っていたくせに。
 
 卑怯だと思った。
 そんな風に皮肉を言う親戚が、真実を知るのが怖いとずっと文香から逃げる父が。
 文香から逃げるぐらいなら、白か黒かはっきりさせればいいのに。
 老いた祖母に自分を押し付けた父も、一切の連絡もせず知らんぷりする母も。
 
 そんなに文香が邪魔なのか。
 勝手に文香を産んだのはそっちなのに。

 文香を捨てて新しい幸せを求めてもいい。
 だが、せめて最後の慈悲として。

 娘である自分を、殺してくれればいいのに。

 線香の煙の先で揺らめく祖母の遺影を見つめながら、文香はそんなことを考えていた。

 優に出会うまで文香はただ孤独だった。
 


* * * *


 話を聞いた後の優の反応が、怖くて仕方が無かった。

「あのときの、母が言っていたことが真実なのか、ただの虚言なのかは分からない…… 父は、DNA鑑定を拒んだわ。たぶん、真実を知るのが怖かったんだと思う」

 当時の文香は幼すぎて、自分から親子かどうか科学的に判断するという選択すら知らなかった。
 知っていたとしても、きっと躊躇っただろう。

「うやむやにすることが、父の最後の愛情だったのよ」

 結果的に、父は文香を避け、その存在に怯えるように、嫌悪するようになってしまった。
 それでも、父は他の家庭を持つようになっても、正真正銘の自分の子供が出来た後も、文香の学費や生活費、大学への進学費用も出してくれた。
 だが、文香は奨学金制度を選び、父からの援助を拒んだ。
 文香は几帳面であり、今まで父に出してもらった費用全てを記録している。
 いつか、それを全て返す気でいた。

「奨学金や、父への返金…… 借金みたいなものよ。そんなものを抱えている上に、顔も知らない、血が繋がっているのかいないのかも分からない弟か妹までいる」

 優は何も答えず文香の話をじっと聞いている。
 その静けさがより文香の心を逸らせた。

「……今はあの人達と離れていても、縁が完全に切れたわけじゃない。優と結婚して…… いつか私の厄介事で迷惑をかけてしまうかもしれない…… それに、」
「……それに?」

 優の声の調子はいつも通りだった。
 そのことに文香は安堵するよりも不安を抱いた。
 きっと優がどんな反応をしても文香は怯えただろう。

「…………それに、私が本当に母の浮気相手の子なら、実の父親はどこぞの馬の骨とも分からないってことよ」

 忌々しく、あるいはほんの少しの皮肉を込めて言い捨てる文香に、それでも優は慌てることもなく心底不思議だと言わんばかりに眉を顰める。

「だから?」

 予想外の優の反応に、逆に文香の方が戸惑った。

「悪い。俺、頭良くないからさ…… 本気で、文香が何に悩んでいるのかわかんないんだよ。借金って言っても、文香はもう返すあてがあるんだろうし…… 共働きでコツコツ貯金すればいいだろう? 困ってるなら俺も協力するのが当たり前だし」

 がりがりと困ったように頭をかく優は本当に分かっていないようだ。

「文香が自分の父親を気にするのは分かるけど……」
 
 正義感を振りかざすわけでも、偽善を強いるわけでもなく。

「仮に、本当に文香の父親が誰か分からないとして、それがなんだっていうんだ?」

 優はまるで知らない価値観の人間に会ったように、どう文香に言えば伝わるのか、また文香の気持ちが分かるのかと真剣に考え込んでいる。


「だって、文香は文香だろう?」


 ひどく、ありきたりな台詞だ。
 だが、言っている本人は本当にそのままの意味で言っている。
 含みも何もなく、純粋にそう思っているのだと分かったとき、文香は咄嗟に優から視線を逸らさなければいけなかった。
 何の気もなしに発言する優にときめき、救われたなんて言うのは癪だ。

「文香?」

 顔を覗き込んで来る優が憎たらしい。
 顔が熱く、自分が泣きそうになっていることを文香は自覚している。
 こんな顔、絶対に見られたくない。

 文香は単純な自分に呆れた。
 何一つ解決していないのに。
 それでも優の能天気な発言に、確かに文香の心は軽くなった。
 背中を押されたような気さえした。









 地面に衝突する寸前、文香は何故かそんな昔のことを思い出した。

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