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空の旅と昔話
しおりを挟む母お手製の空飛ぶ円盤に乗って、逃避行真っ最中の黒江家一同です。
「母さん」
「何~?」
「そろそろ説明してほしいんだけど」
胡座をかいて座り、うとうとしている真波を抱え直して問いかけると、母は近くに腰を下ろして、腕の中の真波の髪をさらりと撫でた。
「うーん。何から説明したらいいのか」
「母さんは、一度この世界に来た事があるんだね?」
「そう。そのときはトリーネと呼ばれてた」
「トリイネって母さんの…」
「旧姓。高校3年だったからね」
鳥稲 由真。
それが結婚前の母の名前だ。
「苗字だけしか名乗らなかったら、家名なしの名前だと勘違いされたから、訂正しなかっただけ。本名を知られると良くないとか、オカルト系の小説なんかでありがちでしょー」
母はわりといろんな本を読む人だった。
「最近のラノベとか読んで、高3のあの出来事は異世界召喚ってやつか~と思ってたのよ」
活字中毒なケがあるとは思っていたけど、ラノベまで手を出してるとは思わなかった。
結構いろいろ読み漁っていると見た。
「今回みたいにヴォルガリアに突然召喚されて、瘴気を払えば帰してやるって言われて頑張ったのに、終わったら「帰る方法なんてない」だよ」
「うわ、テンプレ」
「帰れないんだから、この世界で聖女の血を引く子供をバンバン産んで下さいと言われたよ」
「うわぁ」
「しかも不特定多数の男をあてがわれそうになって、全方位に目をギラギラさせた強姦魔がいるような状態」
「ぎゃぁ…!」
マジであかんタイプの召喚。
世界を救った聖女に対して、えげつない仕打ち。
ヴォルガリアに恨みがあっても当然だ。
「人を苗床扱いするとかありえないし。しぼり取れるだけしぼり取って脱走してやったわ」
苗床はひどい。
それにしてもその文脈でしぼり取るとか、変に深読みしてしまう。
オカンの口から下ネタなんて聞きたくなかったよ…!
真波が完全に寝てしまったことに、心から安堵した。
こんな非常識な状況で爆睡できるなんて、真波は本当に大物だ。
「あ、しぼり取ったのは魔力の事だからね」
そうでしょうとも。
さっきみたいに足腰立たなくしてやったんですよね。
そんな取ってつけたみたいに訂正しなくていいんですよ。
「もらった魔力と借りた召喚の本で研究して、自力で帰ったの」
ぶんどった魔力と無断持ち出しした本ということですね、わかります。
魔力強奪といい、自力で帰還といい、聖女ってマジでチートだな。
この場合、母個人がチートなだけなのか。
聖女がチートな件に考えが至った所で、ふと真波を見つめる。
「今回の聖女って、真波だよな?」
という事は、真波も壊れ性能のチートな聖女?
確かめるのがこわい。
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